二校の共同作業は華音の屋敷で
「お邪魔しまーす!」
華音がシルビアと春香に引き連れられて玄関に出ると、三人の女子高生が立っている。
華音は、スルッとシルビアと春香から腕を抜き、ご挨拶。
「三田華音と申します」
「いつも、ふつつかなシルビアと春香が、大変お世話になっております」
シルビアと春香が、「ふつつかは華音」と小声で言うけれど、華音は「さあ、応接まで」と、三人の女子高生を案内する。
さて、応接間に入り、女子高生がそれぞれ、自己紹介とご挨拶。
「シルビアと春香の学園で、古代史研究会の部長をしている3年生の鈴村律と申します」
「今回は、華音君に我が学園の文化祭へのご出演、快くお引き受けしただいて、本当にありがとうございます」
「とにかく、華音君の源氏物語、紫の上のスピーチに感動して、今でも感動が残っています」
「本日は、突然ではありましたが、その出演ご承諾への感謝と、内容確認を兼ねて、お邪魔いたしました」
華音が頭を下げると、次の女子高生がご挨拶、
「同じく、2年生の沢口京子と申します」
「私も華音君のスピーチが好きで、録音して何度も聞いて、今は源氏物語を読みふけっています」
「今日は、お逢いできて本当に幸せです」
華音は、少し顔が赤い、
ほぼ見知らぬ女子高生に、これほどほめられる経験など、ないのだから。
三人目の女子高生がご挨拶。
「私も同じく1年生の深沢知花と申します」
「とにかくあの文化祭のスピーチの後、華音君の大ファンで華音君の直衣姿の写真を待ち受けに」
と、スマホの待ち受け画面を華音に見せている。
華音が、おもむろに口を開いた。
「ところで、先ほど、シルビアに連絡したのですが、テーマとしては万葉の女流歌人、笠女郎にしようかなと」
「それで、もう一つご連絡があります」
「僕の学園の文学研究会も協力したいとの話になっています」
シルビアと春香は、フムフムとの表情。
鈴村律、沢口京子、深沢知花は、少々残念そうな表情。
鈴村律
「笠女郎、確かに素晴らしい女流歌人、そのテーマは気に入りました」
「でも、うーん・・・華音君個人ではないのか、仕方ないか」
沢口京子
「笠女郎を語りながら、独占して愛でようと思ったけれど」
深沢知花
「共同作業も面白いけれど、華音君とべったりできない」
華音は、具体的な話に移行する。
「二校の共同作業なので、作業場は、ここのお屋敷でどうでしょうか」
部長鈴村律の結論は早かった。
「わかりました、御厚意に甘えさせていただきます」
「確かに、そのほうがお互いに神経を使わず、楽になります」
沢口京子も深沢知花も異論はない。
シルビアが華音に声をかけた。
「華音君の学園の部長にも連絡する必要があるね」
華音が「明日言うかな」と答えると、春香がスマホをいじっている。
春香
「こういう話はノロマしないの!もう連絡取れた」
「長谷川直美さん、OK、全員に連絡するって」
華音が「長谷川直美さんのアドをいつから知っている?」と首を傾げる間もない。
シルビアが厳しい。
「ほら!華音!さっさと資料準備!」
「はぁ・・・どうしてこの二人は、いつもいきなり?」
華音は、頭を抱えている。




