表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
359/500

華音VS都内選抜監督前田

「監督、御指導をお願いします」

華音から、柔らかな声。

尻込みをする都内選抜監督前田の脇を、学園空手部顧問の松井がつつく。

「言った通りだろ、とても相手に出来ないって」

「でも、それを無視して、喧嘩をしかけたんだ」

「責任を取れ」


都内選抜監督前田は、華音だけではない。

指導をしている都内選抜の空手選手たち、学園の空手部の選手たちの視線も気になる。

「わかった」と立ち上がるしかない。

しかし、華音の前に歩いていくだけでも、鳥肌が立つ。

とにかく足が重い、華音が怖くて仕方がない。

まともに立ち会って、全く勝てる気がしない。


都内選抜監督前田は、それでも、ようやく華音の前に立った。

そして、華音をしっかりと見た。

「うわ・・・でかく見える」

「中肉中背のはず・・・でも、今にでも、これほど離れていても、すぐに華音の突きが入りそうな・・・恐ろしい・・・」

「怖いのは、カウンターも同じか、とにかく動きが読めない、速すぎる」


「はじめ!」

そんな前田の不安にはお構いなく、試合が始まってしまった。


「グワッ!」

勝負は、またしても一瞬、試合開始直後だった。


都内選抜監督前田は、自分のみぞおちに、ピタリと充てられた華音の右拳を確認。

そのまま崩れ落ちた。

痛みはない、つまり怪我もない。

しかし、崩れ落ちたまま、身体が全く動かない。

呼吸が苦しいというよりは、出来ない。

身体の外部だけではない、内臓の動きも全て止まってしまったような、何とも言えない苦しい違和感。


学園空手部顧問の松井がうめいた。

「動き出しは、前田が速かった」

「しかし華音は、その数倍速く動いて、正拳突きを前田のみぞおちに」

「しかも、数センチ前で止めた」

「その風圧?それで前田は崩れ落ちた」

松井は全身に汗。

「華音が当てる気なら。前田は即死」

「やはり・・・人間凶器か」


高校生の空手選手も、恐ろしくて仕方がない。

特に、華音に罵詈雑言を浴びせていた選手たちは、茫然自失。

何しろ自分たちも完璧に倒され、かろうじて頼みの綱の監督は、実際に当てられてもいない、風圧だけで全身が硬直状態で崩れ落ちてしまった。


文科省の藤村が呆気に取られて、何も言えない様子を見て、吉村学園長。

「華音君、ありがとう、約束を守ってくれて」

「とにかく、華音君の身体は、一センチも接触はない」

「怪我もないよ」


華音は吉村学園長に少し頭を下げ、再び都内選抜監督前田と、選手たちに声をかけた。

「これで終わりにします?」

「当てないようにしましたけれど、お望みなら当てます」

そして、さわやかに笑っている。


空手部練習場に、柳生清と潮崎師匠が顔を見せた。

柳生清は笑っている。

「学園長室のモニターで見ていた」


潮崎師匠は渋い顔。

「おい、華音、手加減し過ぎや」

「でもなあ、相手が弱すぎやな、しゃあない」

「実につまらん」

「空手選手やら監督やら知らんけどな、小手先の試合判定用ポイント空手をしているから、ますます弱くなる」

「実戦で使えない空手を練習して、何の意味があるのか」

「坊ちゃん、嬢ちゃん空手や、戦場に出れば、さっそく殺されるよ、そんなの」

「攻撃力も護身力も何もない」

潮崎師匠の言葉は、辛辣を極めている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ