瞳の不安とデートのお誘い
さて、瞳は華音にどうしても聞きたいことがあった。
それは、華音と一緒に親善大使をする藤原美里との関係。
「もし華音君が、藤原さんと親しくなったらどうしよう」
「同じ仕事をするのだから、親しくなるのは当たり前だけど」
「私のことを忘れるとか・・・」
「うーん・・・マジに不安・・・」
「エレーナさんは、ドンとしているし、ライバルだけど嫌いではない」
「でも、藤原さんはイマイチよくわからない」
「完璧ミッション系のお嬢様タイプ、それも華音君より一つ年上」
「あれこれ言われると、華音君が真面目にこなして・・・好感を持たれると・・・」
ただ、聞き出して、
「うん、素敵な人だよ」と言われても、落胆するし、ますますの不安。
そんな状態なので、瞳は口に出すのも恐ろしい。
そして、今度、その藤原美里が華音の屋敷に来る、それに自分も同席する。
「私は、どんな顔をして、藤原美里さんを迎えればいいのか」
「下手にジェラシーみたいな態度を取って、嫌われるのも嫌」
「でもなあ・・・うーん・・・」
などと、なかなかタメライを繰り返す。
瞳がそんな状態でいると、隣を歩く華音が顔を覗き込んでくる。
「瞳さん、下を向きすぎ」
瞳が、「うん」と言って顔を上げると華音のやさしい顔。
華音は、そのやさしい顔のまま瞳に、
「今度、藤原美里さんが、料亭に来るみたい」
瞳は、全身が硬直。
「うん・・・」以外には声が出ない。
華音は、またやさしい顔。
「それでね、瞳さんにお願いがある」
瞳
「え・・・何?」
華音は少し顔を赤くする。
「瞳さん、僕の隣に座って・・・いいかな・・・お願い」
瞳も、真っ赤になった。
「え・・・いいの?私なんかで・・・シルビアさんも春香さんもエレーナさんもいるのに」
華音は首を横に振る。
「いや、瞳さんに隣に座ってもらいたい」
「あのお姉さまたち、マジにうるさいから」
瞳は、プッとふいてしまった。
「そうね、いつも華音君に厳しいよね、言いたい放題してる」
そして気分がほぐれた勢いで、聞いてみた。
「藤原美里さんとは連絡をしているの?」
聞いてみて、また緊張が戻るけれど、華音の表情は変わらない。
「いや、全然していない」
「スマホのアドもわからない、聞いたような聞かないような、登録忘れたかも」
「それで、お屋敷に電話が入って、立花管理人が段取りをしたの」
あまりの呆気なさに、瞳は逆に不安を覚えた。
「え・・・ねえ・・・一緒に政府の仕事をするんでしょ?」
「個人的な連絡をする時とかはないの?」
その瞳の質問に華音は、驚いた顔。
「ああ、そうだねえ・・・それもあるのかなあ」
「全く考えていなかった」
「政府を通じて連絡すればいいかなあと」
瞳はうなってしまった。
「うーん・・・」
「なんか、藤原美里さんが可哀想になってきた」
「恋愛は許さないけれど、仕事上必要なのに」
「どこかに旅行して迷子になったらどうするのかな」
ただ、華音は瞳の不安などは全く気にしていない。
それどころか、デートのお誘いをしてきた。
「ねえ、瞳さん、今度鎌倉に行く、バイク集団の事件の時にお世話になった旅館にお礼に行く」
「一緒に行かない?」
瞳はまた真っ赤、この時点で藤原美里は、どうでもよくなった。
「はい!行きます!」
華音の手を思いっきり握っている。




