渋谷駅前スクランブルの乱闘(2)
渋谷駅前スクランブル交差点の一角で始まってしまったヤンキー集団同士の乱闘は、より激しさを増している。
そして、それを取り巻く群衆は、面白半分にけしかける。
「やれやれーー!」
「喧嘩祭りだ!」
「男だろ!出血恐れてんじゃねえ!」
「おい!そこのケバイ女をやっちまえ!」
「あーーー!服がビリビリ!笑える!」
「おい!あいつ、倒れたぜ!蹴りまくれ!」
凄まじさを増す乱闘と喧騒の中、松田明美が叫んだ。
「警察だよ!」
「あんたたち!何してるの!」
「ここは喧嘩をする場所でも、けしかける場所でもないでしょう!」
「ハロウィンのお祭りを楽しむところでしょう!」
しかし、乱闘するヤンキー集団も、乱闘をけしかける群衆も、全く聞き耳を持たない。
「はぁ?」
「るせえ!そこの女!何が警察?」
「規制、規制って、うるさい!」
「自由にさせろ!ハロウィンだ!]
「祭りに流血は、つきものだろう!」
「喧嘩祭りってんだ!邪魔するな!」
松田明美は、華音を戦闘に参加させることは出来ないので、公安本部に、「手練れで、使命感を持つ警察官を何人か欲しい」との協力要請を行っている。
華音が松田明美から少し離れた場所、怪我をして倒れている人の位置を確認していると、今西圭子、シルビア、春香、エレーナも到着した。
華音は、松田明美に目配せ、怪我をして倒れている人の場所に歩き出す。
今西圭子
「華音ちゃん、まずは治療や」
シルビアは華音に確認。
「華音、不要な戦闘はしないでね」
華音
「うん、治癒だけにしたい」
春香は怒っている。
「怪我して倒れた人を蹴り続けるなんて、マジにキチガイや」
エレーナも怒っている。
「単なる暴漢集団、程度が低い」
華音たちは怪我をしても蹴り続けられたヤンキーの男の前に到着した。
額からは相当の出血、しかし腹を抑えて苦しんでいることから、腹部にも蹴りを入れられたようだ。
華音はしゃがみこんだ。
「大丈夫ですか?」
痛みで苦しむヤンキー男は「う・・・うぅ・・・」と苦しんでいるだけ。
よく見ると、のどにも靴の跡、のども蹴られたのだろうか。
シルビアは、あちこちに目を凝らす。
「うーん・・・この人ばかりではないね、数か所で倒れている」
春香もあちこちを見て、また怒る。
「なんや・・・あれ・・・女も男もないんか!」
エレーナは、さらに厳しい顔。
「ねえ、あれ・・・あそこで殴られているの小学生の女の子?」
「もう、頭から血を流している」
そのエレーナの視線の先を華音も見たらしい。
「この人、シルビアと春香、エレーナ、お願い!」
「僕は、あの小学生を助ける!」
華音は、立ち上がった。
そして、痛めつけられている小学生の女の子に向かって、走り出している。




