華音vs剣道部員
吉村学園長から、今度は塚本主将に声がかかった。
「ねえ、ところで顧問の佐野先生は、今日はどちらに?」
塚本主将は、脚にまだ力が入らないらしい。
座り込んだままで答えた。
「はい、10月の都大会の打合せで、もうすぐ、戻ると思います」
吉村学園長は、少し難しい顔。
「そうかあ・・・そうなると、今回のことは、塚本君の独断なの?」
塚本主将は、素直に頷く。
「はい、華音君も、まだ転校直後、学園見学の状態なので、わざわざ佐野先生の許可も何もいらないかなあと思いまして」
吉村学園長
「うん、それはそうなんだけれどね、そもそも、たいした話ではなくて」
吉村学園長と塚本主将が、そんな話をしていると、華音が剣道部員たちに声をかけた。
「どうします?打ち合います?」
「もし、その気がなかったら、僕は帰りますけれど」
その華音の言葉で、数人の剣道部員が立ち上がった。
「とても、かなわないと思うけれど」
「華音君の剣道を実感してみたい」
「これも、経験だよね」
その数人につられて、全ての剣道部員が立ち上がった。
そうなると、塚本主将も、いつまでも腰を抜かしているわけにはいかない。
「一応、順番を決めて」と、華音と打ち合う剣道部員たちを整列させる。
華音は、剣道場中央に立ったまま、相手を待つ状態。
打ち合う順番も決まったようだ。
塚本主将が、華音に声をかけた。
「始めていいかな」
華音「はい、大丈夫です」
ただ、その言葉の時点では、竹刀を持っているだけ、構えも何もない。
華音と打ち合う、剣道部員が華音の前に立った。
そして、剣道の基本の構え「中段の構え」を取った。
華音は、少し考えていたけれど、その「中段の構え」に合わせた。
塚本主将の「はじめ!」との声がかかった。
決着は早い。
途端に、相手選手の竹刀が、宙に舞い、剣道場内をカランコロンと転がっている。
相手選手は、顔面蒼白、ただ震え、「怖い・・・」となるばかり。
その後の全ての選手との決着も、全て同じ。
塚本主将の試合開始の声とともに、華音の相手の竹刀が、宙を舞い、剣道場に転がっている状態。
相手選手は、全員が顔面蒼白、身体を震わせ、
「自信なくなった」
「今までの練習は、何だったの?」
「華音君、すごすぎ」
「打ち合うどころじゃないって・・・その前の段階で負けてる」
そんなことをブツブツと繰り返すばかり。
また、その様子を見学していた生徒たちも、口あんぐり。
「華音君の動きが瞬速というのはわかる」
「相手が全く動けない・・・」
「呼吸を全て読まれている感じ」
吉村学園長は、ウンウンとニコニコ。
萩原担任と保健室の三井は、驚いて声も出ない。
そんな状態の時に、剣道部顧問の佐野が戻って来た。
学生服のまま竹刀を持った華音をジロッと見て、その次に、ガクガクと震えるばかりの剣道部員たちを見て、首を傾げている。




