野球部原島の華音襲撃計画
さて、学園の全生徒の人気を集めつつある華音に対して、やはり反感を持つ生徒たちがいる。
その中でも、華音という名前だけでも機嫌が悪くなるのが、野球部で四番バッター、プロからも注目されている三年生原島である。
「田舎者の華音が転校して来るまでは、俺が学園の花形だった」
「女どもは俺が打つたびに、キャーキャー騒ぐし」
「手紙もメールもデートの申し込みも多かった」
「それがどうだ・・・華音が来てから、半減・・・いや3割にも届かない」
その原島を取り巻く野球部員たちも、その嫌悪感に影響されたのか、華音への文句が続く。
「あの花壇作りが実に邪魔だ」
「あんなたくさんの生徒が群がると、練習の邪魔」
「華音がくだらないことするから、馬鹿な生徒が集まる」
「様子を見て、華音たちが作った花壇なんて、つぶそう」
「ああ、石ころでも投げ込んでおくか」
「華音と生徒たちのアセリ顔が見物だ」
それでも、そんな行動を心配する取り巻きもいる。
「原島さん、華音たちが気づいて妨害して来たらどうします?」
「華音は剣道もすごいって噂ですよ」
「学園長とか教師連中も華音の肩を持っているみたいだし」
しかし、原島はそんな心配をせせら笑う。
「それが狙い目だ」
「闇に紛れて華音を襲う」
「大勢で金属バットを持って、一斉に華音に迫る」
「俺たちは野球部、金属バットを振ったところで、全く不自然ではない」
「華音を殴りつけるように振るけどな」
「その華音が抵抗しようとして、向かって来た時に写真と動画を撮る」
「後は警察に通報、かくして華音は不当な暴行行為につき逮捕、学園追放」
「かばった学園長も処分は免れない」
原島のせせら笑いに安心したのか、華音を襲い花壇を破壊する計画は、決定したらしい。
心待ちにして、華音の下校時間を待つ。
さて、午後5時、野球部の襲撃対象の華音が、文学研究会のメンバーと校舎を出て来た。
見張っていた野球部員の一年生が早速原島にご注進。
「原島先輩、華音の奴が出てきました」
「文学研究会の女どもと一緒です」
原島は、また不機嫌な顔。
「気に入らねえ、何故、あんな田舎者で文化部の華音を女が囲む?」
「ちょっと格闘が強い田舎者じゃねえか」
そして、野球部の取り巻き全員に指示。
「行くぞ、手はず通りに」
原島と、取り巻き全員が金属バットを持って、華音に向けて歩きだす。
・・・が・・・なかなか、華音には近づけない状態のようだ。
原島はうなった。
「う・・・テニス部女子?沢田文美と小川恵美?次の大会の優勝候補じゃねえか」
「あいつらも囲みやがった」
「バレー部も寄って来た・・・」
「何だと?空手部の剛も・・・剣道部の塚本も・・・」
「華音に集まるのは、男も女も関係ないのか」
そして近づくにつれて、華音と、華音の取り巻きたちの笑い声も聞こえて来る。
内容は、華音の祖父の関連農園での「農業実習と料理教室」のようだ。
そんな状態で、野球部原島と取り巻き連中の華音襲撃計画は、実施困難を極めている。




