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華音のスコップ振りは、意外な効果を生むことになった。

クルクルと重たいスコップを回し続ける華音に呆れていた柳生清は、剣道界の大物二人に声をかける。


「おい、お前たちもやって見ろ」

「竹刀とか木刀ばかり使えたって、しょうがない」


大師匠の柳生清に言われては仕方が無い。

高校剣道連盟の宮本がまずスコップを持つ。

しかし、そもそも二本の指で持ち上げること、そのものが出来ない。

日本剣道協会の竹山もまったく同じ状態で、二人して途方に暮れてしまう。


柳生清は、それでも三回回して断念。

5分は回している華音を見て呆れ顔。

「指の力だけではない、腕から全身のバランスが取れていなければ、あれは無理」

「まあ、軽々とやるもんだ」


そんな大人三人を見て、華音はまたスコップを使い、地面を掘り始める。


吉村学園長が華音に声をかけた。

「ねえ、華音君、花壇作りだよね」


華音は即答。

「はい、花壇でもいいですし、土を少し治せば野菜も出来るかも」

「レタス、チンゲン菜、エシャレット、白菜、カブ、大根・・・」


それを聞いた柳生清が笑いだす。

「さすが華音君、花にも野菜にも詳しい」

華音も笑う。

「奈良の田舎育ちで・・・でも、スコップも花も野菜も、霧冬先生仕込みです」


柳生清は、剣道界の大物二人に声をかけた。

「おい、お前ら、変な言いがかりをつけたんだ」

「少しは手伝え」

「棒切れ振っているだけじゃ、いかん」

「俺もスコップを振りたくなった」

「お前らも、たまには農作業をしてみろ」


ここでも、剣道界の大物二人は全く、反論できない。

結局二人とも、スコップを持ち、華音たちと並んで土を掘り返しはじめる。


それを見ていた生徒たちも、その作業に参加したくなったらしい。

学園の農作業倉庫から、スコップを持ってくる生徒が多い。

華音のスコップの振り方を、見よう見まねで、スコップを振りだす。


また、生徒たちは、そんな作業が楽しいらしい。

どんどん、会話が弾んでいく。


「こんなの初めてだけど、仕事をしている実感がある」

「花も育てたいし、野菜も育ててみたい」

「今日は土づくりをして、何を植えるか検討会しない?」

「・・・そうなると花だし、美術部も参加してもらって・・・」

「野菜を作るなら、レストランのシェフも呼んだほうがいいね」

「新鮮な朝取りのレタスでサラダもいいなあ」

「案外、大根のお漬物も好き」

「いやいや・・・大根はおでん」

「白菜かあ・・・鍋物でもいいね」

「作業した人は、鍋パーティー?」

・・・・・


そんな状態で、多人数でスコップ振りを行ったので、土づくりは、ほぼ三十分で終了。

学園整備の庭師が、手伝った全員に頭を下げる。

「二日か三日かかる作業でした、本当にありがとうございます」

「若い人たちと作業出来て、実に楽しかった」


吉村学園長も、おほめの言葉を言う。

「これが本当に役立つ勉強と思います」

「やったことのないことを学び、それが実益になる」

「単なる試験の結果とか、大会の結果とは、次元の異なる話」

「何よりみんなで作業を行った充実感と、今後の楽しみがあるのではないでしょうか」


生徒はもちろん、学園に入って来た当初は猛々しかった剣道界の大物二人まで、柔らかなスッキリとした顔になっている。

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