華音は、お散歩計画を立てるけれど。
午前中のお地蔵様洗い、サンドイッチ朝食、花壇作り、ポトフの昼食、音楽遊びまで華音とたっぷり楽しんだ瞳は、また華音に送られて自宅に戻った。
瞳の母好子は、玄関で華音を見るなり、ウルウル。
「華音ちゃん、大丈夫?」
「もう動いて大丈夫なの?」
華音が「大丈夫です」と恥ずかしそうに笑うと、もう我慢の限界。
好子は、「あーーー心配したよーーー」と思いっきり抱きしめてしまう。
瞳は、ムッとするけれど、とても止められないほどの勢い。
ようやく解放された華音は、その抱きしめが苦しかったのか、少しゲホゲホするけれど、「じゃあ、また明日!」と元気よく家に戻っていく。
瞳は、そんな母に少し文句。
「抱きつき過ぎ、年甲斐もない」
好子は、軽くいなす。
「あれは、世代が違うハグ、全く問題なし」
そのうえ、瞳にチクり。
「お役に立てたの?エレーナに負けないようにできた?」
瞳も負けない。
「負けているのは胸だけ、あとは互角以上」
「エレーナとは料理を教え合うことになった」
好子は呆れた。
「あのさ・・・瞳が料理好きなのはわかる、でも、まだまだなの」
「エレーナはルーマニア料理が上手なんでしょ?山の幸、海の幸を自然に活かす、強敵なの」
「あなたは・・・普通の和食の基本程度だもの」
瞳は、少し焦る。
「そうだけどさ・・・」
瞳は結局、母好子にスリスリ。
「何か一品でも教えて」
母好子も、それは教えねばと思ったようだ。
「エレーナが知らないことがいいね、となると和風の煮物」
「日本の野菜の旨味を引きだすもの」
そして、その夜から、母好子の瞳への厳しい料理伝授が始まっている。
さて、華音は屋敷に戻り、自分の部屋に入る。
「ふむ、勉強もせねば」
やはり、根が真面目な華音、夕食まではキッチリとお勉強タイムになる。
そのお勉強タイムも手際よく終わり、華音は昨日からのことを考える。
「そもそも、僕が都内にいるということが知られてしまった、それが柳生事務所からの連絡」
「柳生ビルの見学は、ついでのようなもの」
「その後は、永田町での煽り運転被害者を手当てして、梶村雄大のひどさが我慢できなくて、対応した」
「その後、疲れたというよりは、死にかけた」
「実際、死ぬ寸前だった、薬師如来様と阿弥陀如来様の御力」
「オリンポス12神のデーメーテール女神様の癒しの御力はエレーナさんの手を通じて、それも本当に身体の芯に力をいただいた」
「最後は瞳さんの吉祥天様、その吉祥天の涙で、生き返った」
そんなことを考えていた華音は、窓の外に目をやった。
「そういえば、ここから歩いて、少しの場所」
「千歳烏山にお寺がたくさん並んでいる通りがある」
「ここのお屋敷のお祖父さんと、子供の頃、散歩した」
「次の土日ぐらいに、また歩いてみようかな」
「奈良育ちだから、お寺には慣れているし」
華音の部屋のドアをノックする音が聞こえた。
華音がドアを開けると、シルビアと春香が立っている。
シルビア
「そろそろ夕ご飯」
春香
「お刺身とか魚料理みたいだよ」
華音が頷いて、そのまま部屋を出ると、シルビア。
「何か考えごとしていたの?秘密はだめ」
春香も続く。
「しっかり相談してよね、単独行動は厳禁する」
華音は、素直に頷いている。




