華音は書庫にこもり、源氏物語研究(5)
華音は、書庫に集まったお姉さんたちに、真面目な顔。
気持ちを固めて話しだす。
「まだまだ、源氏と神話とか心霊現象の関係する話は尽きません」
「『須磨』とか『明石』に出て来るの海竜王の話は、山幸彦が竜宮に赴いて豊玉姫と結婚した神話に由来を持つとか」
「源氏一行が住吉の神に、暴風雨を鎮めるために祈りを捧げると、明石入道の迎えで須磨を離れ、明石に赴く。後に明石入道は、永年住吉の神に娘のことを祈り続けていたと告白、源氏と明石の君が結ばれるのは住吉の神の御導きと思う」
「その他、玉鬘の幸せを祈る鏡の神」
「玉鬘上京の際には、九州松浦、箱崎にもある八幡宮を意識して、石清水八幡宮に参詣」
「光源氏は、その玉鬘が入内計画にあたって「源氏」ではなくて、「藤原氏」として考え、春日の神に頼むことを考える」
「なかなか、言い切れないけれど・・・」
今西圭子は、「ほー・・・」と驚いた顔。
「華音ちゃん、さすがや、よく読んどるなあ」
「葉守の神の話もあるね、樹木の葉を守る神で、柏木に宿る」
「源氏の子、夕霧は柏木が衰弱しした後、その未亡人の落葉の宮に迫る際に、「柏木」つまり葉守の神の許しを得ていると言い切る」
松田明美も、今西圭子には負けていない。
「例の夕顔事件は、三輪山の神の伝説に関係するという話もあるよ」
「光源氏と夕顔は、互いに素性を知らせないまま、逢瀬を重ねる」
「夕顔は源氏の従者の後をつけさせるけれど、結局はぐらかされる」
「そもそも光源氏は、身元を知られないようにと、顔をまったく見せずに、深夜に夕顔の邸にやってくる」
「三輪山伝説でも、娘が麗しき男性が夜這いをしてきたけれど、その姓名を知らないと言い、日本書記では哀しい最後となる」
「源氏の夕顔も、荒れ屋敷にとりついていた悪霊に責められ突然の死」
ここまでくると、シルビア、春香は、口あんぐり。
エレーナは、ただ聞くだけの状態。
そんな状態を感じ取ったのか、華音がお姉さまたち全員に声をかける。
「とても興味深いけれど、時間がとにかくかかります」
「今日はここまでにしましょう」
「お食事などはどうですか?」
時計を見ると、午前11時30分を過ぎたところ。
今西圭子も松田明美も、素直に頷く。
シルビアがエレーナの顔を見た。
「ねえ、エレーナ、難しい話でごめんなさい」
「何か食べたいものがある?」
エレーナは、すぐには思いつかないようで、考えている。
春香は少し考えた。
「せっかく源氏とか京都の話が多かったから」
「京風の散らし寿司とか、どう?」
するとエレーナの顔がパッと輝いた。
「あ!お祖父さんにも聞いたことあります、日本に行ったら食べて欲しいって」
華音は、そのエレーナの反応を受けて、立花管理人にスマホで連絡をしている。
さて、書庫を出た華音の一行は、少し庭を散歩してから、食堂に入った。
そして、その食堂には、連絡した通り、出来立ての「京風散らし寿司」で、全員が満足そうな顔。。
華音
「見た目が華やか」
今西圭子
「甘めに煮たしいたけ、千切りの薄焼きたまご、焼のり、きぬさやなど色とりどりの具が味のアクセント」
松田明美
「ちりめんじゃこは、必須」
シルビア
「これこれ!この味大好き!」
春香
「すごいなあ、関東なのに、完全に京都の味や」
エレーナは、とにかく美味しくてたまらないようで、ものすごい食欲を見せている。




