報道の自由VS報道される側の人権?
華音は、真面目顔で話を続ける。
「東京の祖父さんは、世界相手に貿易をして、あちこちの国を渡り歩いて」
「いろんな国の人と話をして、仕事をして、とにかく視野が広かった」
「あの書籍を見るだけでも、すごいなあと思う」
「世界各地の宗教書、歴史書、文学、詩」
「ファッション誌みたいな世俗的なもの」
「映画とか音楽、美術の芸術に関する本」
「それも、全部読みたいなあと思っている」
華音の真面目顔話に、「キョトン」となっていた今西圭子が反応する。
「ねえ、華音ちゃん、奈良から持ってきた日本の古典系だけじゃないって、大変だねえ、その上、学校の勉強もある」
松田明美も、今西圭子への対抗上、割り込む。
「うんうん、いつでもお付き合いしますよ、私は語学にも自信あるから」
「そういった外国系は、私に任せて」
シルビアと春香が、「明美さんと圭子さんのまたバトル?」と思っていると、華音は、また違う話をはじめた。
「ところでね、電車の天井からつり下がっている週刊誌の広告」
シルビアと春香は「ふむ」と思って、その週刊誌の広告を見る。
今西圭子は首を傾げる。
「華音ちゃん、あれがどうかしたの?」
松田明美も、ほぼ同じ。
「いつも下がっているよ、変?」
華音は、また真面目顔。
「なんか、他人とか有名人の文句話ばかり」
「どこまで根拠があるのかなあ」
「離婚の慰謝料とか、どうやって確認したのかな」
シルビアも首を傾げた。
「ふむ、当人同士と仲裁にはいった裁判所とか弁護士しか知らないはず」
春香も考えた。
「そもそも、他人に言うべきこと?個人間のことでしょ?」
今西圭子は腕を組む。
「自分がもらえるわけでもないのにね、何で気にするのかな」
松田明美は、警察当局としての意見。
「あまりひどいと名誉棄損になるし、報道の真実性も問われる」
「確かに根拠が希薄な中傷記事が多いなあ」
華音は、また中つり広告を見て首を傾げる。
「そもそも、三角関係とか不倫とか、他人が口を出すべきもの?」
「当人同士の話では?」
シルビアはまた違うことを言いだす。
「とにかくね、朝からあんな広告を見ると、嫌な気になる」
「悪事、千里を走るって言うけれど、無理やり知りたくないなあ」
春香も続く。
「誰が喜んであんな記事を読むのかなあ、他人を貶め、文句ばかりの記事・・・しかも根拠に乏しい憶測記事」
華音は、また話題を変えた。
「犯罪者の実名報道、被害者もそうかな」
「報道の自由とはいえ、報道される人のことを考えていない」
「犯罪者はともかく、家族や近親者、学校や職場まで無神経な取材とか、報道が続く」
松田明美は、警察当局として、少し困惑する。
「犯罪抑止の効果もあるけれど、二次被害が出るね、確かに」
今西圭子は難しい顔。
「被害者の家族が、あまりのマスコミの取材方法のひどさで、引っ越しを余儀なくされたんだって、その後転居先を見つけられて、マスコミに謝罪しろって、暴言をはかれたみたい」
シルビアが今西圭子の顔を見た。
「どうして謝罪するの?そんな理由ある?」
今西圭子は、首を横に振る。
「報道の自由を勝手に引っ越しして侵害したって、怒られたんだって」
春香は、ムッとした顔になった。
「マスコミの報道の自由は、他人の権利などどうでもいいの?」
お姉さんたちが憤慨する中、華音はじっと中つり広告を見つめている。




