雨宮瞳の動揺と、その母好子のうれしそうな顔
雨宮瞳は、テニス部での反省会を終えて、帰宅した。
そして、家に戻っても、心に浮かぶのは華音のことばかり。
「はぁ・・・いい子だなあ」
「すごく頼れるし、可愛い」
「ちょっと慎重すぎて、人に気を使いすぎるけれど」
「華音君が彼氏なら、幸せだなあ・・・」
「・・・でも・・・無理かなあ・・・」
瞳はテニス部での反省会を思い出した。
「顧問は、もう華音君のファンだし、絶対に全員で守ろうとか」
「部長は、頼もしい弟ができたような感じって、ニコニコしているし」
「おまけに沢田先輩!あの抱き付き方は何?」
「ベタベタしてさ、あーーーー気に入らない!」
「それは、あのひどい捻挫を、治してもらったんだから、感激するのは当たり前だけど・・・」
「でもさ、華音君、真っ赤になってて困っていたじゃない!」
「小川先輩もそう!」
「沢田先輩と腕を同時に組んだりして!」
「そのうえ、学園見学は私たちがって、どういうこと?」
「学園見学は、私が担任から指示されたの」
「だから私の仕事なのに・・・」
「私から、華音君を横取りするってこと?」
「うーーー・・・何とかしなくては・・・」
「それにさ、今日の話が学園内に広まれば・・・」
「華音君、人気者になるよね」
「私の出番は?ない?なくなっちゃう?」
「あーーーーやだやだやだーーーー」
この時点で、雨宮瞳は、ほぼ錯乱状態。
その瞳に、母親からの「夕ご飯コール」があった。
「食べる心の余裕はないって!」
瞳は、そう思ったけれど、「明日、やつれた顔を華音君に見せたくないなあ」とも思った。
そして、夕ご飯の食卓についた。
瞳が「いただきます」と言って、食べ始めると、母親の好子が不思議そうな顔。
好子
「あら、瞳、珍しいわね、いただきますなんて」
瞳はハッとした。
「え?そう?あ・・・そうだねえ・・・」
好子
「どういう風の吹き回しなの?」
瞳は、焦った。
また、華音の顔が浮かんできてしまった。
「えーーっと・・・そのほうが美味しいって」
「うん・・・そういうことを言った子がいて・・・」
瞳の顔が、真っ赤になった。
好子は、その瞳の赤い顔を見逃さない。
「ふーん・・・男の子?」
「でも、それはいいことを言う男の子だね」
「何て子なの?」
瞳は、ますます真っ赤、そして誤魔化しても仕方がないと思った。
「今日ね、転校生が来たの」
「奈良からって・・・」
「三田・・・華音君って子」
母好子は、少し驚いた顔。
そして、瞳の顔をじっと見る。
「へえ・・・三田・・・華音君ねえ・・・」
瞳は、その母の驚いた理由がわからない。
「何?母さん」
ついつい、聞き返すことになる。
母好子の顔は、うれしそうに変化した。
「ふふ・・・それはそれは・・・」
今度は、瞳が驚いている。




