男性用風呂でくつろぐ華音に、今西圭子登場
さて華音は、女性用の大風呂でそんな話がなされているなど全く知ることもない。
久しぶりに、シルビアと春香が一緒でない風呂に一人で入り、少々リラックス。
「作業も超スムーズに進んでよかった」
「難しい本も多いけれど、ゆっくり読むかなあ」
「何年かかるかわからないけれど」
今後のことも、一抹の不安があるけれど、それでも「異性」のシルビアと春香が一緒ではない。
そこで、少々の本音が出る。
「全くあの二人は、うるさい」
「あーだこーだって、一つ年上だからって、お姉さん風をふかして」
「何から何まで、文句を言ってくる」
「子供とかガキンチョとか・・・」
「ああ、それは意味が同じか」
華音は、布団の中での二人の胸を思い出した。
「マジで、二人の胸は苦しい」
「逃げようにも押さえつけて来る」
「さらにめり込む」
「そして、逃げようとしたことを怒る」
「あれは人権侵害、安眠妨害ではないだろうか」
そうかと言って、反論も難しい。
「あの二人には、口ではかなわないしなあ」
「100回に1回はやさしいし」
華音は、そこまで考えて、シルビアと春香については、考えるのをやめた。
「そういえば隆さんが来るって言ってた」
「一つの部屋を改装して、厳重管理ができる図書室を作るのかな」
「隆さんの事務所のことだから、あちこち仕掛けを作るのかな」
「とにかくボタン一つで、ポンと本が出て来るのがいいな」
華音が、ゆっくりと湯舟につかって、そんなことを考えていると、男性用の大風呂のドアが開いた。
華音は思った。
「あれ?立花さんと従業員たちは別のお風呂って言っていたから」
「ここは僕だけのはず」
「隆さんが、もう来たのかな、夜って話だったのに」
華音が首を傾げていると、湯煙の向うに見えるのは、どうみても若い女性。
華音が「え?」と固まっていると、
「おーい!華音くーん!」
との声。
華音は、はっきり見えなくてもわかった。
今西圭子の声だった。
華音はあわてた。
「圭子さん!ここ、男風呂です!」
「圭子さん、困ります」
しかし、湯船の中を、ズブズブと進んで来る音が大きくなるし、今西圭子の「身体」も、はっきりと見えてくる。
そして今西圭子が、うららかな声。
前を隠そうなどという気も、全くないようだ。
「何を言っているの!もーーー!」
「華音ちゃんと私の関係でしょ?」
「いい?私は華音ちゃんの、おむつを替えたことも、何度もあるの」
「あの頃の華音ちゃん、可愛かったなあ」
華音は、あまりのことに、両手で顔をおおった。
しかし、圭子に、すぐに取り払われ、怒られた。
「何をためらっているの?この胸の呪文の模様をはっきり見なさい」
目を開けた華音は、驚いた。
今西圭子の豊かで美しい胸に、不思議な呪文が浮かび上がっているのである。




