仕事好きな立花管理人 華音は引け目
さて、懸案の華音が寄託された大量の書籍類は、立花管理人の使用人への指示により、2階の華音の部屋にある500冊以上の分、1階にあった、ほぼ同数の書籍類を含めて、同じく1階の大広間、かつてはダンスホールに、「虫干し」を施された上で集められている。
また、立花管理人は、それ以外にも、週末の整理作業の準備に余念がない。
「まずは、メイン作業用のPC」
「歩きながらメモを取ったりするだろうから、PCにリンクしたタブレットも数台必要」
「動いていれば、汗もかくから、水分の準備」
「蒸しタオルも、冷たいものと、温かいものを、準備」
「口に入れて作業ができるキャンディーのようなものも、いるかな、これは、好みがあるから数種類」
「虫干ししたとはいえ、まだまだ香料が残っているから、換気扇も整備」
「貴重な書籍に直接触らないように、薄い手袋を余分に準備」
「書物を移動するための台車は、数台必要」
また、立花管理人は、書籍整理を手伝う人々を考える。
「華音様は当然として、ここのお屋敷で、シルビアさま、春香さま」
「それ以外に、華音様のクラスメイトの雨宮様、華音様の御担任の萩原様も来られるとか」
「文化庁の今西様をはじめとして、数人とお聞きした」
「そうなると、警備は当然強化」
「やはり、柳生事務所に警備を依頼しよう」
作業中の食事も考える。
「胃にもたれず、作業の邪魔をしないメニューを料理人に指示、考えさせよう」
「手が万が一にも、油などで汚れないものになるのだろうか」
作業後も考える。
「当然、大風呂は決定、疲労回復を目的とした薬湯とする」
「それから、作業を手伝った人への、謝礼を準備しないと」
「商品券などの金券がいいのだろうか」
「系列の旅館やホテル、レストランなどの招待券」
「それに、ここの屋敷で焼いたクッキー詰めあ合わせ」
・・・・・・・
そんな状態で、立花管理人の頭の中は、フル回転している。
華音は、立花管理人から「準備はお任せください」と言われ、頭を下げられた時に、「はい、すみません、お願いします」と返したけれど、少々の罪悪感を感じている。
「僕が学園に行ってしまっている時に、立花さんが、いろいろやってくれているんだ」
「本来は、僕がやるべき仕事なのになあ、情けない」
「かと言って、学園も、この理由では休めないし」
そんな罪悪感を感じている華音に、またしても、一緒の布団に入ったシルビアと春香が、いろいろと言う。
シルビア
「そんなんで落ち込んでどうするの?」
春香
「立花管理人は、頭も仕事も、超キレキレなの」
シルビア
「そもそも、管理人とか執事のような仕事が大好きらしい」
春香
「忙しい方が、楽しいらしい」
シルビア
「誰も華音に立花管理人の仕事をしろって、思ってもいないし、言ってもいない」
春香
「華音には、華音にしかできない役目があるの、それをしっかりなさい」
華音は、少し落ち着いたけれど、まだ暗い
「僕もまだ15歳で、子供だなあ」
シルビアが、そんな華音を諭す。
「何でも自分でやろうとしないの、任せることは任せなさい」
春香は、その胸に華音の顔を包み込む。
「ゴチャゴチャ言わないで、まずは寝よう」
華音は、心の中で、思うしかなかった。
「春香さんの胸が苦しくて眠れない」
「いつまで、こんな生活が続くのだろうか」
ただ、華音は、やはり素直、いつの間にか眠ってしまった。




