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雨宮瞳の、華音に対する恋心が芽生えた瞬間

グラウンド内を、三田華音と雨宮瞳、そしてクラスメイト達が、沢田文美を担架に乗せて、慎重に運ぶ。

その姿を見かけたらしい、他の運動部員たちが、たくさん集まって来る。


「ねえ、沢田さん、どうしたの?」

「どうしたの?」

沢田は痛みが強いらしい、声も出せない。


雨宮瞳が答えた。

「右足首が捻挫みたいです」


「それで担架に乗せて、保健室に」

保健教師の三井も雨宮瞳を補足する。


集まって来た運動部員たちの関心は、担架の前を持つ三田華音にも向けられた。

「ねえ、瞳ちゃん、前の子、見かけない顔だけど」

「もしかして転校生?」


華音が、それには答えた。

「はい、今日から転校してまいりました三田華音と申します」

ただ、答えるのは、それのみ。

本当に真剣、慎重に担架の揺れを抑えようと、進んでいく。


するとまた運動部員たちは、声をかけてくる。

「ねえ、瞳ちゃん、テニス部で担架持っているのは瞳ちゃんだけだよ」

「テニス部員が何で、持たないの?」

「仲間なんでしょ?高田顧問は何をしているの?」


雨宮瞳は、本当に応えづらそう。

「すみません、まず華音君が沢田先輩の怪我を察してくれて、すぐに動いてくれて、こうなってしまって・・・」

応えるのもそんな程度。


保健教師の三井が、また補足する。

「テニス部員も、高田顧問も、見ているだけだった」

「中には、邪魔だから、どいてって言っていた人もいたみたい」

「怪我人を助けようなんて気持ちを全く感じなかった」


それを聞いていた他の運動部員に、動揺が走った。

「じゃあ、華音君が気が付かなかったら、担架も遅れたの?」

「呆れるよね・・・」


華音から、また返事があった。

「すみません、今日、転校したばかりで、出すぎたかもしれません」

「でも、痛みを早くやわらげてあげたいだけで」

「今は、言葉一つ一つが、右足首に触る状態、響く状態と思うんです」


保健室の教師三井が、驚いたような顔で、華音を補足。

「あなたたち、心配してありがとう」

「今は、華音君の言う通り、治療を急ぎます」


その言葉で、集まっていた他の運動部員も、担架の周りを離れ、担架はスムーズに進むことになった。



雨宮瞳は、ここでも感心しきり。

「私だったらオタオタして、立ち止まって話したりして、治療が遅れたかも」

「華音君は、何よりも痛んだ人を優先している」


そしてまた感じた。


「華音君の背中、見ているだけで安心する」

「あのお顔もきれいで可愛いけれど、言う事、やる事がシンプルにして、真実味がある、すごくやさしいし、そのうえ強い」

「・・・なんか・・・ずっと一緒にいたいなあ、華音君なら」


これが、雨宮瞳の心に芽生えた「恋心」の瞬間であった。

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