柔道部副主将篠山の不穏な情報と華音
沢田文美は、本当に不安そうな顔で、話しはじめた。
「あのね、華音君、柔道部の副主将の篠山って人なんだけど」
「どうもね、華音君が気に入らないみたいなの」
華音は、そこで首を傾げた。
「そんな人、あったこともないのですが」
「当然、お話をしたこともないのに、気に入るとか、気に入らないということもないでしょうけれど」
沢田文美は、首を横に振る。
「いや、そううじゃないの、空手部での華音君のことを、誰かから聞いて知っちゃったみたいなの」
「それを、同じクラスの空手部の剛君をからかってね」
「空手が弱いとか、オチャラケとか言って、一悶着」
「喧嘩寸前になったのかな」
華音は、困ったような顔。
「そうなると、僕も原因になるのかなあ」
沢田文美の顔が厳しい。
「それでね華音君、篠山さんって、まともなタイプではないの」
「とにかく危ない人だから気をつけて」
華音は、また首を傾げた。
「まともでないとか、危ないと言われても」
沢田文美は真顔。
「私も直接柔道の試合を見たことがないけれどね」
「とにかく反則が好きらしい」
「目つぶしスレスレに組むとか」
「足払いと称して、思いっきり蹴るとか」
「急所打ちをするとか、負けそうな時に、それで反則負けになる時もあるみたい」
「でも、謝るフリをするだけ、畳からおりれば高笑いとか」
「そんな話を聞いたの」
華音と一緒にお弁当を食べているクラスメイトは一様に不安な顔。
雨宮瞳は
「ねえ、華音君、どうする?」
他の生徒も困惑気味。
中には、篠山の噂を知っている生徒もいるようだ。
「とにかく陰険でシツコイ性格ってのは聞いたことがある」
「ネチネチと、他人の失敗を言い続ける」
「自分の自慢と他人の批判と貶めしかしない」
「鞄の中に、ハンティングナイフがあるとか」
「本当は刃物を持ち込むとよくないけれど、隠れて持って来ているみたい」
「うん、それで下級生をカツアゲしているって聞いたことある」
「でも、それを学園とか親に言ったら、もっとひどい目に合わせるって言ったとか、マジ危険」
・・・・・
様々、不穏な噂は続く。
華音は、黙って聞いていたけれど、表情は、いつもの「冷静顔」。
そしてようやく口を開いた。
「その篠山って人から、何かアクションがないと動きようがありません」
「今は気にしないことにします」
それでも不安気な顔で華音を見つめる面々に、難しい顔で華音は応えた。
「難しいのは、道場とかでは加減ができるけれど」
「屋外とかになると、加減って難しいんです」
「投げ飛ばして、相手の頭をコンクリート地面に直撃させれば、命だって危ない」
雨宮瞳は、華音の言葉で「持ってこい詐欺」の時のことを思い出した。
「そうか、あの若いヤクザ男、華音君の足払いで頭からコンクリート地面に突っ込んだんだっけ」
「その後は、立とうとしても立ち上がれず」
華音は、腕を組んで考え込んでいる。




