表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/500

華音の速やかな動きと、学園長のテニス部顧問に対する言葉

保健室教師の三井春香がテニス部顧問の高田に声をかけた。

「高田顧問!三田華音君の言う通りです!」

「すぐに沢田さんを担架に、乗せてください」


声をかけられた高田顧問は、名前を呼ばれて、ようやく気がついたらしい。

ハッとした顔になって、

「ああ、そうですね、担架をわざわざ準備していただいて、申し訳ない」

と、ようやく反応。


華音は、担架を持ち、

「すみません、皆様、沢田さんの前を開けていただきたいのです」

と、沢田の前に進む。

保健教師の言葉が効いたのか、ようやく沢田の前が開かれた。


その華音と一緒に、雨宮瞳も沢田の前に。

「沢田先輩、大丈夫ですか?痛みます?」

沢田文美は、右足首を抱え、真っ赤な顔、脂汗を流して苦しんでいる。


華音が沢田に声をかけた。

「まかせてください」

沢田が「えっ?」と言う顔になるけれど、華音の動きは素早い。

すんなりと沢田の背中に腕を入れ、担架に乗せてしまった。


雨宮瞳は、ここでも驚いた。

「すごい・・・あっと言う間に」

「なめらかだなあ」

「うーん・・・何者?華音君って」


しかし、雨宮瞳は、驚いている暇はなかった。

今度は、華音が雨宮瞳に、

「雨宮さん、誠に申し訳ありません、担架のもう片方を持っていただけないでしょうか」

「とにかく、治療を少しでも早めたいので」

と声をかけたのである。


雨宮瞳は、その時点で周囲を見て否応がないと感じた。


テニス部に男子生徒もいるけれど、男性の顧問もいるけれど、怪我人を助けるような気持があれば、とっくに保健室に連絡をしているはず。

それに、華音が担架を持ってきた時点で、自ら動くはず。

しかし、華音が沢田文美を担架に乗せても、ただ見ているだけ。

テニス部顧問高田にしろ、男子部員にしろ、全く動こうという雰囲気は全く感じられない・


雨宮瞳は、華音に応えた。

「わかった、私が足側を持つよ」

華音からまた声がかかった。

「ゆっくり持ち上げますよ、呼吸を合わせて、よいしょ!」

雨宮瞳も、全くすんなりと呼吸を合わせて、「よいしょ」と、ゆっくりと持ち上げる。


すると華音から、また指示。

「平地では、足を進行方向に」

「階段の上りは、頭側が進行方向になります」

「適宜、方向を変えます」

「あまり痛みを与えないように、ゆっくりと進みます」


雨宮瞳は、ここでも否応がない。

「わかった!華音君!」

大声で応じると、華音は、ゆっくりと進みだした。


そんな三田華音と、雨宮瞳に保健教師の三井春香は、ひとまず、ホッとした顔。

「華音君、瞳さん、ありがとう、慎重にね」

と声をかける。

すると、三田華音の校内見学につきあっていたクラスメイトの中から四人、担架に走り寄った。

「私も横を持つよ!」「僕も、手伝う!」

当初は二人だった担架の担ぎ手が、六人に増えている。

そして、保健教師の三井春香も一緒に保健室に向かう。


しかし、そうなっても、テニス部顧問高田と、テニス部員たちは、あっけに取られるだけ、ただ、立ち尽くすだけ。


吉村学園長が呆れたような顔で、テニス部顧問高田高田に声をかけた。


「高田さん、競技会の成績よりも、まずは怪我人に対処すべきなのでは?」

「あなたは、競技会の成績さえよければ、何でもいいの?」

「あなたは、そういう指導方針なの?」


吉村学園長の、叱責にようやく自らの至らなさを気づいたらしい。

テニス部顧問高田は、その顔を下に向け、全くあげることができない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ