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第1話 夢の続き

「ママ!この本読んで!」


「いいわよ」


私の所に、歩み寄って来た子供が、持っていた本を手に取った。


「なんでこの本が?」


この本の表紙を見た時、私は動揺を隠せなかった。


「ママ!読んで読んで!」


こういう、子供の無邪気さを見るとついついやってあげたくなってしまう。


「わかったわ!」


この本の事は、誰かに言ってはダメだ!

そうわかっているのに…


「この本の名前は、⿴⿻⿸⿴⿻⿸よ。」


「ある所に、体は小さいが、心はとても大きい女の子がいました。彼女は、不思議の国、鏡の国と (省略) そうして彼女の行いにより2つの国は平和になったとさ。おしまい」


「面白いー!」


「そうだね…」


そう言った彼女の頬に一粒の涙が伝った。


「ママ?なんで泣いてるの?」


「ちょっと昔を思い出しちゃって」


「私、行かなければいけない所があるの。いつ帰って来れるかわからないから、それまでの間おじいちゃんと仲良くしててね。それと、この本を、二度と読まないようにね。」


「何処に行くの?」


「ちょっと世界を救うヒーローになってきます!…じゃあね」


「待って!ママ!ママ……」



「おい、狭山起きろ!おーい!」


俺は、その声で目を覚ました。

さっきのは、なんだったんだろう。

俺に母親なんて居たのか?

さっぱり分からなかった。


「お前は、ただでさえ成績が悪いんだから寝てる場合じゃない!」


「すいません」


「そんじゃあ、授業再開するぞ!」


そうして授業が再開したが、今の俺では睡魔という最悪の敵には、勝てなかった。

はぁぁぁ、眠い

大きなあくびをし、また深い眠りについた。


キーン コーン カーン コーン


授業が終わった。そう思い顔を上げたら、今まで満席だったクラスに、誰も居なくなっていた。


はっ、と息を呑み時間を見てみると、午後の五時を回ったところだった。


「やばい、寝すぎた。」


何で誰も起こしてくれないんだよ!

そう思ったが、仲のいい友達がいない事に気が付き、肩を落とした。



「じいちゃん、ただいま」


「おう、健二か!おかえり」


「今から剣の稽古をするが健二もくるか?」


「あぁ、準備するから、先に道場に行ってて」


俺のじいちゃんは、剣道の世界でも有名な達人である。

何度もじいちゃんに、挑んでは負けているうちに、俺もそこそこ強くなってきたとじいちゃんがいっていた。

しかし、俺はじいちゃん以外と試合を挑んだことがない。だから強くなっている実感がわかない。

でも、将来何かの役にたつだろうと思い、剣道を辞めなかった。


「じいちゃん、今日は2戦お願い」


「わかった」


じいちゃんは、剣道のことになるとやたら厳しくなる。


まず俺は、剣先を少し振れさせて、こちらの軌道が読めないようにした。


じいちゃんと毎日試合をしているが、今日のじいちゃんはいつも違い、いらだっている様子だった。


じいちゃんが少しふらついた。


俺は、それを見逃さずに、一気に間合いを詰めて、じいちゃんの右腕に目掛けて剣を振った。


とった。


そう思った瞬間、天井が目の前に現れた。

頭もすこし痛い。

これは、一本取られたな


「立て、健二」


「じいちゃん、俺の攻撃を誘ったね。見事なカウンターだったよ」


「あの程度のフェイントに引っかかるようじゃ、健二もまだまだだな!だが、攻撃の威力とキレが上がっている。さっきも間一髪だったぞ」


「そうかな?けどもう少しな気がする」


「じゃあラスト一本やるか」


またじいちゃんの顔つきが変わった


今度は、カウンターの更に裏を付こう。


…………


じいちゃんは、一向に攻撃を誘ってこない。

読まれたか?

そんなはずはない。

その時、じいちゃんがまたふらついた。


俺は、一気に間合いを詰めた。

そして、カウンターを狙っていたじいちゃんは、俺のやりたいことがわかったのか、勢い良く後ろに下がった。


これが読まれたならどうすればいい?

そう思い、じいちゃんの方を向いたら


一気に間合いを詰めてきたじいちゃんに不意をつかれ、そのまま一本取られてしまった。


「やっぱり勝てなかったか」


「ありまえだ。健二は隙がありすぎだ」


そしてじいちゃんは、俺を見て


「疲れているようだな、家に戻って飯にしよう」


「よくわかってるね」


だが、本当に疲れているのは、じいちゃんの方だった。



「「いただきます!」」


今日のご飯は、生姜焼きか。

じいちゃんの作る生姜焼きは、絶品だからな。


はむっ もぐもぐ


「うっめぇ、やっぱじいちゃんの作る、生姜焼きは最高だ!」


「そう言ってくれると、じいちゃんも嬉しいぞ」


俺は、剣道の試合をした時に思ったことをじいちゃんに言ってみた。


「じいちゃん、いつもより機嫌悪くなかった?」


「……実は、今日は、健二の母親が健二を捨てた日なんだよ。」


「俺を捨てた?って言うか、俺に母親なんていたのか?」


「あぁ、やっぱ今のことは忘れてくれ」


「そこまで言っといて、まぁいいや」


俺は、じいちゃんに問いたださなかった。

そんな事よりも、気になることがあったからだ。


「ごちそうさまでした。食器、後で洗うから」


「健二…」


じいちゃんが、何か言いたげにしていた。

だが、俺は聞こえないふりをして部屋に戻っていった。



俺は、授業に見た夢が気になってしょうがなかった。

「俺に母親か…あの夢は、俺の過去だったのかも」

母親は、何故俺を捨てたんだ?

捨てる直前何をしてた?


思い出せ、思い出せ、思い出せ!


「なにか本を読んでいた!」


思い出した。なにかの本を読んで、その後消えたんだ!


俺は、とりあえず、自分の広い本棚の前に行った。

あの本は、ボロボロだったはず。


無い、無い、無い、無い


「くそ、見つからねぇ」


そう思い、一番下の段の右端を見た。


あった!


それを手に取り題名を見た。


「アリスの冒険」

と書いてあった。

どんな話だっけ?そう思い本を開けた。


ドンドンドン


窓を叩く音がした。

音の鳴るほうへ目を向けると、そこには白いウサギがいた。


「開けてください。あたなに伝えなければいけないことがあります」


とりあえず窓を開け、ウサギを部屋の中へ入れた。


「ありがとうございます」


「それはいいけど、ウサギって喋れるんだっけか?」


「私は、違う世界の者なのです。唐突ですが、私達の世界が大変なのです。あなたに救ってもらいたいのです」


違う世界?世界を救う?訳の分からない


「というより、なんで俺なんだ?」


「あなたの母親が、1度世界を救ったことがあるからです」


「俺の母親が?」


どうゆう事だ?でもこれは母親のことを知るいい機会になるかもしれない。


「そうです。いいから来て下さい!」


白いウサギは、急いでいる様子で、かなり強引だった。


「あぁ、わかった」


世界を見て、無理そうだったら帰ってこよう。


「ありがとうございます。来てください!」


ウサギは、辺りを見渡し


「ちょうどいい所にありました。」


そう言って俺の手を引っ張って、本の中に飛び込んで行った。

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