ボーイミーツガール 5 ~少年少女の旅立ち~
サウスヴァングに召喚された翌朝、海斗はレイズとガイに連れられて、王城地下のとある部屋に足を踏み入れていた。
「で、いったいこんなところに連れ込んで何の用ですか?」
そう口にし、海斗はあたりをぐるりと見渡した。
自分たちが入ってきた扉から一本道が続き、その両脇には一定間隔で宝箱が並べられている。その様子からも、海斗自身、ここが宝物庫のようなものだということは察することができた。
けれど、問題は自分たちがいる一本道のその先だ。
円状の広間になっていて、その中央には台座が設えられている。そして、そこに二振りの剣と一本の杖が突き刺さっていた。
「何、旅に出る前に君に渡したいものがあってね」
海斗の問いかけにそう返したレイズは、二人を引き連れ、そのまま部屋の奥、円状の広間へと歩を進めた。
「さて。ここにあるのは二十年前、先代の勇者が使用していた剣と、先代の賢者である私が使用していた杖。そして、同じく先代の四聖の守護者である君の母親が使っていた剣だ」
そう説明を受け、海斗は改めてその二振りの剣と、一本の杖に目を向けた。
二振りのうち一つは、刀身が細く、まるで雲一つない青空のような色をしている。対してもう一振りは、刀身が太く、まるで汚れを知らないかのように白銀に光り輝いていた。そして最後の杖は柄の部分に二匹の蛇を模した細工がまるで絡みつくように設えられている。
「これから旅に出てもらうキミに、贈り物をしたいと思ってね。杖はアスナに渡すことになるから、二振りの剣から選んでもらうことになるが」
「つうことだ。ほれ、一振り選べボウズ」
ガイに背中を押され、たたらを踏みながら一歩踏み出す海斗。
しかし、とは言われたもののつい昨日まで普通の男子高校生だった海斗に剣の良し悪しなど分かるはずもなく。
「そんなこと言われても、どれがいいかなんて」
そう口にしながら、もう一度二振りの剣を見た時だった。刀身の細い、空色の剣が小刻みに震え出した。
いや、もちろんそんなことは実際はあり得ない。けれど、海斗の目にはそう見える。まるで剣そのものが自身を呼んでいるかのような。
そう思うと海斗の中から自然と迷いは消えていた。その剣の前まで歩み、一回大きく息を吐く。
「決めた」
そう呟き、柄に手にしてゆっくりと引き抜き掲げた。ずっしりとした重みは感じるが、不思議と手になじみ、まるで今日初めて手にしたような気がしない。
そんな海斗の様子を目にし、レイズはふっと口元を緩めた。
「それは蒼剣ブラウメール。前回の戦いのとき、君の母親が使用していた剣だ」
「蒼剣……ブラウメール」
そうして海斗が呆けていると、ガイが残りの一振りの剣を無造作に引き抜いた。
「なら、こいつは俺が預かっておくことにするかね」
どこか懐かしそうな、感慨深そうにその刀身を見つめながらガイはそれを鞘に納めた。
するとほぼ同時、宝物庫のドアがバンッと勢いよく開かれた。
「ごめんなさいお父様、寝坊しました」
慌ただしく一同のもとへ駆け寄ってくる、一国の姫であるアスナ。昨日までのドレス姿とは打って変わり、胸もとにリボンをあしらった裾の長いローブを身に纏っている。ただ寝坊というのは本当らしく、肩口で切りそろえられた髪に寝癖が付いたままだ。
「お、さすが姫さん。重役出勤だな」
「え、重役出勤? 何それ」
ガイの茶化しにきょとんと首をかしげるアスナ。どうやら意味を理解できていないらしい。
話がそれかけたのを戻すため、レイズは一度咳払い。
「アスナ。常々言っているが、お前も一国の姫なのだからそれを自覚した行動を」
「あーはいはい、ごめんなさいお父様。で、これが二十年前にお父様が使用されていた杖、ケリュケイオンなんだね」
父親であるレイズからの叱責を軽く聞き流し、嬉々とした様子で残り一本である杖――ケリュケイオンをアスナは手にした。
そんな愛娘の様子にやれやれと嘆息しながらも、レイズは海斗・アスナ・ガイの三人に改めて視線を送る。
「本来なら私たちが前回の戦いで成しえねばいけなかったことを、君たちに任せてしまうこと、申し訳なく思う。けれどどうか頼む。新たなる勇者と残りの守護者を探し出し、今度こそ必ず魔王を討伐してほしい」
こうして、海斗の、元カノ似の女の子と一緒に魔王を倒す旅が始まった。




