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カエデ・カンナギ

 封魔の里でカエデが仲間になった翌日、アスナの足のケガが完治したのを確認し、海斗達一行は定期連絡船でポートランドへと戻ってきていた。そしてポートランドに戻ってすぐ、四人は今後の相談をするためと腹ごしらえを兼ねてレストランへ赴いていた。

「で、オッサン。これから俺たちどうするんだ?」

「カエデも仲間になったことだし、大陸巡って守護者と勇者探しよね、確か」

 料理が運ばれてくるのを待つ最中、海斗が問いかけるとアスナが頷きそれに同調した。

「それなんだが、今日は一泊して、明日の朝早い船でロマーヌ大陸へ渡って、まずはガザン帝国を目指そうと思う」

 そう告げると、ガイはおなじみの世界地図をテーブルに広げた。そして、以前に四大大陸と呼んでいたうちの一つ、地図上で北東に位置する一つの島を指さした。

「このロマーヌ大陸に存在しているガザン帝国では、先代の守護者の一人が在中して、情報を集めてくれてる。それにな、この国はちょっと面白れぇんだ」

「面白い?」

 笑みを浮かべるガイに対し、あからさまに訝しむ海斗。

 すると、案の定な答えが返ってきた。

「この国はサウスヴァングとはちょうど真逆の、完全なる騎士国家でな。年に一回剣術大会を開いて、優勝者には豪華賞金贈呈と、ガザン帝国騎士団入団が認められるんだ」

「騎士団入団? いや、そんなの認められてもしょうがねぇじゃん」

 これから先も旅を続けるのに、そんなものに所属できるはずがないし、したとしても何のメリットもないように感じられるが。

 すると、さっきまで話を聞いていたカエデがすっと手を上げた。

「おじ様。ちなみに、所持金の残りはいくらですか?」

「いい質問じゃねぇか、カエデ。実はな、聞いて驚けたったの三万ユードだ」

 三万ユード。その単語が出た途端、カエデとアスナの顔が仲良く曇った。しかし、まだこの世界の物価をあまり詳しく知らない海斗の頭には、?マークが浮かぶ。

「なぁ、その残金ってそんなにヤバいのか?」

「ヤバいってもんじゃないわよ。これじゃあ、旅の途中で服を買い替えたり、定期的に宿屋に泊まったりなんて」

 海斗の問いに、バンッとテーブルを叩いて声を荒げるアスナだったが、そこまで口に仕掛けたところでガイがその口を手でふさいだ。

「はいはい。姫さんの場合だと、無駄遣いを含んでの意見だからちょっと黙ろうな。カエデ、代わりに説明してやってくれ」

 口を手で押さえられ、アスナがフガフガと何やら文句を言っているようだが、ガイは無視して話の続きをカエデに促した。すると、カエデはコホンと小さく咳払いして。

「えっと、そうですね。結論から言うと、旅を続けるのに決して無理な金額ではないわね。けれど、そのほとんどが大陸間移動の船代で消えて、残りは薬草などの必需品を買うだけにとどまるわ。だからまぁ、必然的に野宿が多くなるし、食事もこうやってお店で済ませることは少なくなるかな」

「つまりだ。余裕ある旅を続けるためには、ある程度、金策は必要だってわけだな」

 そう口にし、盛大な笑い声を上げるガイ。

 それを聞きながら、海斗はふと思った。ガイの口ぶりだと優勝前提で話しているが、果たしてそんなうまくいくのだろうかと。

 その後、注文した食事が運ばれてきて全て食べ終わると海斗とガイが席を立った。

「それじゃあ、とりあえず俺らは街を出たすぐのところで海斗のトレーニングをするけど、姫さんたちはどうする?」

「私はデザート食べてく。カイト、頑張ってねー」

「へーへー、頑張りますよ。カエデはどうする?」

 ひらひらと手を振り送り出そうとしてくるアスナにジトッとした視線を送りながら、カエデに問いかける海斗。すると、カエデは一瞬だけアスナを見やり、意を決したように海斗に向き直った。

「私も、デザート。デザート食べていきます」

 その様子に首を傾げる海斗だったが、ガイにせっつかれ、店を後にした。

 テーブルに残ったアスナとカエデ。アスナはメニュー表に目をやり、鼻歌交じりにデザートに目移りさせてる。けれど対照的にカエデは居心地が悪そうに俯いたまま。

 すると、そんな時だった。

「で、なんか用だったんじゃないの?」

 唐突にアスナからかけられた言葉に、カエデがばっと顔を上げた。

「え、何のこと、かな?」

「私に何か用事があった残ったんでしょ? 態度見たら丸わかりだって」

「そ、それは……」

 完全に言い当てられ、カエデは言葉に詰まってしまった。けれど、やがて観念したのか深々と息を吐くと。

「ごめんなさい!」

 勢いよく、その場で頭を下げた。

 突然なことに目を丸くするアスナ。すると、カエデはつづけた。

「里で、あなたのことよく知りもしないで、酷いこと言いました。あなたに言った言葉を撤回するわ」

「あ、あぁそのことね。別にいいわよ。私だって、買い言葉に売り言葉で言いすぎちゃったし」

 と、視線をそらしバツが悪そうに口をとがらせるアスナ。その胸に思い返すのは、封魔の里でのカエデとの一戦だ。

 あの戦闘、カエデの斬撃を受け止めていた時にシルバーウルフに噛まれたのがふくらはぎだったからよかったが、もし飛び掛かり首をやられていたら恐らく即死だった。つまり、カエデに手加減されていたのだ。それを理解したうえで勝ち誇れるほど、アスナ自身、自らを浅ましい人間だとは思っていないし、そうなるつもりもない。

 深くため息をつき、アスナは手を差し出した。

「まぁ、何はともあれよ。同じ女同士、これからよろしくね」

「えぇ、こちらこそ」

 こうして、本当にカエデ・カンナギが海斗たちの新たな仲間に加わった。

 

 

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