三話 加護
召喚されてから約3時間半。ようやくみんなも落ち着いてきた頃だ。
そしてここは食事場、という名の方針決定の場。
「……皆はどうしたい」
委員長が切り出した。
「……ど、どうしたいって、そんなの帰りたいでしかないわよ!」
「そうよ!いきなりこんなところに連れて来られて戦えだなんて」
女子たちは不満の意を唱えているな。
だが男子達はというと……
「魔法とかもあんのかな?」
「そりゃあるだろ。なんせ魔法陣でこっちにきたんだぜ?」
「魔物とかエルフとかもいるんだろうな」
「ステータスがわかるって、もうゲームだな」
とまあキャイキャイしている。
俺もかなり胸が高鳴っている。ゲーム大好きだからな。
「取り敢えず、状況を確認しきる前にまずは安全の確保が最優先だと思うんだ。そのためにもアーデルバイスさんに協力する意を見せた方がいいと思う」
「其の場凌ぎになるかも知れんが、宿と食料は確保できるもんな」
「ああ、女子達も、この状態でもはやドッキリの類だとは考えられないだろう?」
「た、たしかにね……色々と説明のつかないことが起きてるのは事実だし……」
よし、と委員長が席を立った。
「取り敢えずはこの世界を救う意思を見せ、安全を確保し、その後のことは各々に任せる……って感じでいいな」
誰も異を唱える者はいなかった。
数分後、隣室のアーデルバイスさんに委員長が結果を伝え、二人で食堂に戻ってきた。
口を開いたのはアーデルバイスさんの従者の方だった。
「ありがとうございます。坂木様から事の顛末は聞きました。ご安心下さい。戦闘でもなんでも向き不向きがございます。戦えない、戦いたくないという方には安全な場で活躍していただきとうございます」
なかなか話のわかる人でよかった。
でも活躍って、高一に何ができるんだ?
「早速ですが、勇者様方にこれをお渡しします。先程篠崎様がおっしゃっていた、『ステータスが判る物』です」
そういうと従者さんは小さな小瓶を坂木に手渡した。
「これは?」
「これは神秘の水と言います。百聞は一見にしかず。まずは飲んで見てください」
坂木は赤い液体の入った小瓶を眺め、若干の疑いを抱いているようだ。
だが、そこに篠崎が飛び入り、坂木の小瓶を奪い取った。
「あ、おい!」
「飲まねえなら俺が飲むぜ」
篠崎は瓶の蓋を開け、中の液体を流し込む。
「……スゲェなんだこれ」
「何が見えますかな」
「えーと、……なんて書いてあんだ?でも英語だな……」
坂木が首をかしげる。
「何を言っているんだ?」
「説明するよりも飲んだ方早い」
そういうと篠崎はまたしても小瓶を強引に奪い取り、坂木に飲ませる。
「焦らずとも、全員分ありますぞ」
はっはっは、とアーデルバイスさんが笑う。
俺のところまで瓶が回ってきた。
周りのクラスメート達はまだ戸惑っているようで誰も口にしてはいない。
「死なないなら……」
グビッと赤い液体を飲み干す。
「ッ!」
その瞬間、微弱な電気が走ったかのように全身がぶるっと震えた。
痛くはない。
《ウェルカム イシュタルト》
「うわぁ!?」
……クラスメートの視線が刺さる。
「なんでもない、です」
視界いっぱいに文字が広がった。
ウェルカム、イシュタルト。
「ホッホッホ。見えたようですな。他の皆様も早くお飲みなさい。それを飲まないことには何も始まりません」
周りが小瓶を開ける中、俺はすでにあることに気づいていた。
視界の左上に見慣れたフォルムのバーがあることに。
グッと目を凝らすと拡大するかのように少し広がる。
Lv. 1 神崎 真
……まるきりゲームじゃないか。
レベル1?なんのレベルだよ。
「うわー!?」
「ひっ」
「おお!?」
どうやら皆も俺と同じ物が見えているようだ。
視線を拡大したモノから外すと、それは左上に引っ込んだ。
「それこそがバヒト様のご加護、ステータスの視覚化です」
「このゲームみたいなのが?」
「ゲーム?何を言ってらっしゃるのですかな?」
TVゲームの概念がないんじゃ説明のしようがないな。
「取り敢えずの所、今日1日はこのステータスの扱いに慣れていただきとうございます。……ふむ、ここで年寄りがヤイヤイ言うより貴方方で慣れてもらった方が早そうですな」
そういうとアーデルバイスは付き人を呼び、何やら耳打ちをしている。
「今皆様の部屋を手配しました。各勇者さまお一人、もしくは二人組で使ってください」
……丸投げかよ。




