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カモン観音カモン観音カモン観音、陰陽師!

ほんと、御免なさい。

 深夜2時、ビルは灯りを消し人々の姿は消え草木も眠り月が支配する時間帯――闇の世界、となると登場するのは物の怪妖怪、幽霊の類が定番となる。私は『三善弓削(ミツギユゲ)』と申します。

 弓削まで含め名字です。職業がら下の名前は教える事が出来ません。

 名を教えると魂を抜かれ行動が制限される。名が付くと其の言葉に支配される。陰陽師として活動するには名を知られるのは非常に分が悪いのです。普段は居もしない存在しない悪霊がどうのとかで壺を売って生計を立てて居ます。だって、幽霊なんて滅多に現れ無いし嘘を付かないとご飯が食べれません。除霊、悪霊退散は出来ますよ陰陽師なので。むしろ其方が専門なので嘘を付いて壺や石を売るよりは生きがいと言いうか遣り甲斐もあるのですが、出てくるものが出てこないと悪霊退散は出来ません。平和で何よりですが平和が続くと困る職業も在るのです。

 武器商人、警察、弁護士、裁判官、仕事にあぶれます。私見たいな霊能者とか占い師も…

 手放しで平和を喜べないのです。誰かが不幸になり誰かが幸福に――因果と応報の法則。

 丑三つ時に陰陽師とは、まあ妖怪と陰陽師も似た様な物なのでお似合いの時間帯なのですが…

 奈良から車をすっ飛ばし3時間で東京、板橋まで来てトリップメーターも400キロ越え。法定速度に付いてはゴニョゴニョしておきます。事は緊急だったのです。出たのです、幽霊が。

 出たのですでは物足りない。敢えてこの言葉を使いたい。

「遂に出おった!」と。もう何年も妖怪幽霊UFOや宇宙人の類は見てません。職業柄、見つけたら退治する!仕事なので。非常に胡散臭いお話ですが我が家は由緒正しき平安から続く悪霊退散の専門家、陰陽師の家系です。此処数週間、仲間内でフェイスブックやツイッターである存在の話題で持ち切りです。板橋に金髪幼女ロリっ子の妖怪で出没すると。出番です――我が心を泣かせながら詐欺紛い商法で壺を売るのはそろそろ気持ち限界、本職活動がしたいのです。

 で、着きました悪霊の館――といっても普通のアパートなので館とはオーバー表現ですね。呪いの家、うん、一軒家じゃないので之も違う。ともあれ潜入して陰陽師の名に恥じぬ様に退散退散成敗とお仕事をしましょう。と、かれこれ10分位はインターホンを鳴らして居るのですが時間が時間ですから寝てるのでしょうか困りました。

「壺なんか居るか! 悪徳宗教カルト信者、真夜中に訪問とは良い度胸! 糞犯罪者!」

 ドアが開き暴言と共に殴られてしまいまいした手加減無しで。この男、見るからに人相が悪い。暴力も平気で振るう、悪霊に取り憑かれた証拠!今救ってみせますからね陰陽師の力、今此処に!

 しかし何故に副業の壺売りがばれたのでしょうか?既に身体は乗っ取られ憑依されているのか。

「アリス! 塩持って来い、袋ごとだ」

 出追った!金髪の悪霊…はて?あれ?何故?実体が――在る。幽霊では無い妖怪か?願っても無い千載一遇の好機、初にお目にする物の怪、調べなければ…

「私、アリスは妖怪では在りません。お客様、寒いので中にどうぞ」

「馬鹿アリス! 塩だ! 見るからに怪しい恰好した不審人物を招き入れるなドアホウ!」

「正式な嫁に暴言――お仕置きですね」

「――ッチ! アリスお得意の暴力が出る、腕か足か、動きを読め、連敗はそろそろストップだ」

 やれやれ私の出番ですね。人生初の妖怪退治、開始致します。

「Please liven hay DJ. By best killer truck!!!」決まりました一本背負い!さて、冴えない男の心も手当、ケアーしないと。大分毒に置かされてますので。

「お前…何者だ…ア、アリスを一撃で…フリーズしやがった」

「ワタクシ、陰陽師の三善弓削と申します。以後お見知りおきを」


 ***


 ノリで部屋に招いてしまった。此の男は何者だ。姿形は女性だが――喉仏!オ・カ・マだ!非常に優秀な乳が在り美人だが、オ・カ・マだ!

 前にアリスが話した事は伏線じゃないだろうな。オカマかニューハーフかオネエなのか、取る物はしっかり取ったのか除去したのか聞きたいが勇気が無い。

何せアリスより強い――下手したら運悪く流れが悪いと掘られる危険も…厄介。

巫女服じゃないし浄衣とも違う…格衣っぽい気もするが神事の際に用いる衣装の様だが何かが違う。ぴったりする表現…ああ、女版悪代官だ。しっくりくる、高級腕時計が非常に胡散臭い。歳は25歳付近か?

 アリスはフリーズしたまま目を覚まさない。

「どうも、城羽恭介です」先程殴った手前だ、下手にでるしか無い。怒っては無い様子むしろ喜んでいる。

「本日は悪霊退散、妖怪退治です」

 オカマさん、名前はミツギユゲだっけか?ニコって笑うが発言が変だよ。本日はって本日以外は何をしている怪しさ全開だ!バイオノイドの次は陰陽師と来たもんだ。

「変ですね、普通は肉体に心が宿るのですが、この…妖怪? では無いし、なんだろうこの不思議存在は。普通の人間じゃ無いのは確かだがどう見ても、精神が見えない。別の処に脳が在る感じ。宇宙と繋がってるのかしら? 心と思考が切り離されている状態、普通なら考えられない――はて?」

 このオカマさん、只物じゃねえ!見抜きやがった。プランB発動、敵に廻すな作戦。茶だ、茶をだそう。菓子は何処だ?とりあえず客人に御持て成し無しじゃ失礼だ!とことん媚を売れ、自分を守る為に。

「だが、確実に霊魂はあるし悪霊の波動を発しつつ聖なる力も在る、謎ね~」

 俺の部屋は呪われているのか…客人が来たら上がり込み帰る素振りを一切見せない。ちな今は深夜だぞ。アリス、起きろ!嫁ならなんとかしろポンコツノイド!オカマを撃退しろ!!!

 

 願いが叶ったのか金髪ツインテの瞳が開く。よし、やっちまえ暴力の専門家!

「本名、弓削士朗、年齢32歳。フィリピンで手術済み、口座番号062541、入金額6千251万3円。本籍、奈良県奈良市増田町42番地…属性、私の味方! 私はアリス、恭介様の正式な嫁。士朗様、宜しくお願い致します」

「あら? 全部バレバレ、とことん不思議ねえ~。良く見ると可愛いお嬢さんじゃない。でも士朗は禁句ね。イメージが崩れるので。宜しくアリスさん」

 仲良く成ってるんじゃね~よ馬鹿アリス!流れ的にオカマ野郎は今日は泊まるぞ!

「私の旦那様はとことんダメ人間道をまっしぐら爆進中で性格も最悪です。私では手に余る程に腐ってます。丁度、カウンセラーが必要でした」

 ええ!俺ってそこまで酷いの?少し盛ってるだろアリス!!!普段の俺はモテモテで逆告白回数スコア32回!アリス含め33回の色男だぞ!ん、33…散々か。成る程アリス、電波女ポンコツロボの癖にロゴが良いじゃないか。今から33は俺の中で不吉な数字としよう。日々散々だからな。


***


「って事で、せっかくなのでお姉さんがお二人さんを見てしんぜよう♡」

 お姉さんって歳でも無いし女でも無いだろう悪代官…

「時間も丁度よし神様と一番近い距離。お代は頂かないので御心配無く~」

「あの…お姉さん何時もは何をしている方でしょうか?」

「ふ~ん、困ったちゃんに壺や石を売ったり、暴力団の会長就任式の神事を行ったり、最近は減ったけどIT系のベンチャービジネスの会社の神棚作りとか…まあ色々」

 壺売り石売りのバックには恐ろしい集団が居るのは間違い無かったのか。桑原桑原…

「で、恭介君だっけ、相当に女性から怨まれてますね。生霊が沢山、因果の結果、子供が産まれたら確実に女の子が生まれるわね。女性恐怖症かしら? 家族の影響…姉が居るわね、諸悪の根源的な」

 うん、俺の姉が悪なのは間違いない。良い事を言うじゃないか陰陽師。

「あら…可愛い、童貞君ね。性の業が無い。素敵な彼女が要るのに。実は女性に対して意気地なしなのかな」

「違います、アリスは友人と書いて奴隷と読む下僕です」

「違います、恭介様は二次元にしか欲情しないインポ野郎です」

「成る程、成る程、金髪ちゃんが悩む訳だ。その金髪ちゃんに私は悩んでいるのだけど」

 同意!俺もアリスには散々悩んでいる。悪代官陰陽師、意見が合うじゃないか!之で二次元で本物(・・)の女性なら幸せなのに。衣装は紅白歌合戦の摂り(漢字あってるか?)みたいな其の和服じゃなく巫女服ミニスカート希望!

「答えが出ないのが金髪アリスちゃんよね。小学生にしては貫禄が在り過ぎる。中学生にしては発育が良過ぎる、高校生にしては少し幼い、そして業が全くないし新生児の赤ちゃん見たい。人間、多かれ少なかれ罪を犯し何かしらの因果を持つものだが、これ又、不思議…私の個人情報を細かく読みとるのは上級霊能者なら楽勝のホイホイなんですが霊症が悪化して不幸の渦に包まれ大病を患うのだが…ピカイチの健康…困ったわね。不思議の大バーゲンセール気分は年末だわ」

 ていうか、早く帰ってくれないかな…

「まあ謎は謎のまま置いといて、恭介君から始めましょうか」

 何をだ!!!

「お願い致します、士朗様」

「その呼び名は禁止ね。三善弓削、三つの善を行い弓で悪災を鎮める者として立派な意味が在る由緒正しき名字なのです」

「アリスちゃんの心と思考が何故か離れ過ぎて要る。原因は解らない。その問題が解決しない限り二人は永遠に結ばれる事、愛し合う事は不可能ですね」

「愛し合う事が目的では無く、恭介様のデータ収集、人間として更生させる事が使命なのでその事は問題では在りません」

「存在も不思議なら発言も不思議っ子ね~。昔から黒ゴス女はそうなのよ、何故かしらね~」

 あ…面倒臭い。そろそろ切りだそう、大人だし常識は在るだろう。

「そろそろ遅いですし、お開きにしませんか? 僕も眠いですし」

「今からじゃ何処のホテルもチェックインは無理だし今日は此処に泊まらせて貰うわ。アリスちゃんの謎も気に成るし、恭介君、君は立派な問題児だ。お姉さんが無償で一肌脱いであげましょう」

 あ、やっぱりそうなりますよね~。展開、流れは見えてました。願わくば泊まるのは本日だけにして欲しい。三人暮らしだけはどんな卑怯な手を使ってでも阻止してやる。

「私、アリスは提案致します。三人で暮らすのがベストかと…」

 我慢の限界!負けても良い。捨て身の特攻、一発殴らないと気が済まん。

「Stop. full on, play is disliked, boy! まあ落ち付こうよ恭介君」

 気に成っていたがちょいちょいの英語使い――厨二臭い…

「There is a wonderful sprite. A full moon party doesn't end.楽しもうよ」

 又だ…因みに今日は三日月で新月でも満月でも無い。更に加えると曇り空です。

 自ら去勢した怪しき陰陽師、冷静に考えたら厄介が厄介を呼ぶのは想像に容易い。

 大丈夫かな――俺。

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