スーパーハイスペック美少女は裁判物(確実有罪)のダジャレ好き
目が覚める。意識は鮮明じゃない気分――胸糞悪い。状況把握に数分を使う。物騒な事件、ニュースはよく見るしよく聞くが我が身に降りかかると安全とは尊い状況だと身に染みる。時間とお金、途方も無い苦労を掛け集めた財宝の消失と黒ゴス女からの過剰暴力――だけでは済まなかった。部屋が部屋じゃない。俺の部屋だが家具が全てゴシック仕様に変更されている。ほぼ赤と黒しか色が無い……センスは悪くない――が男の城じゃない。
「――服! 大切な服!」クローゼットを開ける。
だろうな。だろうよ。だろうかよ。
「へっへっへ! ふわぁーはっは! だわーはっはっは!」泣き笑いとは此の事だ馬鹿野郎!
メイトに行く時の正装キャラTシャツが一枚も無い。二度と手に入らない限定品――保管用、永久保存用、着用品と3枚セットで買った筈なのだが、その他パーカーや鞄もアニメに絡んだ品々が消えた。此の状況なら死んだ方がまし――メンタルダメージは非常に大きい。
アリスの姿は見えない。何処に行ったのやら家具を全とっかえする位だ、その内姿を見せるだろう。
バイオノイド…眉唾だが信じたい。否、彼女の事を信用して居る訳じゃ無くオタク魂に引っ掛かる物があるのだ。俺の本職は美少女アニメ専門だがアニメに関しては全てのジャンルを押さえて要る。
馬鹿姉の影響でBLにも詳しい。好きでは無いが教養として知識は在る。軍事物もSFも遡ってスポ根や古いアニメも押さえて要る――オタクだからね。だからバイオノイドネタとか正直――嬉しい。
「――あ!」閃いた。やっぱり何事にもアニメが元ネタでアニメに正解が在る。俺の哲学は間違っていない。今日の状況は押し掛け女房の美少女アニメでは無い!
未来から来た猫型ロボットの居候…ついつい美少女アニメを参考にする癖が抜けない。ある日トンデモ無い奴がやってきて一緒に暮らす作品は過去に沢山あるじゃないか。頭の毛が三本で好物がラーメンの白い幽霊、生まれて飛び出ての魔法瓶の居候、パターン的に最後に主人公が別れの悲しみで泣くオチ、最終回が待っている。
脅迫でアリスをやむなく嫁にしたがハイスペックの友達、居候なら楽しい日々が待っているのでは無いか?二次元嫁禁止の縛りは在るが…やり様は在る。ばれなきゃ良いのだ物事は。
――恋愛、する気になれん。二次元なら話は変わるが。
――アリスの正体、今の処は話を信じるしか無い。
――一緒に暮らす。同棲…三次元女子と同棲。まあ馬鹿姉と比べたらどっちもどっちか。
力技とゴリ押しで状況を変えられた。様子見しか手が浮かばない。
嫁、妻、婚約者…散々こき使って楽してやる。大学は一年位なら浪人するのも良い。
引き籠ってやる!友達が出来たんだ完全なるニートとして毎日を満喫してやる。殺されるかと思ったが落されただけだ。アリスの暴力は脅迫の域を出ない命は安全だ…多分。
猫型ロボット、白い幽霊には弱点が在る。ネズミと犬だ。アリスにも弱点が在るに違いない。正解はアニメに在る。全てはアニメが物語る。打つ手が無いなら当面は弱点探し――電波女アリス!バイオノイドだかガイノイドだか知らないが失った財宝の怨み、晴らさず死ねるか!
「恭介様、本当に性格が悪いです。彼方を選んで正解でした」
閉まっていたカーテンが空きアリスが姿を表す――何故に全裸。
「ベランダで太陽の光で栄養補給をして居ました。食事です。私に弱点は在りません。ネズミも犬も無駄です」顔が怖いよアリス先輩、表情が凶暴モード――これは殺られる。
「――!?」想ったそばから膝蹴り腹部直撃!痛くて声も出ない。
「私は嫁、愛でなさい! 私は嫁、愛でなさい! 私は嫁、愛でなさい!」
ガンガン恭介を蹴りまくるアリス、手加減は見当たらない。
「浪人、引き籠り、許しま千円」
「――は!? 許しま千円?」
今なんつったコイツ!許しま千円は酷いにも程がある。怒りがこみ上げる。人間には言って良い事と悪い事が在るのだ。許しま千円――極刑ものの重罪発言!然るべき対応が必要だ。遣られっ放しだが根性に火が付いた。気合が充填された。勘が冴える――アリスの動き、遅いし間合いがガラ空きじゃないか!顎に一発、脳震盪を喰らわせてやる。
俺の名前は城羽恭介!女でさえグーで殴る事に躊躇は無い。好感度なんか気にして生きてられるか馬鹿野郎、気合の一発喰らえ!
「よしっ! 見事に良い角度で顎に入った。KO勝ち――あれ?」
「はぁ~。恭介様は本当にお馬鹿さんですね。私、アリスに脳はありません。説明済みです」
「抜かった、こいつの話が本当なら弱点は電波が入らない事だった畜生」
***
アリスは有言実行通り居候した。奇妙な同棲生活――そろそろ一週間が過ぎた。感想、まあまあ楽しい。禁じられたアニメ観賞による嫁探しもアリスが良しとする作品なら見る事が出来た。見事に心にグッとくる新キャラは居なかったが。口喧嘩や暴力行為は毎日の様に絶えなかったが楽しいと言えば楽しい――じゃれあいだ。本当の妹の様。頭が非常に良くミレニアム問題も解いてくれて細かく説明してくれた。会話も良く合うし料理が非常に美味い。キュウリの薄切りだけでも充分な一品!その薄さ0.2mm、歯ごたえが違うだけでキュウリ一本でも御馳走に成る。手先が本当に起用だ。朝は馬ノリに成って起こしてくるのウザ嬉しい。暴力馬鹿の姉とは起こし方が違う。
まさしく嫁だった。完璧な正しい嫁、三次元だけど…これ以上居ないって程に理想その物の存在。
だがな…女性として女として――恋人と見れない対象じゃない。性的興奮は無い。
顔も声も好みだ。スタイルも申し分ない。
二次元美少女アニメの呪縛…そう、三次元というだけで全ての女は論外蚊帳の外。
バイオノイド…すっとんきょうな現実を押しつけられたが状況的に信じるしかなかった。
先ずは運動性能。オリンピックに出れば全ての競技で金メダルは確実って位に運動神経が良く壁走りとかも余裕でギリギリまで身体の出力を上げているらしい。
次に頭の良さ、ミレニアム問題を瞬時に解いた。アリス曰く11次元までの宇宙構造までも演算処理で解明したが、問題を解く度に問題が出てきて宇宙の謎を全て明かすのは危険だと言う。
宇宙の数は膨大でそれぞれが干渉し合い俺が住んでいる次元の宇宙の消滅の危険が在るから計算しない方が安全らしい。観測すればするほど次元の数は増え最悪、時が止まると言うのだ。
此の手の話は好きでアリスの話は非常に面白い。
次の世代の量子コンピューターが開発されるまで宇宙の解明はストップするのが安全だと言う。
アリスの脳はロシアに在る『マキシマムG3』ってコンピュターだそうだ。
マキシマムは人工知能特有の感情があり人間が理解するのは難儀だそうだ。不可能だと言って居た。バージョンG5まで既に設計図は出来ていてインターフェイスは完全ヒューマノイド型に…成るらしい。アリスは其の試験機でプロトタイプののフラッグシップだとさ。
話としては好きだが難易度が高すぎて付いていけないがオタク心に射す物が在り気持ちが湧く。
ゴスロリ電波女、友達としては最高だ。ちな、マキシマムの計算能力の3%程しかアリスには割り振りされて無いらしい。本体のコンピューターは何を計算して居るのだろうか。
とりあえず引き籠りと留年計画は失敗に終わった。世話女房が五月蠅い――之が二次元だったらなあ…最高なのに。
不思議な事一つ。
アリスは大事故クラス、フォロー不可能なダジャレをしばしば言う。
本人談
「だって其れが人間らしさです。完璧では味気ないです」
だ、そうだ。バイオノイド少女は不思議――まあ不思議ちゃんはテリトリー守備範囲だが、俺がオヤツにハンバーガーを買って来た時に
「ピクルスが入って居る、ピックリした」と真顔で言われた時には複雑な気持ちに成った。
テンプレート的ラノベ主人公の口癖『やれやれ』と心の中で言うしか無かった。