「雨の記憶。」
夜中。
ふと目覚めると、
黄色いちっちゃな
電気が点いてて。
軒先に雨が当たる音が
ポツリポツリと聞こえる。
壁に掛かった
ツタンカーメン王の仮面が恐くて
隣を見たら、、
ママは居なかった。
起き上がると
妹が布団からはみ出て
反対側の、
要するに足の方に、、
畳の上で丸まって寝てたから
布団を掛けてやった。
(僕、おにいちゃんだもん、)
しかし、
兄の思いを拒絶するかの様に
再び布団から飛び出るから
もう一回掛けてやったら
更に飛び出て
窓のガラスにぶつかった。
そこで兄は諦めた。
振り返れば台所が
明るいのに気付く。
「ママー。
みーが何回、
おふとん掛けても出ちゃうー。」
お袋は食卓で泣いていた。
「ママ、どーしたの?」
「なんでもないの。
みーちゃんにお布団、
掛けてくれたの?
ありがとね?」
「パパから電話、無いの?」
何も言わずに俺を抱く。
「パパ、いつかえって来るの?」
俺の肩で涙を拭く。
そんな、微かな遠い遠い、
記憶。
雨の夜。