アキラちゃんが行く その2
朝、登校前にカバンに色々詰めていく。やっぱりいの1番に詰めるのはこれだろう。
「M500」
フィフティキャリパーの回転式リボルバー。口径12.7ミリ。大の大人でもガッチリ持ってないと撃った瞬間に手の中から吹き飛んでいく、殆どネタ銃だ。同口径の自動拳銃のデザートイーグルよりも酷い。
もちろんモデルガンであるが、本物も持っている。グアムの射撃場のガンロッカーの中に。撃つのは無理だけど、持っていたい女心なのである。
これがBL女子としての心構えだと何故か信じている。校則ではモデルガン持ち込みは禁止されていない。本物の銃の持ち込みは禁止と明記されているが。
アキラちゃんは教科書を持ち歩かない。絶対記憶能力があるからだ。株とかうまいのはそのせい。だが、普段は読んだBLの中身を記憶する事にしか使用しない。それがBL女子の襟持だと信じている。
授業中、同級生の解いている数学の方程式がなんだか素敵に思えてきて、ちょっと絡ませてみた。絡ませていく間に普通の方程式同士では物足りなくなって、相対性理論とかも絡ませていった。ノート見開きの大作になった。しかも限りなくエロイ。
教師が覗きに来て、顔を顰める。が、何も言わない。ちゃんと答えが出ているので。この教師は数学の面白さは解き方にある、と信じているため何も言わないが、無駄にエロイ解き方ばかりで宿題を提出するのはやめてほしいと思っている。
クラス1の秀才だが、誰も勉強を教わりに来ない。宿題を写させてもらうのも困難だ。あまりにエロくて、すぐにバレる。それにアキラちゃんは、答でなく解き方を教えてあげるのが本当の友達だと信じている。
だが、その解き方が既にエロイので手遅れだ。
体育の時、走り回る姿は颯爽としている。体は華奢だが体力は無駄にある。伊達に自衛隊入隊を目指してはいない。男子の熱い眼差しなど、どこ吹く風だ。熱い眼差しはあくまで観賞用オンリーだ。
アキラちゃんは男子に熱い眼差しを送るのだが。もちろんBLの対象として。にも関わらずに、何故ちゃんとしたBLマンガが書けないのか。
最近は色物BL小説にも手を出している。表現力・描写力は抜群。しかも、このエロさはR18に収まるのか。対象が怪獣と巨大ヒーローとかでさえ無ければ、R18BLジャンルでランキングトップは間違いないだろう。
最近は怪獣同士がお気に入り。事に恐竜同士の絡みは男性読者に人気絶大。その叙情詩的で博物的な内容は圧巻。内容さえまともなら映画化されてもおかしくない。才能の無駄使いである。
戯れに恐竜のオスとメスで書き始めたら、3行で赤面してしまって断念した。ポルノ作家への道は開けないようだ。
体育の時間、ダンスの練習をしていたら、隣の女子がよろけて絡み付いて倒れてしまった。最早それだけでエロ過ぎた。お相手が百合の子なんで、なおさら。その表情の艶めかしさといったら。男子の殆どが赤面し、前かがみになってしまった。
アキラちゃんと同じく、クラスで、いや学年で3本指に入る美少女である。
ただし、百合。3人のうち残りの1人も同じこのクラスだが、百合でこの子とカップルである。その相方がこの風景を見ても、なぜか嫉妬は生まれない。アキラちゃんの残念美少女ぶりは校内津々浦々響き渡っている。
あぶれたアキラちゃんは別に寂しくない。百合ではないので。
それよりも、アキラちゃんの視線は前かがみになってない男子2名にロックオンされていた。こいつらは、腹減ったなあとかかったりーなー、とか思ってるだけなのだが。
だがアキラちゃんからは熱い視線を送られる事になる。
少なくともこの2人はそれでアキラちゃんに対して勘違いな思いを抱くことはない。小学校から一緒なので、本性は知り抜いてる。
超お金持ちで、超美少女で超頭がいい。学園美少女ものならヒロイン間違いなし! 外面だけなら。
中身は腐りきってる。普通のBL女子など問題にならんレベルで。
この女と付き合ったり結婚したりするのだけはゴメンだと、クラス中の男子から思われている。ただし観賞用としては別。すこぶるエロイ美少女なのだ。その点において最早日本一のレベルにある。多分腐っている度も日本一だが。
そんなアキラちゃんの週末はもちろんグアムだ。付き合わされるお母さんの溜め息は尽きない。海外旅行は楽しい。たまになら。
自宅の前にハイヤーがお迎えなんてものは……来なくて。お金はいっくらでもある癖にロールスロイスのリムジンもこない。ロールスロイスのリムジンを絡ませてやった事はある。しかもシリーズ物で。相手はマイバッハだったりプレジデントだったり、メルセデスリムジンだったり。男性には好評なシリーズであった。男性には。
そう、空港に送迎するのは、お父さん。車はアキラちゃんの愛車、自衛隊車両の高機動車風に改造されたトヨタメガクルーザーだ。迷彩塗装は邪道だ! やはりカーキ一色であるべきよ! と謎のこだわり。お父さんも陸自の普通の制服。娘の我侭に付き合う優しいお父さんである。帰ったら着替えて休日出勤なのだが。
しかし、ご本人様は上から下まで迷彩服だ。この辺のチョイスがよくわからない。
だって、迷彩服は目立つじゃない。……迷彩が全く役に立ってない。
お母様の溜め息は止まらない。
朝の6時に名古屋空港へ直付け、5分で手続きを追え、スパッと離陸。空港でお茶も飲ませてもらえない。まあ、自家用機なので専用のアテンダントさんはついているのだが。
そもそもこの機体は宇宙飛行士をNASAへ送り込む、あの団体の使っている航空試験用の機体だからと同型機を買ったものだ。中は結構広い。昔は40億で買えたが今は円安で50億した。一発株を当てて、100億返ってきたので黒字である。
そして10時にホテルに着くなり、チャーターした「ハマーH1」が迎えに来る。お母さんはどうせなら、ハマーのリムジンにしてほしいと思うのだが。
やはり、お茶は飲ませてもらえない。
そして、買い込んだファストフードを抱えて射撃場に。そこでまた、愛銃の手入れが始まる。ほぼ毎週来ているので、順繰りにやっている。毎回20丁くらい。うっとりと恍惚としながら。5時間かかる。
ここには銃に関わるものしかない。日本ほど自販機は発達していない。クーラーボックスにコンロ、コーヒーセットも持ち込みだ。御付きのガイドの人が全てやってくれる。ある意味非常に贅沢だ。お母さんは自販機の方が気楽なのだが。
16時からやっと射撃タイムだ。お母さんはイヤプロテクターを着け、タブレットでネット閲覧したり、読書を。もうすっかり読書の習慣が身につき、最近は小説とかエッセイも書くように。もちろんお母さんの書くものはまともだ。
アキラちゃんは人生をどこで間違ったのか。
飽きる事なく、1万発ほど撃ち込んで、軽く銃のお手入れをしてホテルに帰ると23時。そのままベッド。
そしてアキラちゃんは早起きだ。せっかく高級ホテルに泊まり、ご飯のしたくもしなくていいんだからお母さんは寝ていたいのだが。
そして、8時にはまたハマーのお迎えだ。そしてまた撃ちまくり、手入れをして16時。ここから、日本へ帰るのだ。アクティビティの欠片もない。
これが毎週なんだから、付き合わされる方はたまったものではない。来年は受験を理由になんとかやめさせようと決意するお母さんだった。
帰りの空港で、いきなり熱いベーゼを交わしているひげ男のカップルに気づき、立ち止まるアキラちゃん。お母さんが慌てて引っ張るが、てこでも動かない。
じっと見られているのに気がついて、攻めている方の男性が気づいてウインク。アキラちゃんは笑顔で、いいね! サイン。男性も同じサインをぐっと突き出す。満足そうに歩き出すアキラちゃん。げんなりする、お母さん。
何をしていようが、自家用機なので絶対においていかれない。アキラちゃんのマイペースは増長するばかりだ。
帰ってから、銃器同士の絡みを書き始めたのを見て、そっとドアを閉じるお母さんであった。
これは追い詰められた私が、その精神状態で書き上げ、思わずアップしてしまった黒歴史作品。
続きを書くことは一生ないと思っていたのに……
まさかのブックマークが。3人も。今はお一人に減りましたが。3人とも評価してくれて10点満点だった。こんなものに……評価を。
アルファポリスさんの外部サイトでランキング1位になった記念に書いてみました。
書き溜めも1段落だったんで気分転換に書いてみました。ついでにアルファポリスさんにも登録~
10/31に登録した賞の締め切りあるのに、こんなもん書いてないで本編書け! とか自分でも思うのですが。それでも書くのが、この作者。果たしてアルファポリスさんでお気に入りに入れる無謀な方がいるのか興味しんしんです。