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エデンに接続した意識が、エデンにおける物理的死とは、なにを意味するか。
エデンの出現初期において多くの学者たちは、動物実験を行っていた。
その結果、当初の予測通り、自発呼吸を行うものの、
意識の喪失を招いた。つまり、廃人と化すのだった。
しかし、エデンの小規模紛争において、数十名の兵士が戦死したのだが、
現実世界においてその数十名の兵士の体は起き上がった。
しかし、その中の意識は、まったくの別人であり、プログリアンの可能性が考えられた。
依然としてその事件は、「喪失事案」として、解決には至っておらず、
その兵士たちは、「ファースト」と呼ばれ、米軍に管理されている。
エデンにダイブしている特権階級の一部は、「バックシステム」という
ダイブ以前の人格データをバックアップしていると噂されているが、詳細は不明である。
なぜなら、意識を外部空間に転送は可能だったが、
人格の完璧な分析データは、不可能に近いと言われていたからである。
いずれにせよ、エデンで生きるという事は、電脳空間というよりは、
もう一つの世界に生きるという感覚に近かった。
しかし、エデン移民人口は、年々増えていった。
やはり、現実世界での例の焦燥感が民衆を駆り立てていたのだ。
あるいは、人生のやり直しを狙うものも少なくなかった。
間口は、目を覚ますとまず、そのリアルな頭痛を感じる。
「、、うっ、、、」
思わず声が漏れる。
「軽く、頭を切っただけだ。止血はしてある。」
という声が目の前から聞こえる。
少しずつ、五感がもどっていく。そして自身がいる部屋は、一つの豆電球だけで照らされているとわかる。
そして、自分は、椅子に拘束されていて、目の前に女性が立っていることも理解した。
それどころか、例の直感スキルで、その女性は自分に対して、殺意がないことを察する。
「僕は、君たちに何か、してしまったのかな?」
「間口透、、、、だな?」
女性は、間口の名を口にした。
「そうじゃなかったら、どうする?」
「我々の努力とお前の同僚の死が無駄になる。」
「君たちが座標エラーを発生させたのか?」
彼女は、しばらくの間沈黙し、腕につけたデバイスで、通話をはじめ、
間口の瞳を見つめて、口を開いた。
「私の名は、レン、この世界で生まれたものだ。
出現座標エラーを狙ったのは、我々ではないが、それが発生することは、私たちは知っていた。
そして、あなたのその直感スキルを我々に助力してくれないか?」
「君たちの組織は、なんなんだ。」
「解放軍、という陳腐な言い方でどうだ?」
間口は、レンの目を見続け、
スキルをまたしても発動させた。
「たしかにレジスタンスの様だな。
現実からきた人間が、プログレリアンを裏で駆逐しているという噂を耳にしていたが、
おそらく、本当の様だな。
戦況の正確な情報も軍部だけの掌握という点ですでにおかしな話だったが。」
と間口がしゃべりかけている間に
レンは、
「そのあたりの情報は、我々は、すでに把握している。
それよりも我々は、お前に対しては、そのような情報省の詳細は、求めてない。
すこし、哲学的なことを聞く。」
と言った。
間口は、レンの発言の変化球にすこし、驚きの表情を浮かべる。
「お前は、自分の世界があって、エデンが成立していると思うか?
そもそも、我々の世界は、創り出すものか?
我々が認識して、すべてが始まっているのではないか。
あるいは、こういうべきか。
すでにいくつもの世界は、存在していて、我々は、その接続方法を見出すという行為を
世界の想像と勘違いしているのではないか。」
間口の焦りは、彼女の発言内容からだけではなく、彼自身の直感が働かないかいということも由来していた。
なぜなのか。エデンにおいては、彼の直感スキルは、相当なものである。
「君ら組織の本当の目的は、、、なんだ?」
レンは、終始、厳しい顔つきだったが、
急に優しい顔つきになり、笑顔をみせた。
「越境だよ。我々が意識そのものになるという。」
またしても間口の直感は、働いた。
それは、このエデンという空間に接続しているのは、現実世界と呼んでいる我々住人だけでなく、
別の世界の住人も存在しているのか、
ということだった。
そして、2人をまたしても爆撃の音が襲う。
「はやいな。お前の拘束を解けば、おそらく数名の仲間以外、私の敵になるだろう。
それでも私は、希望を信じたい。いくぞ。」
といってレンは、間口の拘束を解いた。
「どこへ向かうんだ?」
「意識をつなげる場所だ。」
レンは、もっているアサルトライフルを構えた。
浅川は、自作のインターフェースで、
例の論文が記していた座標を入力し、ダイブしていた。
「ここ、、、は、、、」
浅川は、あたり一面、白い空間にいた。
空間の広さは、正確には、つかめない。
すると目の前に
男性が立っていた。浅川にそっくりな人物である。
「君、鏡をみてごらん。」
その男性は、浅川に手鏡を手渡した。
「これは、、、、、」
鏡に映っていたのは、現実の世界で見慣れた顔ではなかった。
女性の顔であったのだ。
「なんなんだ、これは!」
手鏡を床にたたきつける浅川。
瞬間的に手鏡は、消える。
妙だった、エデンにおいては、たしかにいつも見慣れたその男性の顔だった。
しかし、ここではまるで、目の前に立っている男性が、浅川隆司ではないか。
「私は、、、、だれだ、、、、」
男性がその浅川の質問に、
「君は、データ変換の産物による宝のうちの一人だ。
僕がオリジナルの浅川隆司だ。」
その浅川と名乗る人物は、
またしても手のひらから、モニターを出現さえ、
「これを見てほしいんだ、向井楓さん。」
そのモニターを悲壮な表情を浮かべながら、
見つめる浅川=向井楓。
「なんなの、、、これ、、、」
わずかながら、口調が女性らしくなっていく、早川。
そのモニターには、カタカナ表記で数名の名前が記されていた。
トオル マグチ
トビオ マノセ
タクミ マノベ
サイ ヒラト
マコト イチノセ
「どうやら、また更新されれば、ここに名前が増えるだろう。
彼らは、「世界」という概念に挑んだ者たちだ。」
浅川は、向井に近づいていく。
「あなたは、だれなの?」
「私は、一度死んだ人間なんだ。意識的にね。」




