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出あうことのない二人、出逢う  作者: 柿ノ木コジロー
第4章 夜 ― フリーダ・カーロ
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―― 僕。視線は更に追う

 ルノワール、カーロ、確かに双方の見つめ方は全然違う。君の言うとおり、ひとつは癒される者として描かれた『対象』としての視線。彼女たちの目はこちらを向いてはいない、画家1人に注がれ、あるいは自らの前にある空気を眺めている。

 彼女たちがどんなに心の中に泥沼を抱えていたにせよ、それは全て画家の心のフィルターに通されて絵画へと昇華されていった。


 カーロの絵が僕に不安を与えるのは、画に佇む彼女の瞳が、フィルターを通されていない生の視線だからだろう。


 絵画における生の視線とは何か。

 そんなものが果たしてあり得るのか、僕はずっと懐疑的だった。画集の視線に本能的な叫びをあげた時ですら、頭では信じていなかった。


 君に出逢った時に、ようやく知った。



 視線は生きている。

 絵画は、生きている。

 感じていられる限り、それらは命をもつ。


 感じることを教えたくれたのは君。


 絵画に希望を、そして絶望を ―― 生きているということを教えてくれた。

 だから今から君に逢いに行く。どうしても、直接逢って伝えたいから。



 そうして、お終いにしたい。

 




 フロントガラスの少し先に、君の街がみえてきた、もうすぐだ。


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