はじまり
僕は今日の一日だけでも4回は目を覚ました。
一回目は朝7時にセットした目ざまし時計の音で起きた。
両手でカーテンを掴んで開けると、今日の空模様がガラス越しに現れる。
部屋の中は湿気で少し暑い。
雨だ・・・
二回目に目を開けた時は、体中に痛みがはしっていた。
意識もかすかにあり、ぼーっとする。
視界には二人の男が僕に対して何か言っている。
聞き覚えのあるサイレン音が彼らの声を打ち消している。
たまに腰に来る振動が、さらに体中をいたぶる。
痛みに耐え切れず、僕は目を瞑った。
三回目はベッドの上で目覚めた。
目の前には白い服を着た男女が立っており、僕の傍には涙を流して何かを訴えかける母の姿があった。
またぼーっとする。
今度はうるさい音もない比較的に静かな場所だったが、なぜか母の声は聞こえない。
視界だけでこの状況を把握しようとしていたら、意識が遠のくのがわかってきた。
眠気というよりは、母のお腹にいた時のような安心感が包み込んでくれるような感じで、もちろんそんな過去の記憶なんてありはしないが、体が覚えているのであろう。
こんなにも心が穏やかになったのは、生まれて初めてのことかもしれない。
僕はこの安心感に身を任せて瞳を瞑った。
四回目、まぶたをゆっくりと開けるとそこは真っ白な世界が広がっていた。
なぜか・・・なぜかはわからないが、ここが天国だとすぐに気付いた。
そう、僕は交通事故に遭いこの世から他界した。




