扉
苦労をしてきた女性が、生涯の伴侶にめぐり会ったとき……そんな物語です。
私は必死でひとつの扉を押さえている……
どうして、私ばかり我慢をしないといけないの?
掃除も洗濯も食事の用意も、全部私がしなければ誰もしてくれない。
友達と遊べやしない。
どうして、私がしないといけないの?
母親がいないから。
長女だから。
女、だから。
関係ない!
弟もやるべきよ!
差別だわ!
ずっとずっと扉を抑えてきた……
楽しそうな人たち。
苦労も何も知らない顔してる。
私もあんな顔をしてみたい。
楽をしたい。
もう、扉を抑えていられない……
身体が、ひどくだるい。
私だけが我慢することないよね。
みんな知るべきよ、どんなに大変か。
『がんばって』
どうして、そんな無責任なことを言うの?
何も知らないくせに!
『大丈夫。これからは、俺もいるから』
そんなことばかり言って、私に押し付けようとしてるんでしょう!?
『嘘じゃない。俺も手伝うよ。
もう独りじゃない』
…ああ、少し楽になったわ。
本当なのね?
『もちろん』
そう…そうね。
独りじゃないわ。
思えば、みんな苦労はしてるのよね。
外に出さないだけなのよね。
独り善がりもいいところだわ。
みんなも扉を抑えている……
ありがとう。
あなたを信じるわ。