表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
日照権  作者: みつる
4/5

2.繋がり

 この駄文は、作者の妄想が具現化したモノの為、説明不足・無理な設定などが多々見受けられると思います。ご注意ください

 また、色んな形の友情、繋がり、恋愛なども、書けたら書いていきたいので、そういったものを許せる、心の広い人のみどうぞ

 席に着くと、クラスメイトに囲まれ質問責めに合う黒斗。お陰でその前の俺と愛華の席、それと(羨ましいことに)その隣の杞乃の席は、めちゃくちゃ狭い。というか、完璧に容量オーバーである。

 始めは皆、人の子らしくまともな質問をしていたが、さすがは古中生。一通りのオーソドックスな質問を終えたあと彼らがした質問は、あまりにも無意味かつどうでも良いことばかりだった。

「ねぇねぇ、お金持ちってことは何?毎日豪華なもんでも食べてんの?胃とか凭れない?」これは豆腐屋の息子で薬づくりの天才からの質問。

「金持ちっていったらやっぱ、自家用ジェット機だよね!!機種は何なの!?」これは乗り物オタクからの質問。

 まぁ、ここらへんはまだ序の口だ。もっとマイナーな質問としては、こんなのもある。

「あのさあのさっ、コーラとかの瓶についてるスカートって、何個って決まってたっけ!?」何故それをわざわざ転入生に聞いたし……、炭酸中毒の紅茶博士。

「あーそうそう、それで思い出したんだけど、あんた女装の趣味ってある?金持ちにはそーゆー変わった趣味の人が多いって聞いたんだけど」超冷静に何聞いてんだこの漫画オタクがっ!!資料かっ!?メモ片手にしてるってことは、資料なのかっ!?月一回は行われるあの悪夢の資料集めなんだなっ!?

 ……駄目だこりゃ、つっこみが間に合わねぇ。

 だが、そんな変人達……じゃなくて古中生の変わった質問に、少々引きつった顔をしてはいるものの、この新参者の魔怖黒斗は律儀にそれら全ての質問に答えていた。

「いや、普段は和食を好んでいるから、問題はない」

「自家用ジェット機は持っていない。レンタルで間に合ってる」

「21個だ」

「俺にはそんな趣味はない」

 すげー、特に最後から2番目すげー。普通スカートって単語でもうアウトだろ。流石は天才若社長(笑)

 それにしても……、

「な、なんか人間増えてね?」

「た、他クラスの人も来てるみたいっ」

 徐々に増えていく人に押されて、机ごと体が動く様子に、思わず愛華と一緒に声をあげる。気分的には、年末の安売りセールに駆り出されて、人混みではぐれてしまったときの、あの衝撃に近い。

 ってか杞乃、何でそんな人混みの中普通にニコニコしてんだよ。いや寧ろ、なぜ皆杞乃にだけ気ぃ使って黒斗に群がってんだよ。やっぱ古生と言えど美形は待遇すんのか。流石は犯罪級に可愛い杞乃、やっぱ可愛いなおい……、じゃなくてっ!!




 まあそんなわけで、この日は後ろの転入生とは大して接触することはなかった。いや、正直俺は別にどうでもいいんだ、あんな仏頂面のボンボンなんか。

 けど、杞乃は違った。基本的に博愛主義みたいな性格だから、新しいクラスメイトとも仲良くしたいのだろう。いや、ガチで純粋にそれだけであってほしい。

 だから、帰り道に黒斗を見つけたときには、それを杞乃にも教えようか、少し迷った。



「んじゃ、また明日っ、バイバイぜよっ!!」

「おうっ、また明日なっ!!気ぃつけて帰れよ!!」

「バイバイ、杞乃ちゃん」

 商店街の入り口で、杞乃ちゃんと別れて、私たちは手を振る。

 いつも私たちは、龍くんと杞乃ちゃん、私の三人で登下校しているんだけど、杞乃ちゃんだけは途中から方向が別だから、こうして商店街の中では、私は龍くんと二人っきりでいることになる。

 以前龍くんは、こうやって(大好きな)杞乃ちゃんと別れるのが少し寂しいと言っていたけど、実を言うと私は、龍くんと二人っきりになれるこの短い時間が、小学生の時の様で好きだった。

「あー、それにしてもほんっと、エラい目にあったよな……」

「ほんと、凄い人だかりだったもんね……」

 本当に疲れた、みたいな大げさな表情に思わず笑うと、龍くんは頬を膨らませて、「愛華~」と少し情けない声をあげるから、私はまた笑ってしまった。

 そのとき、ふわりと香ばしいソースの香りがして、私は笑うのをやめた。龍くんもそれに気づいたようで、おっ、と小さく反応すると、「あーくっそ、超いい匂い。お好み焼き食いてー」と笑った。

 生まれたときから、ずっとお世話になり続けたこの商店街は、いつも賑やかで活気づいている。お客さんがいつもたくさんいる、って訳ではないんだけど、例えば商店街の人の宣伝する声だとか、例えばお客さんとお店の人の会話だとかが、凄く暖かく感じる。

「おっ、龍ちゃんと愛華ちゃん、おかえり。今日も学校は楽しかったか?」と、八百屋のおじさん。

「おかえり、龍坊と愛華ちゃん」これは、駄菓子屋のおばあちゃん。

 たくさんの商店街の人が、おかえりといってくれる度に龍くんは、

「ただいま、勿論楽しかったぜ」

「もう中学生なんだから、その龍坊っての、いい加減やめてくれよ、ばーちゃん」と、一つ一つに笑顔で返していく。

 私も同じように「ただいま」と返すんだけど、正直未だに恥ずかしくって、どうしても小さな声になってしまう。


「あ」

 そう小さく呟いて立ち止まる龍くん。

 不思議に思って私も歩くのを止めて、龍くんと同じ方向を見ると、そこには商店街の中の一つで本屋の、「秋月あきづき書店」が。

 今日はお客さんが来ているみたいで、珍しくここの店長代理の秋月兎月とつきさんも店に顔を出している。

 見覚えのある黒髪と学ランで、黒づくめのそのお客さんは、丁度私たちとは逆方向を向いていて顔が見えなかった。けど、兎月さんの嬉しそうな顔つきからすると、多分知り合いだろう。

 ふと、兎月さんが私たちに気づいて「おかえり、龍くん、愛華ちゃん」と、また笑った。

「ただいまっ、あと久しぶり、兎月さ……、ん?」

「ただいま、兎月さん……、え?」

 兎月さんが手の振る方向に反応して、振り返ったお客さんと目があった瞬間、意外すぎる人物に私たちは思わず間抜けな声を上げてしまった。

 そこには、丁度先ほどまで話題に上っていた人物、魔怖黒斗君が、いた。



 文中に出てきた「スカート」とは,瓶についている栓の,あのギザギザした部分のことです。

 昔読んだ児童書から抜粋したウンチクです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ