全ての始まり 〜side健太〜
美希の目線と健太の目線を交互に書いていきます。
今回は、健太目線のプロローグです。
学校に向かう俺は、胸騒ぎがして仕方なかった。
「体調悪いんだったら、仕事休めよ。」
「これくらいで、仕事休むわけにはいかないの。」
体温計は六度九分を指していた。
うーん、微妙な体温だ…。
「無理するなよ。」
「大丈夫だって!じゃあ、私は先に行くよ。」
「行ってらっしゃい。」
本当に大丈夫かよ…。
「ねぇ健ちゃん、聞いてた?私の話。」
隣を歩く、竹内友美に声を掛けられ、別の事を考えていた俺は我に返る。
「あっ、ごめん。何?」
「もー!」
膨れっ面の彼女を見て、しまったと思った。
彼女は俺の幼なじみ。
家はすぐ近所で、小学校から高校までずっと一緒。
俺は彼女のことが好きだ。
向こうはどう思っているか知らない。
確かめるのは怖い…。
「なぁ、友美。俺って…、マザコンなのかな?」
「何を今さら…。健ちゃんは間違いなくマザコン!」
「やっぱり…。」
好きな女の子に、『マザコン』と断言され、さすがにショックを受ける。
「でも…、健ちゃんの場合は仕方ない気もするし…。気持ち悪い感じのマザコンじゃないから、別にそれでいいと思うよ。」
妙な慰め方をされた俺は、また別の事を考え始めた。
「坂下健太はいるか?」
授業中、担任の先生がクラスに飛び込んで来た。
「…?はい…。」
先生の様子から、ただ事じゃないことを悟る。
俺、何かしたっけ?
そう思いながら廊下に出る。
「お母さんが倒れたらしい。今から、病院に行くぞ!俺が車で送る。」
「…、えっ?」
一瞬、何の事かよく分からなかった。
それから病院までの事は、よく覚えていない。
ふざけんなよ!
あれほど無理すんなって言っただろ!
頼む、どうか無事でいてくれよ!
そんな事を繰り返し考えていた。