プロポーズ 〜side健太〜
テストが終わった後の休みの日、俺は友美と遊園地に来た。
『初デート』ってやつだ。
「お前、今回のテスト、どうだった?」
「…!だから…、女子高生は、色々悩みが多いって言ったでしょ!」
つまり、出来なかったという事ですね…。
「せっかく教えてやったのに。」
「健ちゃんがあんな事…、するからでしょ…。」
「ちょっと待てよ!俺の所為か?それに…、お前が言い出した事…だろ…。」
「うるさい!」
そう言って、友美は拗ねてしまった。
「そう言えば、美希さんが…。」
「美希さんがどうしたの?」
「今日は、『また美希さんの事』って言わないのかよ。」
「もういいの!諦めたから。」
諦めたって…。
「美希さんが孝平さんと、結婚を前提に付き合う事にしたらしい…。」
「本当に!良かったじゃない…、って健ちゃんは複雑なんだよね…。」
「確かに複雑な気持ちだけど、美希さんが結婚出来れば、俺は嬉しいよ。それまでに、美希さんが孝平さんに捨てられなければいいけどな。」
「大丈夫だよ、絶対。」
「でも、美希さんは結構おばさんだからね…。」
「孝平さんは、美希さんの外見とか年齢なんかは、気にしていないんじゃないかなぁ。」
確かに、俺にもそう言ってたけど…。
「もし孝平さんに捨てられたら、美希さんは一生独身だな…、きっと。」
「万が一そうなっても、美希さんなら、すぐに次が見つかるよ。だって凄い綺麗な人だもん。」
「…。俺はそろそろ『マザコン』を卒業しないとな…。」
「無理でしょ。」
「…!断言するなよ…。」
「無理というか…、別に『マザコン』を卒業しなくても大丈夫だよ。」
「どういう事?」
「私は、母親思いの健ちゃんが好きなんだから。」
母親思いって言うのかなぁ…、俺の場合。
「この前、美希さんが言ってた事だけど…。」
俺は、友美との今後について、話さなければいけないと思っていた。
「この前の美希さん、いつもと違ってたよね…。私、あんな美希さん、初めて見た…。」
「あの日に限って言えば、俺は本当に、下心は無かったんだよ…。」
「分かってるよ。私、健ちゃんの事、信じてるもん…。だから、付いて行ったんだから…。」
「でもさぁ…、変な空気になっただろ?」
「まぁね…。」
「これから先も付き合ってると、『その先も』って事になるかも知れないだろ?」
「その先はまだ…。心の準備が必要っていうか…。」
「例えばの話だよ!俺はとにかく、友美を大事にしたいんだ…。傷付けたくないっていうか…。」
「健ちゃんって…、やっぱり優しいね…。」
「優しいくなんかねぇよ。俺だって男だから、そういう事に興味あるし…。その場の空気で、押さえが効かない事もあるかも知れないから…。」
「…。」
「でも、俺だけが満足しても意味が無いんだよ。だから、友美が『もう大丈夫』ってなるまで待つから…。あんまり、自信ないけど…。」
「『自信がない』じゃダメじゃん!でも…、待つのはそんなに長い間じゃない…と思うよ…。」
「どれくらい…かな?」
「教えてあげない!私がいいって言うまで待つんでしょ?」
「…。キスぐらいはしても…いいのかな?」
「したいの…?」
「うん…。」
俺達は、二度目のキスをした。
「…。キスすると…、幸せな気持ちになるね…。」
「そうだな…。」
俺は、友美を誰にも渡したくない気持ちにもなる。
「健ちゃんは、高校卒業したらどうするの?」
「まだちょっと迷ってるけど…、大学には行こうかなと思ってる。」
「それじゃあ、美希さんもまだまだ大変だね。」
「そうなんだけど…。でも、最近、やりたい事が何となく見つかったから…。それには、大学には行っとかないとダメだから。」
「やりたい事って何?」
「今はまだ、教えられない。これから変わるかも知れないし。」
「ふーん。」
「お前は?」
「私の夢は…、お嫁さん…というか、美希さんみたいなお母さんになりたい…。」
「何だそれ!子供みたいだな。」
それに、目標にする人を間違ってるだろ!
「うるさい!だから、短大か専門学校に行って、花嫁修業をするみたいな感じ。旦那さんより、料理とかが下手だと恥ずかしから…。」
「俺より上手くなれるのか?」
「将来の旦那さんは、健ちゃんとは限らないから大丈夫!」
「えっ…。」
「…。」
友美が、俺じゃない誰かと結婚するなんて…。
考えた事なかった…、考えたくなかった…。
「俺達はさぁ…、まだ子供で、将来、どうなるか分からないけど…。」
友美を誰にも渡したくなくて、ただ必死だった。
「…?」
「俺は友美と結婚したい!イヤ、俺と結婚して下さい!」
「…!」
「ダメ…かな?」
「ダメじゃない…。私も健ちゃんと結婚したい…けど…。」
「勿論、これから俺達はどうなるか分からないけど、俺はこれから先、友美以外の子を好きになる事はあり得ない…から…。」
「多分…、私も…。」
「『多分』って何だよ!」
「私も健ちゃん以外、好きになる事はない!これでいい?」
「…。」
勢いに任せて、プロポーズしてしまった…。
大人になった俺の横には、友美にいて欲しい。
俺の事を理解してくれる女の人は、美希さん以外では友美だけしかいないから。