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友美と美希さん 〜side健太〜

「健ちゃんは大丈夫かも知れないけど、私は本気でテスト勉強しないと、今回はヤバイかも…。」


テストが近くなり、憂鬱そうな友美。


俺だって、羨ましがられるほど成績は良くないが、友美よりは大分マシだ。


「ちゃんと授業を聞いてないからだよ。」


模試ならまだしも、中間や期末のテストは、授業でやった事しか出ないから、そんなに難しくないはずだが…。


「女子高生は、色々悩みが多いの!だから、授業を聞いている場合じゃない事もあるの!」


どんな理屈だよ…。


「お前だって、中学の時は、そこそこ成績が良かっただろ。だから、真面目にやれば大丈夫だよ。」


「楽に今の高校に入れた健ちゃんと違って、私はかなり無理したから大変なんだよ!」


「だったら、自分のレベルに合った高校に行けば良かったんじゃん。」


俺は、今の高校が自分のレベルに合ってるから選んだわけだし。


「はぁ…。健ちゃんって…、女心が分かってないなぁ…。」


「どういう事…?」


「好きな人と、一緒の高校に行きたかったから、無理して頑張ったに決まってるでしょ!」


「…!お前って…、いつから俺の事が好きったの?」


「知らない!」


自分の事なんだから、知らないって事はないだろ?


「じゃあさぁ、今日から俺の家で一緒に勉強するか?」


「えっ…!」


「俺が教えてやれる事もあるだろうし。」


「今日…、美希さんは家にいるの?」


「イヤ、仕事だけど?何で?」


「…。」


友美は、顔を赤くして俯いてしまった。







「分からない所があったら、遠慮なく聞けよ。」


「うん…、分かった…。」


どこか様子がおかしい友美だったが、俺の家には付いて来た。


しばらく無言で勉強していたが、俺は友美の様子が気になり、彼女の方を見てみる。


様子がおかしくなったのはどうしてだ?


そう言えば、この家で二人きりになるのは、初めてじゃないか?


小さい頃、俺の家で遊ぶ時は必ず美希さんがいたし。


大きくなってからは、どちらかと言えば、俺より美希さんに会いに来ている感じだったし。


そのまま友美を見ていると、彼女が不意に顔上げた。


目が合ってしまい、慌てて逸らす。


一瞬、見えた友美の顔は、ほんのり赤かった。


顔が赤いのは、熱があるからじゃないのか?


彼女が心配で、勉強に集中出来ない。




「ねぇ、健ちゃん…。」


突然、友美が声を掛けてくる。


「分からない所があったのか?」


何故か恥ずかしかった俺は、顔を上げずに応える。


「…。健ちゃんは…、キスした事ある?」


「ばっ、あるわけないだろ!」


衝撃的な友美の発言に、慌てて顔を上げる。


「そうだよね…。」


そう呟いた友美が、今度は視線を逸らす。


「お前は…、あるのか?」


「あるわけないでしょ!健ちゃんが初めての彼氏なんだから。」


「そうか…。」


思春期の男にとって、衝撃的な会話だった…。


ドキドキが納まらない…。


「ねぇ…、キス…しようか…。」


「は、えっ!」


今日の友美はやっぱり変だ!


本当に熱があるんじゃないのか?


「隣…、行っていい…?」


「…。」


どうしていいか分からない俺は、『いいよ』とも『いやだ』とも言わなかったが、友美はお構い無く俺の隣に座り直す。


そして、俺を見つめる。


俺が友美の方を見ると…。


彼女は…、そっと目を閉じた…。




そして、友美は元の位置に戻る。


顔は真っ赤だった…。


恐らく、俺も…。


「これ以上は…、今はまだダメだからね…。」


「…!」


『これ以上』って何ですか!?







「今日、うちでご飯…、食べていけよ。」


あれから、どれくらい時間が経っただろう?


辺りはすっかり暗くなっていた。


「いいの…?健ちゃんが作るの?」


「当たり前だろ!」 


「健ちゃんと結婚する人が羨ましいな…。旦那さんが、ご飯を作ってくれるんだから…。」


「結婚したら、友美も作れよ!」


「…!」


ん?


友美はまた、顔を赤くした。







昨日の夜から、美希さんに言われた事をずっと考えている。


昨日に限って言えば、俺には下心が全くなかった…はず…。


しかし、よく考えれば、俺の行動は軽率だったかも知れない。


万が一の時は…、俺より友美の方が傷が深いわけだから…。


友美の様子がおかしかったのは、その所為かも知れない。


それにしても、あんな美希さんは初めて見た。


いつもボヤッとしている美希さんの、あんな表情は初めてだった。


余計な心配ばかり掛けている俺は、まだまだ子供なんだな…。




「坂下!お母さんは元気になったか?」


この日の朝、武田先生が声を掛けてきた。


「もう大丈夫ですよ。あれから、何日経ったと思ってるんですか!」


「そりゃそうだ。」


この先生は、今までの先生とはどこか違う。


真面目に先生をしているようには見えないが、生徒達からは慕われているし、授業も分かりやすくて面白い。


毎朝、校内をフラフラしながら、あちこちで生徒に声を掛けている変わった先生だ。


「先生は結婚しているんでしたよね?」


「うちの奥さん、綺麗だぞ!写真見るか?確か、娘と一緒に写ってるのがあったと思ったけど…。」


「写真はいいです…。奥さんとは、どこで知り合ったんですか?」


「三歳頃、近所の公園で…、だけど?」


「幼なじみなんですね。」


「うーん、まあそんなところ。付き合い始めたのは、高校生になってからだけど。」


「へーえ、そうなんですか。」


「あっ、お前は竹内と付き合ってるんだろ?確か、お前達も幼なじみだろ?」


「まあ、そうですけど…。何で先生が、そんな事まで知ってるんですか?」


「先生の情報網を甘く見るなよ!それで…、お前達に言っておきたい事があるんだが…。」


「何ですか?」


「高校生なんだから、異性に興味があるだろうし、恋人を作るのも構わない。先生も人のこと言えないし…。」


「…?」


「ただし、お前達はまだ子供だ。でも、体つきは大人とほとんど変わりが無い。だから、色々よく考えて行動しろよ。特に、男のお前は。何かあった時、傷付くのは竹内の方なんだからな。」


「昨日…、母親にも同じ事を言われました…。」


「それなら、先生が言うまでも無かったな。お前のお母さんは、若いのにしっかりしてるな。まだ、先生と同じぐらいだろ?」


「危なっかしい人ですけどね…。」




よく考えて行動しろ…。


傷付くのは友美…。


高校生になった俺達は、今までと同じ感覚じゃ駄目なんだな…。


ましてや、恋人同士になったんだから。


恋人は、幼なじみの延長じゃない。


もっと友美の事を考えてあげないと…。


友美とも、少し話をしてみないといけないかも知れないな…。


でも…、キスぐらいだったらしてもいいのかな?


ていうか、もうしちゃったし…。








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