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第3の男

作者: 葛城 炯

 いつものバーで出逢った男の能力(?)は使えそうで……

 いつものバーで隣に座った男とは、何故か話が弾んだ。

 一頻り話が回ったところで……不意に男はまじめな顔になった。


「実は……私は『第3』の男なんですよ」


 唐突で意味がわからずに沈黙していると男は言葉を続けた。


「クラスの成績発表なんかがあるじゃないですか。その時、私は決まって3番目なんです」


 それは良くあるコト……ではないな。


「さらに全校レベルでの発表があると、それも決まって3位、つまり3番目なんですよ」


 男は自嘲気味に笑った。

 それは……同じクラスに全校1位と2位がいるということなのだろうか?


「ええ。どういう訳か。しかも1位と2位はいつも違うんですよ。山が当たったとか、適当に書いたら正解だったとかで、1位と2位は入れ替わり立ち替わり。結局、私は中学、高校時代は1位とか2位とかにはなれませんでした」


 ふむ。それは珍しい。


「そういえばと思い出して小学校時代の運動会でも順位を調べてみたんですよ。写真とかでね。それらも全て……」


 3位だったと?


「ええ。なんという偶然か。って、トコロです」


 その後は如何でしたか? 大学とかでは。


「ご多分に漏れず。第3志望の大学に入って、ゼミでも3番目。ああ、教授に気に入られていた順番ですけどね。卒業時の成績も各部で3位。就職も第3志望の会社に何とか」


 趣味とかでは? 

 気に入った歌手と歌曲とかはさすがに常に3位とは限らんでしょう?


「ところがどっこい。気に入った歌手は雑誌の人気投票で3位。気に入った曲の最高順位は3位。どうやら3番目の神様に気に入られてみたいです」


 それを逆手に何か大儲けできませんか?


「競馬だったら3連単とかですか? 残念ながら3位は解っても1位と2位が皆目当たりません。つまり1位2位が硬いレースで何とか。そんなのは年に幾つもありませんし、そしてそういうレースは3位も大方、そんなに変なのが来ません。倍率は……たかが知れています」

 

 ふむ。あまり使いではなさそうだな。


「ま、営業成績とかも3位。ついでに会社は2回倒産して、今の会社は3番目です。それでもこんな大不況のご時世。当たりではありませんが、外れでもない。そんなトコロです」


 自嘲気味に自慢しているようなしていないような男の横顔を見て……ある疑問というか質問が浮かんだが、言葉にすべきかどうかを悩んだ。

 しかし、男はこちらの疑問はお見通しとばかりに言葉を続けた。


「恋愛も3番目でしたよ。相手にとってね。ですから、1番目に好きな男とかからコナをかけられたらあっさりと袖にされました。結婚しても離婚されるほどにね。でもね……」


 男はにやりと笑った。


「今は何とか幸せですよ。私も連れ合いも、バツ2で再婚同士ですから」


 なるほど。

 『3番目』の神様は……とことん義理堅いようだ。


 それからは……

 とりとめのない話で夜を楽しんだ。


 読んで下さりありがとうございます。

 感想などいただければ幸いです。


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