38.リズ失踪③
リズが言い難そうにもごもごしている。優しいリズはあまり人の悪事を話したくはないのだろう。ルシアの時も嫌がらせをされていたのに友達になってしまった……今では親友と呼べる仲だ。
「リズ~、言っちゃいな」
「アルノルト様……あの、見た事ない御令嬢でしたので……」
「名前聞いてないの??」
「はい……名前は……聞こうと思ったら意識なくなっちゃって」
「アルノルト様、僕思い出せそうなんだよね……リズ義姉さん以外では僕しか見てないから」
「ルカ、頼む、俺は絶対許さない」
「シリウス怖いけれど、まあ僕もぜーったい許さないよ」
「リズ様が殺されかけたのに、私も出来る事があるなら何でもします」
普通は自己紹介してからお茶に誘うだろう……じゃないと危なくて行けたもんじゃない……なのにリズがあまりにも無防備で純粋だから。許さない、絶対に、許さない。
「学園から追い出してやる」
「えー?? 国外に追放しちゃおうよー」
「死罪じゃないっ??」
「可愛らしいお顔をしてルカ様が一番怖いですね」
「僕の手で殺してあげたいよー」
「ルカ、俺もそうだから安心しろ。リズが生きていたから良かったものの」
■ ■ ■
んー、良く寝た……。ああ、昨日皆が来てくれたから助かったんだ!! 良かったー。皆にちゃんとお礼しないと。
「メイリ……」
驚いた顔で振り向いたメイリは私の手を握り涙を流している。本当に心配かけたんだな……私が馬鹿なばっかりに。
「皆さんに報告してきます!!」
「えっ、いや、まだ――」
メイリは物凄いスピードで出て行った。おそらく皆が頼んで帰って行ったのだろう。実際寝てしまった事も覚えていないし……疲れ果てて眠ってしまったのだ。
「リズ!!」
「シリウス様……ごめんなさい、ご心配をおかけして」
「リズ~、良かった。ちゃんと起きて……心配したんだよ」
「アルノルト様、ありがとうございます」
「リズ義姉さん!!」
「リズ様!!」
「ルカ様、ルシア、心配かけちゃって……」
「いいのいいの~。本当に生きてて良かった」
「リズ様の笑顔が私の元気の素です……本当に良かった」
それにしても私がお茶に誘われた人って誰だったんだろう……。
「リズ義姉さんを閉じ込めた人さぁ、たぶんだけれどアメリー・ルノダの取り巻きかフレール・カウリーの取り巻きか……どっちかだと思うんだよね、新しく入った子達だと思う」
「どっちだ……」
「あ、確か……意識が遠のいていく時に『ルノダ様』って……」
「はぁぁ、すまないリズ、シリウス……僕の婚約者が黒幕っぽいね……殺してやりたいけれど国外追放で許してくれないかな……」
「取り巻きも皆、追放しよう」
「ああ、そうだね」
何、殺すとか追放とか……え、アルノルトの婚約者だよね。
「どうしてリズ……あ……そういえば何か……ああ、リズっていいなぁってつい声にでちゃて。それかな」
「それだろ」
「えー、でもそれで殺そうとするなんてヤバいでしょ」
「僕もヤバいと思うけれど迂闊な事を口走った僕にも責任はある、ごめんシリウス」
「アルノルトは悪くないと思う、いずれ起こっていた事件だと思う」
「いずれにしろリズ様は狙われていたと……ではまた事件が起こってしまう可能性もあるという事でしょうか」
「そうだな……俺が守るつもりだけれど……」
「僕も守るよー、もちろん」
「私もお守りします」
「僕だってリズ義姉さんを危ない目に合わせない」
何の話……
「あの……ルノダ様は国外追放になるのですか??」
「リズ、やはり死罪にしたい??」
「いやいやいやアルノルド様、そんな訳ないじゃないですか。むしろ国外追放も驚きで……」
「リズは殺されかけたんだよ、ちゃんと理解してね」
「そうだぞ、リズ」
殺され……確かにあと数時間来てもらえなかったら死んでいたかもしれない。また、死んでいたかもしれない。前世でもどれだけの人を悲しませてしまったのか分からない、この世界でも死んでシリウスも……アルノルト様もルシアもルカ様もメイリも、皆を悲しませていたかもしれない。そう思うと国外追放してもらった方が安心かな。
「私も不用心すぎたわ……皆に心配をかけてごめんなさい……」
「リズー!! 可愛い!!」
アルノルトが抱き着こうとしてきたのをシリウスが華麗に止めている……凄いわね。
「リズ義姉さん可愛いよー」
「リズ様、謝らないで下さい」
ルカとルシアに飛びつかれた。それは対応できなかったようでシリウスは苦々しい表情をしている。
「お友達が増えるのかもって思うと嬉しくなっちゃって」
「リズ様は私達だけでは寂しいですか」
「そんなことある訳ないじゃないの……けれど皆とばかりいたら迷惑かもって思って」
「迷惑……そのような事ある訳ありません!!」
「うん、リズ義姉さんなら二十四時間一緒にいても飽きないよね」
「そうだよー、水臭いなぁリズは」
「俺達がそんな事考える訳ないだろう、信じてくれ」
確かに少し失礼な事を言ったのかしら。
「ごめんなさい、皆を信じきれていなかった訳ではないのだけれど……ありがとう」




