30.ルカ、入学前に考える
もうすぐ僕は学園に入る。やっとリズと一緒に過ごせるんだ。リズに会えたのはシリウス兄さんがいたからだけれど……正直僕が先に出会っていたらって思っている。だってそうだろう、あんなに可愛くて優しい人見た事ないー。というかリズは何だか安心させてくれるんだよね。ああ、そういえば初めてリズを見たのは母さんの葬儀の時か……いきなり入って来たかと思ったらシリウス兄さんの手を取って逃走した……。その後ろ姿を見て『羨ましい』って思ったんだ。だから気になってこっそり探しに行ったら感情をあまり表に出さないシリウス兄さんが号泣していたんだ。その周りに知らない女の子が光の魔法でとても綺麗なものをたっくさん作っていた。キラキラ光って心があったかくなっていく……。そのうちにシリウス兄さんが泣き止んでリズの手を取って走り出したからビックリして慌てて父さんの隣に戻った。そしたら何だ『婚約者としてお母様に紹介したい』と父さんに言ってそのまま本当に紹介しに行った、あんなに婚約を嫌がっていたのに……シリウス兄さんの性格を考えると母さんの為に今日だけ……みたいな事はありえない。本当に好きなのだとすぐに分かった。その頃婚約させられそうになっていた、たしか……フレール・カウリー嬢?? はどうなったんだろうって冷静な自分と本当の愛を見つけたシリウス兄さんに焦っている自分がいた。僕は恋なんてした事ない、公爵家だしテキトーに何処かの御令嬢と婚約、結婚するのが普通だと思っていたからそんなシリウス兄さんを見て何かが弾けた気がした。
それからちゃんと紹介されたのはシリウス兄さんが学園に入ってからだから五年後くらい、になるのかな。なんか家にリズ義姉さんとアルノルト様が来ていて楽しそうにお茶していたけれど僕はすぐに分かった。あ、アルノルト様もリズ義姉さんの事好きなんだって。まぁ分かりやすい人ではあるけれど。いや、違うな、軽い感じで分かりやすいと思わせといて肝心なところはしっかり隠す人……でもこの直感は間違いない気がした……冗談なんかじゃない、本気でリズ義姉さんに恋をしている。
「あーーー、ずるいなリズ義姉さん。なんかずるい、可愛い……」
すぐに恋に落ちた僕は義姉さんと呼ぶことでシリウス兄さんの婚約者なんだって強く意識するようにした。意識しても意識してもぜーんぜん消えないこの気持ちはどうしたらいいのか。適当に婚約しようと思っていたのにそれも全然する気にならなくて父さんが困っている。誰でもいい、どうでもいい、そんな風にはもう思えなくなってしまった。
ある日、ルシアという女性も一緒にお茶をしに来た。リズ義姉さんだけ遅くて来る方向をチラチラ見ていたらすぐに分かったので走って行ったら今日も可愛いリズ義姉さんがいた。すぐにシリウス兄さんに邪魔されたけれど……いや、邪魔したのは僕か。なんか……アルノルト様もルシアも全然リズ義姉さんへの想いを隠す気はないように見える……シリウス兄さんも受けて立っている?? 凄いメンバーだな。リズ義姉さんが来る前にルシアが教えてくれた。初対面で親切にしてくれたリズ義姉さんを裏切ってアルノルト様の婚約者の取り巻きになって教科書をボロボロにしたのに許してくれたって。その上『友達になろう』と言われたって。本当に凄いよねリズ義姉さんは……だってルシアは平民、リズ義姉さんは伯爵家だしシリウス兄さんは公爵家、アルノルト様は王子だよ。二人はリズ義姉さんの言う事にあまり強く反対出来ないみたい。別に平民だからとか思った事なかったけれど話を聞いて驚いたんだよねー、って事は僕の中にも平民差別があったって事なのかなって……ショックだったなぁ。
「シリウス兄さん」
「ああ、ルカ、どうした」
「また帰って来たの??」
「またって……嫌なのか」
「嫌じゃないよ。リズ義姉さんは」
「もう夜も遅いから来ない」
「ふーん……」
「リズに会いたかったのか」
「そんなの毎日だよ」
「は??」
「もういい、部屋戻る」
「ああ」
僕も早く学園に入りたい。リズ義姉さんに会えない時間がもどかしい。皆は毎日会えていいな。学園に入っても学年が違うからなー……は、飛び級とか……勉強しておけば同じ学年になれたりする!? これはテンションが上がっちゃうな~。
「シリウス兄さん!!」
「なんだ、部屋に戻ったんじゃないのか」
「学園って飛び級あるかな??」
「え……とび……同じ学年になりたいのか」
「そりゃあ……僕も皆と一緒にいたいもん」
「ルカ……勉強嫌いだろう。頭はいいのに」
「うっ……シリウス兄さん勉強教えてよ。教えてくれたらすぐ覚えられるよ僕ならっ」
「まぁ……そうだろうな」
「じゃあ教えてくれるの??」
「ああ、そうだな、飛び級がどうのよりもまずは生徒会を目指せばいい。皆いる」
「確かに……じゃあ明日教えてねー、おやすみー」
そうなんだよね、やれば出来るのに今まで勉強の大切さが分からなくってテキトーにしていた。よし、頑張って生徒会入ろう。
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