22.アルノルト・クレア王子と悪役令嬢アメリー・ルノダ
「それで、何の用」
「婚約者に対してそんな言い方はないんじゃないですの」
「……ごめん、でも僕は学園生活を邪魔されたくないんだ」
「邪魔?? 邪魔ですって!?」
「ああ、そうだ」
「どうしてそんな酷い事が言えますの!?」
そんな事、こっちが言いたい。何度言ってもリッターさんやリズへの嫌がらせは収まらない。僕のせいで傷付けて、悲しませているのにリズは昼食やお茶に誘ってくれる、当たり前のように。リッターさんも嫌な顔一つせずそれを受け入れてくれている。そしてその全てが楽しい時間だ。それを奪われるくらいなら……。
「酷い?? 酷いのはどっちなんだろうね」
「な、何を……」
「邪魔をするな、僕からはそれだけだ」
「……や、ですわ……」
「え」
「嫌ですわ!!」
「婚約破棄も……考えている。これ以上やってみろ……どうなるか、分かるよね」
にこりと笑った僕は「絶対に許さない」と付け足しておいた。アメリーは真っ青になって震えている。
「婚約破棄……婚約破棄ですって……」
「君がいいのなら今すぐ婚約解消するけれど、どうする??」
「嫌です、嫌ですわ!!」
「ではせめて大人しくしておくんだな……アメリー」
さてと、これで本当に大人しくなるのなら婚約破棄なんて大きな事、僕は言わない……これで終わる事なんてないだろう。それより思い出したぞ、リズの顔に傷を付けた事。もう完治しているとはいえ物凄く胸糞悪い出来事だ。そういえば……ルシア・リッター……リズに手を差し伸べられてから様子がおかしい。あれは、そう!! 恋する瞳。少し考えれば分かる事だ……鈍感なシリウスは気付いてなさそうだけれど。どうなんだろうか……。あ、リズは絶対に気付いていない。それにしてもリズがシリウスに瞳の色のアクセサリーを贈るなんてね、逆なら分かるけれど……リズは常識とかそんなものどうでもいいんだ。自分のしたい事をする、単純だけれど難しい事だと、僕は思う。そんなリズだから憧れてしまうんだ。きっと僕だけじゃない、シリウスもリッターさんも……あと最近接近してくるクラウス・バーベリ……あの人は早く何とかした方が良いと思うんだよねー。シリウス、ボケッとしている場合じゃないよ絶対。
「アルノルト」
「ああ、シリウス。もしかして心配かけたかな」
「まぁ、少し」
「少し、ははっ」
「相手はアルノルトの婚約者だからな……でも様子がおかしかったから」
「僕の??」
「ああ、そうだが。違ったか??」
「どうだろう……そうかもね。いつか変わってくれる、なんて淡い期待を壊されたからね」
「まぁ、そうだな、俺も昔からアメリーの事はよく知っているからな」
「そっちも大変そうだけれど??」
「リズが??」
「リズな訳ないだろう、まぁリズも関係しているけれどフレール・カウリーの事だよ。リズを傷付けたら僕だって許さないよ」
「大丈夫だ、守ってみせる」
「シリウス……ボケッとしてリズを傷付ける事になったら僕はもう諦めないからな」
「まだ諦めていなかったのか」
「ククッ、そんな簡単に諦められるとでも??」
「ま、そうだな。逆だったら俺が同じ事を思ったかもしれない。ただアメリーはちゃんと見張っていてくれよ」
分かっている、だから僕は婚約破棄したりなんかしない。リズを守る為ならそれくらい……ま、いつだって出来るからっていうのもあるけれど。
「ああ、そうだね大丈夫だよ」
さっき考えていた、リッターさんへのイジメでリズがかばった時、アメリーの取り巻きがリズに傷を付けた胸糞悪い事件だけれど……伯爵家令嬢のリズに、だ。リッターさんならいいという訳ではない当然だ。ただ貴族令嬢の顔に傷を付けて許されるはずがない。アメリーの取り巻きは全員退学に追い込む気でいる。アメリーは手を下していないという事で……今はどうする事も出来ない。全く、厄介だな。
「もう何年も同じような話をしていると慣れるものだな」
「あ~、そうかもね」
「だって会う度に同じような事言われたらもうどうしようもない、リズは絶対渡さないけれどな」
「愛されているからね、シリウスは。羨ましいよホント」
「俺の方が愛しているんだ」
「そんな事言ったらもっと愛しているよ僕が!!」
「それはない」
「くぅぅ……リズの事になると折れないシリウス……ま、いいよ。シリウスも大切な親友だ、二人が幸せなら応援している……多分」
「ブレブレだな、心の中……アルノルド」
「そりゃあブレもするよね~」
正直リズの事は諦めきれない。話せば話すほど……会えば会うほど……どんどん好きになってしまうんだから、仕方ないだろう。あ、そういえばアメリーは「ルシアの事を愛しているのか??」とも聞いてきた……どうしてリッターさんがでてきたのだろう。そりゃお昼はだいたい四人でいるけれど僕が愛しているのはリズだ、リッターさんへの勘違いはどこからきたものなのだろう?? リッターさんの事は好きだけれどそんな意味ではないので答えに困っていたらさらに勘違いさせたようで……そうか、それでリッターさんをイジメて……僕のせいだったのか……これは謝辞しないと。




