17.リズと出会ってからのシリウス
目の前で盛大に転んだ女の子……街の中でそれはそれは大袈裟に転んだ。泣くかと思って見ていたら『あーあ』みたいな顔して起き上がろうとしていたので慌てて駆け寄って手を差し出すと嬉しそうにその手を取ってくれた……なんだか面白そうな子だな、話してみたいなって興味が出てきた。そしたら向こうから友達になって欲しいと言ってくれた。本当に驚いたけれどこの子とはなんだか運命みたいなものを感じた……大袈裟かもしれないけれど……身なりからすると貴族だろうとは分かっていたけれど伯爵家の娘だと彼女は言った。その時すでに俺は婚約したい、この子と、婚約したい!! と何故か強く思った。リズと呼んでと言った声は歌うように可愛らしかった。
次の日、ナイトハルト伯爵家へお茶をしに出向いた。リズと話せると思うと嬉しくなってあまり眠れなかった……ドキドキしてなんだか胸が苦しくて、こんなの初めてだった。
「シリウス様!!」
名前を呼んでくれるリズが可愛い。ああ、あの時勇気を出して良かったと思った。
その後はリズの母親の話やまたお茶がしたいと誘ったり……自分がこんなに積極的になれるとは思っていなかった。
しかし次にした約束は果たされる事はなかった……病弱だったお母様が亡くなったのだ。優しくて綺麗で自慢のお母様……俺の心には大きすぎる穴が開いたみたいになった。スース―と胸が寒くて手が冷たくなって……涙も出ない。ボンヤリと立っていると突然温かい手が俺の手を包んだ。驚いていたらそのまま会場の外へ連れ出された。
「リ、リズ??」
「ここには誰もいないわ。泣いてもいいし、ボーっとしてもいいわ」
その言葉に、ぬくもりに、涙が止まらなくなった。ベンチの隣に黙って俺の手を握ってくれていたリズがキレイな光の玉をたくさん出していた。それがあまりに綺麗で、お母様を見送ってくれているようで心の穴がスッと埋まった気がした。悲しいけれど、辛いけれど……僕にはこの子が必要だ、今後もっと必要になると感じたんだ。気付いたら婚約を申し込んでいた、そんな急な婚約の申し入れをリズは受け入れてくれた……リズのお陰で安心してお母様を見送る事が出来たんだ。きっとお母様も安心したと思う。お父様は……焦っていたけれどリズの可愛さにお父様は今でもへろへろだ。顔も勿論可愛いけれどリズはそういう可愛さじゃない。何をしても何を言っても可愛い。
そしてその後、俺と婚約が決まりかけていた侯爵家令嬢フレール・カウリーからお茶会の招待状が届いた。どうやら今回はリズも呼ばれたそうだ、と少し心配になったけれどお茶会の当日行ってみるとまるでリズとペアで作られたみたいな服だった。何だか恥ずかしくてムズムズしたけれど嬉しい気持ちが大きかった、リズも照れていて凄く可愛かったんだ。
俺が離れている間になんか騒ぎが起こっていて何だろうと見に行ってみるとリズが絡まれていた、フレール・カウリーに……俺のせいか、助けに出ようとした時だった。
「私は!! 例えシリウス様が王族でも伯爵でも平民でも!! 愛していますわ、シリウス様を!! 愛しているのです!!」
そんな声が響いたのだ。コレが嬉しくない訳がない。嬉しいどころではない、リズの本音はこんなにも純粋で可愛らしく俺を愛してくれている。やっぱり俺にはリズしかいない、俺の勘は当たっていた。俺はリズが例え公爵家だから婚約に応じてくれたとしても良いと思っていた……きっとそうだと、思っていたんだ……でもリズは違った、どんな家に生を受けていても俺を愛してくれると、愛していると言ってくれた。嘘など絶対ありえないと思わせるほどの真っ直ぐな瞳で。
そのお茶会からしばらくして俺は親友を紹介する事にした。今までは何だか怖くて紹介できなかった……何せ王子だから。アルノルト・クレアを紹介すると取られてしまうんじゃないかと不安があった、格好悪いけれどそれが俺の本音だ。リズは可愛い、皆リズを好きになるんじゃないかと、そしてそれが王子だったらリズは?? 何て……でもあのお茶会で気持ちは変わった。
「シリウスが紹介してくれるなんて思わなかったよ」
「どうせ学園に入ったら会うんだし……仲良くなれれば嬉しい」
「そっかー僕も早く見てみたいな」
なんて言っていたが……。
しばらくしてからの事だ、何回かリズとも会って……。
「リズをくれないか」
俺は耳を疑ったがやっぱりリズを好きにならない人はいないんだ、と思った。別に気持ちを伝えてもらってもいい……けれどリズが悲しい思いをするのは嫌だなと思った。
「リズは物ではないし……まぁ、リズがお前がいいと言ったとしても説得する、かな」
それが俺の言える精一杯だった。
結局アルノルトがリズに気持ちを伝える事はなかったが可愛い可愛い可愛いとうるさい。そんなこと俺が一番知っている。それから学園生活に入る事になったけれどアルノルドもリズも仲良くなっていたから二人とも楽しそうだった。それを見る俺も楽しかった、これからもっと、きっと、楽しくなる。
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