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前世詐欺にはご用心!  作者: チョコころね


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4/7

4.まぁ『冒険者』ですし


「その時の彼より若く、また鑑定の専門家である君なら、もう少し時間を縮小できるかもしれない」


 証明された例が2件あると考えるか、2件()()ない、と考えるか。

 やはりリスキーな案件である。

 いったいどんな魔法を使わせたいのか……


「報酬は500万ギル。君が魔法を使えない間の生活費は、また別に支給する」


 昨年のリュージュの年収はおよそ100万ギルで、駆け出しの魔術師としてはまあまあな収入だ。

 それの約5倍……目を丸くしたリュージュは、首を勢いよく上下に振りたい衝動にかられたが、何とか踏みとどまった。


「これは危険手当でもある。万が一、この魔法によって君の魔術師として未来が閉ざされたとしても……」


(当方は一切関知しない、ですよね。分かります)


「……苦情は受け付けないが、その後の仕事の面倒はみよう」


 え、とリュージュは顔を上げた。


「魔力がなくとも出来る仕事はあるし、もし君が望むなら、魔力を使わない国での生活を保障しよう」

「えぇ!?」


 思わず大きな声が出てしまった。

 ランヴァルト殿下は、不味い物を食べたような顔をした。


「当然だろう? こちらの依頼で、魔術師としての未来や、生活の不便を強いるんだ」


 今まで仕事や生活の中で接した結果ではあるが、王侯貴族に対する


『優しげに見えても、庶民を消耗品と思っている』


 という認識が変わりそうである。


「……とのことだ。リュージュ、受けるか?」


 それまで黙っていた組合長が、軽ーく口を挟んだ。


(なるほど、無料の話はここまでなんだ)


 この魔法が何であるか、なぜこうまで厚待遇を約してまで使いたいのかは、この仕事を請けるまで語られる事はないらしい。

 おそらく9割方、自分の魔力は三か月以内に戻ってくる。


(だが1割、戻らない未来もある……)


 それだけでも断るべきだと……自分は堅実派だと、リュージュは思っていた。


 学校を出て魔術師として冒険者組合に登録して、一人暮らしできるぐらいの収入を得て、自分を養ってきた。

 生活に余裕が出来たら、他国にも行ってみたい、なんて未来予想図もあった。

 振り返ると笑ってしまうが、その未来図に具体的な『夫』の姿は全くなかった。

 婚約者が元婚約者になる前から。


(新しい……誰も知らない魔法……ね)


「悩むようなら……2、3日余裕を」

「お受けします」


 回答を譲歩してくれようとした殿下に、リュージュはきっぱり言って、よろしくお願いしますと頭を下げた。




 ランヴァルド第二王子とリュージュの間で、正式な契約書を交わす。

 立会人として、自らも署名した契約書を持って組合長は帰った。


 これで、仕事が終了して魔力が戻るまで、リュージュは王城の住人となる。

 

()()()()()の登場人物でもないのにね……)


 前世の記憶が蘇ったあの日から、何度目かの『人生は何があるか分からない』との思いを、リュージュは再び胸に刻んだ。



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