6話 双子ー５
「な…なんなんだテメェら！！」
拘束されているイスを揺らし怒りを露わにするピット
その様子を見て何かメモをとる獣人種
「まぁこの状況でここまで吠えられるなら…A労働だな」
「倒れてる奴とまだ寝ているガキはB労働っと…よし」
「運べデストロ」
「あいさ」
「ささ行こうね」
デストロは3人の首に繋がれた鎖を無造作に引っ張る
「がぁぁ！！」
首に繋がれた鎖が強引に引っ張られ椅子と共に通路へ
「離せ…動物が」
………
髪を掴まれるピット
「その言葉はダメだろ」
「これだから人種は嫌いなんだ」
「自分が言われて嫌なことを平気で俺にする」
「本当はここで殺してもいいんだぞ」
ピットの悲鳴と共に開くデストロの巨口
牙が何重にも生え揃い悍ましい粘液が絡みつく
「やめろ…やめてくれ！！」
ピットの顔は大口に包み込まれる
「なら謝ろうぜ…お前らと違って俺は話ができるんだ」
「あぁ……ごめんなさい！！ごめんなさい！！！」
「分かればいいんだ、大人しく引きずられてろ瞳よ種」
「よぉぉしついた」
ー労働の場所ー
岩通路にある鉄扉を開くと中には鉄格子で隔離された人種達が座っている
「お前らぁ今日から新しく３人追加するから仲良くしてくれよぉ」
「……ん？」
「おい…そこで倒れてる奴はどうしたんだ？」
鉄格子越しに怯える大勢の人々
・・・
「俺の問いには答えろよゴミどもがあぁぁぁぁああああ！！！！」
「しし死にました！！」
叫び声に反射するように老人が答える
・・・
「そうか…じゃあ」
「お前とお前…こっちに来い」
「じゃこいつらは中にっと」
指名された男2人が格子の外に出るのと引き換えに空いた扉から無造作に投げ入れられる3人
ピットは上体を起こす
「なんで…あの2人は外に…」
「……は？」
顔にかかる鮮血
獣人の腕にはもがれた首
「やっぱ首を取る時の快感はやめらんねぇぇえ」
膝から落ちるもう1人の生者
「お前は向こうで遊んでやる」
…
「あ……いやだ！！……嫌だぁぁぁあああ！！」
もう1人の生者は頭蓋を掴まれ外へ
………
「何が起こってんだよ」
「迷惑な死に様じゃ」
「………は？」
ピットは声のする方へ顔を向ける
そこには口角が削がれた老人
「ここは奴隷収容所…ワシらには生死の選択権はない」
「ここで自死したらそいつ以外の誰かが殺される…さっきみたいにな」
「そこに転がってるやつは入って１週間…何度も忠告したが皆が疲弊し寝ている時に…」
鉄格子の中に転がる死体を見て老人は軽蔑の目を向ける
・・・
「は……そうだ」
「おい！この中で長髪……茶色の女見た奴はいるか！？」
・・・
「聞いてんのか！？？」
「ウルセェんだよ！！」
壁にもたれる傷だらけの大男
「疲れてんだこっちはよ」
「いいから黙って受け入れろ」
言葉を失うピット
「わしが説明しよう」
「女子はみな一様に別室に運ばれる」
「別室？」
ーーーーーーーーーーー
「あの…本当に３人はいるんですか」
赤色の絨毯を歩く獣人とマルラ
「あぁもちろんだよ…マルラさんが途中で寝てしまわれたので先に行ってもらってます」
ニヤつく白い羊毛の獣人
「そうですか…」
「ここですよマルラさん」
ドアノブに手を伸ばすマルラ
「あぁぁぁぁぁあああああ！！！」
！！
「何……今の声」
笑う獣人種
「気にせずどうぞ…ね？」
「………え…」
扉を開くと目の前には全裸で壁に磔にされている４人の人間
膝から崩れ落ちるマルラ
「何……これ」
「大丈夫、合格すればここじゃなくもっと良いところに行けますよ」
「安心して身を任せなさい、痛くはしないから」
服に獣人の手が伸びる
ーーーーーーーーーーーー
「ん………」
・・・
「起きたかユジィ」
「ルイ……ここは」
「アスクリードの奴隷管理場らしいぜ」
…
「俺ら騙されて奴隷になっちまったらしい」
ルイの目は腫れていた
「ごめん…俺のせいで」
「謝るな」
「俺たちもまさか身内に裏切られるとは思わなかったからな」
「謝るのは俺らの方だユジィ」
ルイの頬がまだ赤い…
「明日から労働が始まるんだとよ、俺らは同じB労働…鉱石採掘だとよ」
B労働…ダメだ関連情報が流れてこない
この検索機能は生前のインターネットと同じで周知が薄いにつれて検索量も減るらしい
やっぱ「神」に完全顕現しないと不便だな
とりあえず今は英雄候補を探すか
「なぁルイ、この牢屋以外にも奴隷がいる場所はあるのか？」
「それならあのじいさんに聞いてみたらどうだ」
指差す方にいる老人
「そうか…ありがとう」
今は平然と話しているが牢に入れられ5時４７分間はルイもピットも息を荒げ話せる状態ではなかった
俺が目を開けたのも話せる状態だと感じ取ってから…
「おじいさん話を聞いても良いかな？」
「あぁいいとも…君も災難だったの」
笑う老人
「いえいえ…おじいさん」
「ここの他に奴隷がいる場所はあるんですか？」
・・・
「なぜかな？」
……
「そこに家族がいるかもしれないんです」
「死ぬ前に一目でも会いたい……と思いまして」
「そうか…」
何かを考えている老人
「ワシは３年ここに住んでいるが…他の奴隷など見た事もない」
「力になれずすまんな」
挙動不審なじいさんを前に他にも奴隷収容所があると確信
それに一つ引っかかるのはここに収容されている人はもれなく低域以下の人間
いくら人種が弱くてもパッと見５０人はいるであろう集団の中に中域がいないのは気になる
「もうそろそろ就寝時間だ」
「この時間に寝ないと体が持たんぞ」
牢の中に腰を下ろし頭を垂らす人々
神になり三日目の夜は牢屋で過ごす事に、明日にでも未来の英雄に会いに行くか
