神様に神になりたいと願い神になった元人間が神様として異世界を調停する話

第一章 双子の英雄

５話 双子ー４

ローブを羽織りアルデダラス関所へと足を運ぶ

ギルド長イーストン曰く紹介状を門兵に見せれば亜人騎士団に会えるとのこと

関所にいる２体の亜人

白鎧に身を包み２mある背丈ほどの大槍を持っている

「止まれ」

２mの亜人

おぉ…赤目だ

漫画でしか見たことないぞ赤色の目なんて…やはりカッコいいとてもカッコいい

俺も魔法かなんかで開眼しないかなぁ

「通行証か紹介状を見せてくれ、持っていないなら即刻立ち去ってもらう」

亜人の顔を見ると自然とそいつの情報が可視化される

どちらも「赤眼族」という亜人種らしい…魔法域は高域か

個体としてはイマイチだが装備から漂う魔法の気が凄まじく練り上げられている

これなら一つ上の錬域も倒せるのではないか？

「お願いします」

ルイは紹介状を震える手で渡す

「ふむ……なるほど」

亜人同士はアイコンタクトを交わす

「よかろう、歓迎するぞ旅人よ」

「思う存分楽しむがいい、亜人界アルデダラスを」

亜人の一声で我々は亜人界へと踏み込む

ー亜人界アルデダラスー

亜人界と言っても日本で言う首都程度

他の亜人領は点在しており地方の田舎村もあると思う…知らんけど

関所を抜けると城壁で見えなかった建物が軒を連ねる

そのほとんどが魔法石に関連した店

「はぁ…はぁ」

右に歩くローブから荒い息遣いが聞こえる

「大丈夫かマルラ」

「え！…あぁはい」

フードから覗く顔は少し赤い

過呼吸によるものなのか目がイッテルヨ

「少し休んでもいいんだぞ？」

「はぁ…お構いなく」

「魔法に興奮してるだけだから」

だから休めって言ってんの

「あ……そ」

何を言っても興奮をやめないマルラをよそに騎士団長オスカーに会うため騎士団本部へ歩を進める

「ここか」

「すげぇ…俺らのギルド何個分なんだよ」

見上げる本部

塀に囲まれた白いレンガで形成されている5階建てくらいの騎士団本部

「………」

マルラは感動のあまり言葉を失っている

「行こうか…オスカーさんに会いに」

緊張が顔に出過ぎているルイを先頭に本部へ

塀の前にいる亜人騎士

「よくきた、話は通してある」

「あぁ…どうも」

石造りの塀が開く

「入口右から階段で最上階へ行け」

「階段前に部屋で団長は待っている」

「どうもです」

「・・・」

愛想笑いのルイに対し無言の亜人

接客業なら即指導かクレームだぞ

「行こうか」

本部に入り階段を登る

エントランスや他の部屋に用はないので右手の階段を登り団長が待つ部屋に

階段の上から本を持った……あ！

無言で通り過ぎたお姉さんの耳はとんがっていた…あれがエルフなのか！

亜人界に入ってから深くフードを被っていたのでわからなかったが…なまもんエルフ…パネェ

「どうしたユジィ」

「迷子になるなよ」

「あぁ…悪い」

階段の壁に飾られている光源

コンセントなんてあるわけもないし火も灯っていないが明るい…これが魔法石か

どうりで文明レベルが人種と違うわけだな人界の光源ロウソクだったし

「ここか」

扉には「団長室」と書いてある…カッコいいなこの字面

礼儀のドア3回ノック

「入りたまえ」

「失礼します」

ドアの向こうから野太い声

部屋に入ると部屋の向こうに座る大柄な亜人

コワモテの一つ目…一つ目！？

「よくきたねイーストンの紹介人だね」

「さぁそんな怖がらないで座って座って」

一つ目団長は一つ目をつむり笑顔で俺たちを見る…一つ目で

「あ…はい」

遠慮なく座る

「さぁこれ飲んで落ち着いてよ」

中央の大テーブルに置かれた紅茶みたいな飲み物

「はぁ…美味しいです」

安堵の表情を浮かべるルイ

団長は安堵の表情を読み取ったのか少し声がうわずる

「それは良かったよ」

「で、本題に入ってもいいかな？」

「その子供の両親をアスクリードと交渉して欲しいんだっけ？」

……

「はい、オスカーさんならとギルド長のイーストンから聞きここまできました」

「図々しいお願いだとは思いますが……ユジィの親を取り返してください」

「ふむ……」

顎に手を置くオスカー

何か懸念点があるのか…

「その前に一つ」

「君たち3人はどうしてそこまでその子の親を助けたいのかな？」

？？？

「いやすまない」

「イーストンから事前情報は聞いててね」

「そのことは魔獣狩りの現場であっただけなんだろ？」

「確かに気の毒ではあるがここまでする必要があるのかね？」

時計の音が部屋を包む

ルイの口が開く

「オスカーさん」

「僕は幼少期目の前で父と母を魔人種によって殺されました」

「この2人も両親や親族が殺されてます」

「ですが…ユジィの親はまだ拉致されて1日足らず、生存の可能性があるならできる事をしたいと我々は思っています」

「それに彼の両親は獣人族の目を盗み魔法を使えます、おそらく錬域を超える魔法を使うかもしれません」

「この情報だけでも交渉していただく価値はあると我々は考えます」

突然の爆音拍手

一つ目がにこやかに喋り出す

「すばらぁしぃ！！！」

「その考え嫌いではないぞ！」

「いいぞ！いいとも！亜人種からの交渉なら奴らも応じるだろう」

「我々も協力させてもらおう！ユジィの親を助ける手伝いを！」

団長の桁違いのテンションを見て喜ぶルイ達

「本当ですか！！」

「ありがとうございます！！」

「良かったなユジィ！」

……

「ユジィ？」

「うん…本当にありがとう」

「では君達にも交渉団に加わってもらうが…いいかな？」

「え…俺らもですか？」

席を立つオスカー

「もちろんだとも、どれが親かもわからないんだユジィ1人だけくるのも不安だろう」

「それに…」

「これがあれば万一死ぬこともないだろう」

「おぉ…」

言葉を飲む一同

目の前には輝く鎧

所々に光る魔法石

「君たち4人にはこの鎧を貸してやろう」

「その代わりと言ってはなんだがユジィの親御さんが錬域を超えていた場合亜人種にも力を貸していただきたい」

「どうかなユジィ？」

……

「もちろんです、父と母も喜んで力を貸すと思います」

「よし！では今日の所はここに泊まって行きなさい」

団長が手を叩くと扉からは……さっきのエルフちゃん！！

「お呼びですか団長」

「ユチィル、彼らを２階の寝室へ案内しなさい」

「かしこまりました」

「ではこちらへ」

エルフに案内されとある一室へ

「ではこちらでおくつろぎください」

「私はここで失礼します」

すごーい塩対応で接客終了…まぁ近くで話せたからいいか（話してない）

「ひろ…」

部屋を見てピットが思わず声を出す

案内された部屋には両サイドに３つずつのベッド、しかもキングサイズくらいのデカさ

一面ガラス造りで亜人界アルデダラスを一望できる

各々旅路の疲れのせいでベッドに落ち眠りにつく

ーーーーーーーーーーーーーーー

「ん……はぁ……あ」

「おはようユジィ」

「おはようマルラ」

「ぐーがぁー」

イビキをかくピットと静かに寝るルイ

「ねぇユジィ……ごめんね」

なぜマルラが謝るんだ…謝るなら俺の方なのに

薄暗い中に見えるマルラ

「ユジィはお母さんとお父さんのこと心配で不安だと思う」

「昨日ルイがユジィの事を見捨てられないって言ってたけどさ…もちろん私もユジィに手を貸したいって思ってるけど」

「本心は亜人界に行ってみたかった、見てみたかったんだ外界を」

「でも昨日ユジィが泣いてるの見て…本当に自分が身勝手で…ごめんねユジィ」

マルラ……

「ユジィ昨日寝てないでしょ？」

「私も寝れなかったんだ…だからさ一緒に寝ない？あと数時間だけど」

そんな事を思っていたのか…優しいなこの子は

「君がそれで眠れるなら…お安い御用だよ」

「やっぱこうやって抱きしめると昔を思い出すよ」

「2つくらい下の弟と寝てた時をさ…」

「寝ずらいよねごめん」

「マルラ」

「僕の方こそごめん」

……

「いいよ、安心して眠りな」

次の日

「よしでは君達4人は最後尾の魔導隊に乗ってくれ」

「うっわ…すごいなこれ」

魔法石を動力とする移動要塞「魔道車」

外観は車に近い、でも普通自動車というよりかは軍隊で見る車みたい

後方部分に乗り込み向かい合う

前にはハンドルを握る亜人騎士

「アスクリードまで結構あるからバテないよう寝ててもいいぞ」

「あぁどうも」

・・・

出発する事数時間、ずっと神妙な顔のピット

「おい…寝てもいいってよ」

「この状況で寝れるわけねぇだろ」

「マルラを見てみろ」

「ふぅーふぅ」

爆睡中のマルラ

「こいつ…まじかよ」

ドン引きのピットと笑うルイ

「ユジィも寝ていいぞ、着いたら起こしてやるからな」

「ありがとうルイ」

「お前達の方こそ寝てていいぞ、俺は昨日たっぷりといい夢を見たからな」

顔を見合わせる2人

「大丈夫だ…安心して眠ってくれ」

「いやだから…ねむる……わ……け」

…………

ハンドル横にある交信機を掴む亜人種

「こちらAー90カツレス」

「全員スヤスヤ寝てますよ、ったくこれだから人種は…哀れだねぇ」

「団長も悪っすねぇ」

…

「バカいえ、これも亜人種と人種を護るための協定にそくしたまで」

「奴隷を渡した後イーストンに報酬の石を送っておけよ」

…

「は！！」

「………ん」

「う！……なんだ」

「起きたか奴隷よ」

ルイは光り輝く部屋で起きる

目の前にはゴーグルをつけた二足歩行の獣

「な……何なんだよこれは！！」

手足を動かすが頑丈な鎖によって椅子に拘束されている

「あ…ピット！！ユジィ！！起きろ！！！！」

ルイの呼びかけに誰も応じない

「うるさい奴だ、黙らせろ」

「こいつ殴っていいのか博士？」

「今の文言で理解しろバカ！」

ゴーグルの隣には血みどろのエプロンを着る身長が倍近くある獣人種

「あ………誰だお前らは」

「ここは…ここはど…」

！！

「あ……が」

椅子ごと倒されたルイの頬には生々しい殴打の血跡

「やりすぎだデストロ」

「えぇ…これでも緩くしましたよ博士ぇ」

デストロの蹄《ひずめ》に滴るルイの血

……！！

「お……ルイ！！！」

ルイの衝撃で同様に拘束されていたピットも起き上がる

「む、こっちの奴隷も起きたか」

「では奴隷諸君…ようこそアスクラードへ」

「今日からはこの地のために死ぬ気で働いてくれよ」

「人種族」