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39話 劣弱ー1

雷雲立ち込める暗がりの城


「ただいま戻りました陛下」

「アスモデウス並びにネヴァ...ここに」


王座の前でひざまずく2体の魔人種


「よく戻ったな」

重々しい言葉は空気を詰める


「ありがたきお言葉..」

玉座に座る魔人は微動だにせず下の者を見つめる


「アスモデウス...戦果は貴様を通して見せてもらったぞ」

「実に大義であった」

!!

アスモデウスは地に額をつける

「ありがたきお言葉、このアスモデウス...至極の喜びにございます」


「そなたを野放しにしている甲斐があった」

「長きに渡る願いに近づけ、我は嬉しく思う」

「感謝しよう」


「寛大な陛下がいてこそ私がこの度の戦果をあげることが出来たのです」

「私の全ては陛下により与えられたもの、此度の研究も陛下がいてこその代物だと勝手ながら思っております」


不敵に笑う魔王

「我の悲願である源流を顕現させるには人種の生き血が必要...ということだな?」


「陛下のおっしゃる通りでございます」


大きな水槽の中に蠢く何か

「世界統一には絶対の王が必要...魔人の血しか通っていない我ではなく全ての種の源流である を復活させなくては...」


「アスモデウスよ」

「これより海王と会うのだが...来るか?」

……

「この上ない喜び...」



「ここ...か?」


地下魔人悪魔事件から数日が経ち我々4人はヤツガレ教団のロゴを教えるべく集合場所へ来ていた

人種界王都にある普通の雑貨屋

あの熱烈レターの割には以外にも普通な様相

扉を開けると想像を超えない店内


「なんか思った通りだね」


メイは失礼な事を言い出す

イオやカムナギも普通に店内を物色中

だがしかし

俺は猛烈に感動していた

この世界に来てからというもの戦いの連続(まぁそれも楽しいけど)

こんな普通な店を落ち着いて見れるなんて世界を調停した後じゃないと出来ないと思っていた

普通最高!

……

店内奥にあるカーテンで閉ざされた扉が開く


「お待ちしておりました、救世主(メシア)よ」


普通の店内から普通じゃない女人(にょにん)が出てきた...メシア?

「こちらへどうぞ」


案内されるままに地下へと進む一行(いっこう)...また地下か

ロウソクに照らされた廊下の奥にある扉を抜けると


「ここが我らヤツガレ教団の紋章を編ませていただく工場でございます」


「.....すご」


感嘆の言葉がもれる

視界にはおよそ地下とは言えないような大きな空間

その中には等間隔に整備されている機械...というか魔法石を使った魔道具


「ここ...人種界だよな」

思わず心の声が漏れるカムナギ


「驚きましたか?」

笑顔が素敵な女人


「どうやってこんな設備を作ったんだ」


「それはあたしが揃えたんだにゃ!」

にゃ…だと!!

工場の奥から出てきたのは

人種とはかけ離れたケモみみ


「あたしはユーデンタル、見ての通り獣人種だにゃ」

「覚えていただけたら幸いです、救世主(メシア)よ」


口を開け呆然とする我々

想像出来ただろうか...獣人種が人種界に、しかも人種の為に工場を作っていたなんて


「なんで獣人種が...」

イオが問いをかけると

「それはですね...あたしは逸れ者、種とか関係無く気の合う奴らと友達になりたいんですよ」

「それが理由だにゃ!!」


大きな瞳をウインクさせるユーデンタル

またしても俺は感動の嵐

異世界に来てからケモみみレディと対面できる機会はなく、やれクズネズミやら悪質亜人騎士、殺しにくるエルフに陰湿悪魔など夢見る異世界転生とはかけ離れた奴らばかり

だが!

今目の前にふわふわケモみみ少女が存在している!

顔は犬なのだが…なんかこう…あのジェルミとかいう残念リアルじゃなく…デフォルメされていてキュート

尻尾をばたつかせるユーデンタル

なぬ!!

一気に至近距離に詰めよるケモみみ


「……なんですか?」

笑顔…かわいい


「あなたが神託を聞いた人種にゃ?」


「まぁ、うん」


膝を降り頭を下げる

「獣人種の私も教団に入れください」

「私はもう大切な「人」が死ぬのを見たくない…私が持つ全てを教団に提供します」

「だから…終末点、あいつらの傲慢な身勝手を止めて欲しい」

「あの化け物を両断した貴方にしか頼めないにゃ」


化け物…悪魔を殺した時を見ていたのかそれとも聞いたのか


「ユジィ様」

普通じゃない女人(にょにん)は手を合わせこちらを向く

「私が思う真に人種が住みやすい世界とは「種の垣根を越え手を取り合う世界」だと思っています」

「現に私はユーデンタルに命を救われここで生活をしています」

「そのユーデンタルも人種のためにこの地下施設を作り混乱を避けるために2年の月日を地下で身を隠し生活しています」


2年も…地下で

イオとメイの顔が曇る

頬に流れる涙


「どうか…終末点を退き世界を良い方向へ導いてください」


女人(にょにん)の涙を見てユーデンタルも涙を流す

種の垣根を越えた世界…ね

「答える前にあなたの名前を聞いていいか?」


女人(にょにん)は頷く

「私はカーディナ・ルーリィと言います」

「幼少期は獣人界で奴隷として過ごし、彼女らの助けで今は人種界で店を開いています」


獣人界か…

カーディナの辛そうな顔を見ていたら自然と手を握っていた


「ありがとうカーディナ」

「約束するよ、俺達が必ず世界を変える」

「みんなが安心して眠れる世界を作ってみせるから協力してほしい」

「頼めるかな?」


「うぅ……あり…がとう…ありがとうございます」


膝から崩れ落ちるカーディナ

スカートから見えるももには昔受けたであろう古傷

傷つく人達を見ていると俺が直接終末点を殺してもいい気がしてくる…だが、それをしてしまうと本当の意味での救いにはならない

俺の役目は「救済」ではなくあくまで「調停」、人種がこの先幾千年を自力で生存するためには後世に語り継がれるほどの英雄を育てなくては意味がない


イオは神妙な面持ち

「なぁユジィ」

「早く次の英雄に会いに行こうぜ」

「もう見当はついてんだろ」

……

「あぁ、そうだな」


「英雄ってそんな簡単に見つかるもんなのかよ」

そうか、カムナギには英雄レーダーの事言ってないんだっけか


「ユーデンタル、ここに地図はあるか?」

「はい!」


工場の一室

壁には紙が所狭しと刺さっている

その中から一つを取り出し机に広げる


「今俺たちがいるのが人種界王都「カンパレラ」だ」

「んで」


レーダーが反応する所を感覚で指差す


「次の英雄はここにいる」


「ジェニクス」

カムナギが指差された地名をつぶやく


「ユジィ様…次の英雄様はここにいるのですか?」

カーディナは不思議そうに地図を見つめる


「よりによってジェニクス…」

ユーデンタルはつぶやく

・・・

そんなやばい場所なのか?

感覚で刺したから場所の詳細は知らない、だが反応を見ると良くない事はわかる


「ジェニクス…」

「どんな場所なんだ?」

イオもわかっていないのか…まぁ子供だし仕方ないか


「もう一つの人種界」


……ん!!??

カムナギの言葉に耳を疑う

もう一つの人種界?なんじゃそりゃ

○○界と言うのは日本でいう「首都」的な意味だと理解していたのだが…もう一つ?

東京が二つあるって事?

なんだその小説にありそうな設定


「俺もジェニクスについては少ししか知らないんだが…やばいのか?」

ここは正直に有識者に問う


カムナギの表情が曇る

「あぁ…ここは「優生思想」が強い所でな」

「簡単に言えば高域以下の人種を迫害し優秀な人種を掛け合わせて「錬域」の上を目指そうとしてる場所だ」

優生思想…なんか聞いたことあるような

「俺の生まれ故郷でもある」

!!

カムナギが生まれた…て

・・・

「そんな顔すんなって…もう過去の話だ」

「それに親が捨ててくれたおかげで師匠と出会ったんだ、むしろラッキーだぜ」

無理に笑うカムナギ


「あ…あぁ」

「うん」

なんて返せばいいか…


「それにジェニクスは優秀な人種を優遇してるって噂だ」

「メイにイオ、それにユジィもいれば英雄の手がかりも探し放題だろ」


「あ…そうだな!」

ここはカムナギに合わせよう

変に気を遣われるより無邪気に話したほうがいい時だってある


「そうだ!!」

!!

カーディナが突然大きな声を出す


「どうした?」

「本来ジェニクスへは馬車で3日くらいかかるのですが…それを1日でいける方法を思いつきまして」

ほう…2日短縮は中々

「昨日あの広場にいた人種騎士団の師団長殿に交渉してみてはいかがでしょう!」

「彼なら騎士の権利でジェニクスへ魔導車でいけると思いますよ!」


「そりゃいい!」

カムナギは笑う


「魔導車!乗ってみたい!!」

「楽しみ」

イオとメイも共に笑う


「あはは……魔導車ね…うん」

だが俺の気持ちは晴れない

魔導車には苦い思い出しかない…乗りたくねぇぇ




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