13話 双子ー12
「2人であのネズミを殺してくれ」
「はぁ!?」「え……」
「む…無理だ!メイはともかく俺なんて錬域も使えるようになったばっかで」
「戦う前に殺されちゃうよ!」
だいぶ弱気だなこいつ
「私1人でやる」
「私解域使えるから…1人で大丈夫」
メイはスカートを膝上まで破り上着を脱ぎ捨てる
中々の度胸…だが
「ダメだ、お前らは2人で戦え」
「なんで…理由は?」
すごい怖いなこの子
イオと違って言葉が冷たい
「理由は意味がないからだ」
「お前らは2人で一つ、そう神様も言ってる」
疑心の目、まぁ突然神とか言われても普通疑うよな
「メイ・ダブルトップ」
「解域魔法「水彩」、それに臨界も使えるのか…すごいなその年で」
「……どこで調べたの」
「全ては神様のお言葉、俺はお前達を英雄にするべくきた」
「ここは通過点、最終的には世界を守ってもらう…具体的には終末点を殺せるくらいに強くなってほしい」
「…本気なの?」
「本気」
「これで戦えメイ」
さっきの戦利品である魔法石が練られた剣
剣を受け取るメイ
「わかった…でもここは私だけで殺る」
「それだけは譲れない、もうお兄ちゃんが傷つくのを見たくない」
なるほど…それで固有魔法「転身」が使えないのね
「さっきからよぉ…無視してんじゃねぇぞ」
「人種風情がぁぁぁあああ!!!」
あのネズミ…まじでうるさいな
「お前、剣の扱いは大丈夫なのか?」
平然と剣を構えるメイ
「わからない…けど」
「武器を交わして首に振るえば死ぬことはわかる」
「簡単」
ネズミの魔力が跳ね上がる
立ち上がる灰色の巨躯、震えるひげ
筋肉質のネズミが我々を睨みつける
「チチチィ」
「あと数年後に食べてやろうと思ってたが…今食べてやるよメイ」
「尊厳も全部壊して…死にたいと思わせてやる」
【解域・大量発生】
一体のネズミから無数のネズミ…何度見てもキモい
巨躯が崩れよく知ったネズミが床に散らばり広がる
「チチチィ、そんな剣で抑え切れるか??」
部屋中から聞こえるネズミボイス
「あんた…殺しても許さないから」
メイの腕から水が落ちる
解域・【水彩】
「切れるものなら切って見ろ!!」
天井、床、場所関係なしに走るネズミ
この魔法の対処法は一つ、速さを上回る
ネズミ一体一体を正確に切り奥にいる本体を攻撃しないと無限に増殖する
しかも本体を叩いても致命傷にならなければ再繁殖
「うるさい」
すごい…期待以上だ
部屋を埋め尽くしていたネズミは水滴と共に爆ぜる
奥にいた本体、切られた腕を抑えるジェルミ
「やはり君がほしい…メイ」
「嫌だ…何度言えばわかってくれる?」
「チチチチチチチ!!!!」
「そうか…誘いを受け入れれば命は助けてやったものを」
「死にながら後悔し、あの世で呪え奴隷種族」
ー臨界ー
【餓体】
部屋に散らばっていた子ネズミがさらに分裂
その全てが本体のジェルミをよじ登りまとわりつく
一体に成ったジェルミだが先ほどまでとは明らかに様相が異なる
頭、胴、腕、足、全てを構成するのは無数のネズミ
「さぁメイ…切れるものなら切ってみろ」
「黙って死ね」
剣を構えるメイ
水滴と共にジェルミに剣を振るう
「チチチィ!」
ジェルミの腕にまとわり付いたネズミ達が剣を形取りメイの剣撃を迎え打つ
水を含んだ斬撃は空気抵抗を抑え速度が常人をはるかに超える
…!!
両者の攻防の中
メイの腹にめり込むジェルミの背中から伸びた無数のネズミ
変幻自在なネズミの汎用性にメイの意表が完全に取られる
「うぐ…」
伸びたネズミは伸縮を止めずメイを壁に押しつぶす
「チチ!!」
「これが領域守護者の力だ!!見たか人種!」
・・・
なぜこちらを向くんだネズミよ
「臨界」魔法を一個上のステージに押し上げる技
あのネズミは数頼りの魔法から無数のネズミで一つの体を構成することで力と汎用性を跳ね上げた
それにメイの水彩の剣を受け止めるネズミの強度…便利そうな技で何より
「メイ…」
隣で足を震わせるイオ
「いいのかお前」
「このままじゃ殺されるぞ妹ちゃん」
・・・
「なんでだよ」
「お前が殺してくれるって…言っただろ」
「だから俺はここに来たんだぞ」
握り手から流れる血
「この先あんたが思ってる以上に強くなるから…だから!」
「ここはあいつを殺してくれよ!!俺たちを助けてくれよ!!神様の代理人なんだろ!?」
両者の攻防で部屋が吹き荒れる
「確かに」
「俺はあいつを殺すと言ったが、それは可能性が無かったらの話だ」
「…可能性?」
伸縮自在なネズミの攻撃を交わし反撃を仕掛けるメイ
攻防が進むにつれメイの速度はジェルミを超え剣は次第に届き始める
「チチチ…可愛いぞ…メイ!!!」
笑うと同時に切り落とされるネズミの左腕
……!!!
切られた腕に首を掴まれるメイ
「核切らないと…ダメージゼロなんだよ!!」
「がは…」
天井に投げ飛ばされ地に堕ちる
切られた腕はジェルミへと帰る
「メイ!!」
「早く!なんでも言うこと聞くから助けてくれよ」
「ユジィ!!」
・・・
「ユジィ!!」
……
「は……は?」
イオを避けるように抉れる地面
頬にはかすり傷
「チィ?」
(仲間割れ…か、哀れな人種どもめ)
「いいかイオ…俺はお前達にずっとはついてやれない」
「今俺が助けてもこの先自分より強大な力が来ても助けてやれないんだ」
「メイがそいつに殺されそうな時お前は誰かに助けを求めるのか?魔法域がそんなに怖いのか?転身を拒絶されて自分が弱いと投げ出すのか?…違うだろ」
「大事な家族はお前が守るんだ、イオ」
「どんな状況でも、勝てないと分かってても兄妹なら守ってやれよ」
「お兄ちゃんだろ」
「イオ」
「右腕分を左に移して…殺すぜぇ」
「チチチチ!!」
左腕のネズミは体を伝い右腕に集約する
「はぁ…はぁ」
剣を構えるメイ
(腕が重い…最近動いてなかったからかな)
(ごめんお兄ちゃん…今まで助けてくれた分…返したかったのに)
「死にさらせぇ!!」
肥大化した右腕は血が滴るメイに振り落とされる
「チィ……!?」
…
「そうだ…メイは大事な妹」
振り下ろされた腕を受け止める額
「兄として…」
「俺が守らなきゃいけねぇよな!!」
イオの拳が光る
「返すぜネズミパワー!!」
「が……」
ネズミにめり込む拳と弾ける右腕
無数のネズミと吹き飛ぶジェルミ
「あんま人種舐めてっと」
「殺すぞ獣人」




