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帰省

作者: くさし

 夜になると煩いくらいにするカエルの声とじょろじょろと流れ落ちる水の音。2階にある自室で眠りにつこうと明かりを消すと、この音がよく聞こえる。しばらく目を閉じてみるが、一向に眠れる気がしない。このまま目を閉じていても眠れる気なんてしないと思った私は、通知が来て画面が明るくなっても気にならないように伏せていたスマホを手に取り、時間を確認する。1時22分。ツイッターを開いて、友達が何かをツイートしていないか、面白いツイートは流れてきていないか、親指でタイムラインを更新した。眠くなるまでの暇つぶしルーティーンはツイッターから始まり、インスタ、ユーチューブの順になっていて、大体は1時間前後のゲーム実況動画を見ているうちに寝てしまっている。そして今日も動画を見ている最中に眠りについていた。


 私の名前を呼ぶ声で起きる。1階の階段下からばあちゃんが昼ご飯を持ってきたから食べてねということで私の名前を呼ぶ。この呼びかけで起きたときは寝起きでも大きな声で返事をする。返事があった時は、ばあちゃんは1階で私が下りてくるのを待っていて、私が寝巻のまま階段を下り居間へ行くと、決まって「ぐっもーにーんぐ」と陽気な朝の挨拶をしてくれる。そして、「昼ご飯は何をつくった」「うまくいった」と教えてくれる。今日の昼ご飯は冷やし中華で、黄色い麺の上にはばあちゃんが育てたきゅうりとトマトが乗っかっていた。今日は昨日より涼しいだの、さっき取ってきたトマトだから美味しいよだの、少し会話をしたら、ばあちゃんは畑へ行って仕事をする。


 3家族くらい住めそうな家には、私ひとりだけになった。ばあちゃんは畑へ行ってるし、両親とじいちゃんは仕事に行っている。お姉ちゃんは2人いるが、7つと3つ離れているため、どちらももうこの家には住んでいない。私も大学に入学すると同時にこの家を出て千葉に住んでいるが、今は夏休みだ。大学生の夏休みとなるとバイトをたくさん入れてしこたまお小遣いを稼ぐ者、さっさと帰省する者、遠くまで旅行にいく者などばかりで千葉にいても退屈するだけだ。バイトもしていない私は特にすることもないため、一人暮らしで散らかった部屋を片付け、キャリーケースに荷物をまとめ、新幹線に乗って、こうして実家でダラダラとこれからの夏を過ごそうとしている。千葉にいても退屈だといったが、実家に帰ったところで私の相手をしてくれる人はおらず、結局どこで夏を過ごそうとも退屈なのは変わりない。昨日、こちらに着いて変わったことといえば、習志野のあのじわじわした暑さと生ぬるい風がカラッとした暑さと新鮮なさらさらした風になったことくらいだと思う。ばあちゃん特製の冷やし中華を食べ終わったが、特にすることもない。テレビをつけてお昼の情報番組を見る気にもならない。スマホを手に取って情報をスワイプすることにした。


 そうだ、寝起きにも吸っていなかったし、食後だし、一服でもしようかと思い2階へ上がりバッグの中からタバコを取り出す。自室の窓を煙が部屋に入らないように顔の幅だけ開け、火をつけた。2階の窓からは庭にある大きな紅葉や5枚の田んぼ、その田んぼの向こうにあるお向かいさん家、お向かいさん家の裏山が見える。幾度となく見てきた景色だが久しぶりに対面すると、これでもかと言わんばかりの緑がとても新鮮に見える。タバコが半分になった。これを吸い終わったら、この緑を堪能するために散歩にでも行こうと思った。

読んでくれてありがとうございます。過去の出来事です。

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