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次に二人が向かったのは駄菓子屋のオバちゃん

安斎がタバコを切らしていて寄るついででもあった


「メビウスのタール6を一つ!」


「あいよ~~」


「なぁ婆ちゃん!! 一年前の篠川武美という女子校生についてなんだが……」


「そんなもん覚えてねぇわ~~」


「知ってることなら何でも良いんだ!」


「それより知ってるかい?! 神社の入り口んとこの八百屋の恭典君!!

昔はヤンチャしてたのに随分と逞しくなって~~」


「あぁさっき会ってきた!! それで篠川武美のことなんだが……」


「学生の時は親不孝とばかり思ってたんだがね~~

卒業した去年から気持ちを入れ替えてお店を継いでね~~

ホント大したもんだよ~~」


「………… ……婆ちゃん!! それでな!!」


一向に進展しない無駄な会話に

後ろで野良猫と遊んでいた柴塚は欠伸をしていた




そして数時間後

神社の階段で缶コーヒーとあんパンを食べる二人は休憩していた

髪に乗る桜の花びらをはたく柴塚はパソコンと睨めっこ


「それでは……

商店街の中で有力な情報を得たものを集めたので振り返ってみます」


「うぃ~~っす!!」


「……真面目にやって下さい

今回の依頼を物に出来なかったら横領しますから」


「持ち逃げされる程 資金ありませ~~ん!!」


「チッ……」


探偵の聞き取り調査は予想通りに地味なので

知らぬ存ぜぬの一点張りの住民を除き

少しでも篠川武美に繋がる情報を提供してくれたもの以外は省きます


:一件目 魚屋

店主のかけい敏夫としおさん 従業員は妻の桃華ももかさん

互いに40代前半でお子さんは無し

店主の敏夫さんは篠川武美を目撃した一人でして

本人曰く 発見時刻は暗くなる寸前でしたので17時から18時の間

酒缶を片手にフラフラと泥酔状態だったのですが

桜の木の下に人影が居たというのは間違いないそうです

しかし性別までは把握出来ず 有力情報の中では一番薄いです


:二件目 花屋

亭主は本田ほんだ吉信よしのぶさんでしたが 二年前に亡くなってます

妻の諒子りょうこさんが一人で切り盛りしている状態ですね

長男と長女の二子をお持ちで長男は隣の街で一人暮らし

長女は実家暮らしだそうですが 大学入試に向けて手伝いはしてないそうですね

諒子さんの話では 一年前に篠川武美の姿は目撃はしておらず

だけど神社の方向で大きな物音をしたのを覚えているらしいです

馬場恭典と楠本の二人がまた悪さをしていたんじゃないかと

その時は気にも止めなかったようですが 姿を見た訳では無いですね


:三件目 佃煮屋

両親は不在で 一人娘の河西かさい里緒奈りおなさんが店を継いでます

二年前の中学だった頃に二人同時を交通事故で亡くしており

高校にも行かずに両親が守り続けた店を請け負ったらしいですね

彼女の話では 馬場恭典が怪しいという情報が出てきました

ですが理由は曖昧で 馬場と篠川の接点を聞いても

「あの二人はデキていた」など「馬場は武美を籠絡していた」

などなど まるで取って付けたかの様なうろ覚えの感じで話されてました


データをインプットした安斎はタバコを吹かしながら空を見上げていた

決め手となるのは馬場が怪しいという河西の証言だけ


「まるで篠川武美と交流があった口振りだよな……

中学ん時とかに面識あったりするんかな?」


「調べましたけど篠川武美と河西里緒奈は中学別々でした」


「……もう一度聞き込みに言った方がいいんかなぁ~~

俺の見立て 彼女の話し方は妄想癖に似たもんがある」


「それは偏見ですよ所長

確かに両親を同時に亡くした少年少女には

精神に負荷がかかって重い病気になる場合はありますが

彼女は至って健全だと思いました」


「思いましただろ? 悪いがアテにはならん」


「……私は所長の懐の方がアテになりません」


互いにソッポを向く気まずい空気を裂いたのは


「あっ……」


「「 あっ…… 」」


依頼人の芦葉哲良が階段を登って来て

偶然にも探偵事務所の二人と合流したのだ


「独自調査でもしているのか?」


「それは半年以上前に止めてます

それでも毎日ここに来るんです

……約束を忘れない為ですね」


「……聞いてもいいか?」


ビニール袋から缶コーヒーを取り出した安斎は

隣に座る芦葉に放り投げる


「タイムカプセルを埋めたんです……

小学校六年生のときに武美とあの桜の木の下に集まって

同い年なので成人した時に一緒に掘り返そうと約束しました」


「そうなのか……

そういえば聞きたかったんだが

何故一年越しに俺んところに依頼して来たんだ?」


「……ケジメです

本当は二年後の予定でしたけど

今年から18歳で成人になったじゃないですか?

約束が前倒しになって なのに武美が行方不明になってさ

だから最後の足掻きで慣れない行動に出たんです」


「なるほどな…… 気持ちは分からんでもねぇよ」


「あいつ…… 孤児だったからさ

小六の時点で決めていたんだ

正式に武美にプロポーズして大学を出たら結婚しようって……

なのに連絡も無しに急に居なくなってよ……」


「それなんだがな……

うちの従業員の調査不足で聞き逃したんだが

芦葉君は篠川さんが消えた辺りの前日に連絡は取ってなかったのか?」


「最後に電話したのは三日前っすね……」


「内容を聞かせてくれないか?」


「ぶっちゃけ惚気ですね

武美もタイムカプセルのことを覚えてくれてて

一年後には掘り起こそうねって催促を入れてくれました」


「……篠川さんはタイムカプセルを覚えていた

動機は分からないが三日後 4月1日に桜の木の下に現れたのは偶然じゃなくなったな」



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