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固くて冷え切った今の話
我ながら甘ったるい夢を見たと思う。私が朝則にあんなことを言うなんて。確かに朝則は好き、でもそれを言うのはなんというか恥ずかしいというか。というか、なんで私は急にこんな妄想をしているのか。全く働かない頭が少しづつ動きを取り戻す。
私が公開告白に踏み切ったその時、車が突っ込んできたんだった。暴走する車はまっすぐに朝則の方に飛んでいき、私は、朝則を突き飛ばして、そして。
「と、とものり」
「しゃべるな!もう救急車は呼んだから!」
「そうじゃくて」
「なに!」
「ごめん、ね。ずっと言わなくて」
「・・・」
「ずっと、あんたのことが、好きだったわ。それだけ」
「もういいから!」
「・・・」
「紫織!おい!」
「・・・」
「紫織?」
そこまで泣かれと少しうれしいわね。こんなこと最期に知ることになるとは思わなかったわね。ごめんね、朝則。私のことは忘れていいからね。嘘、たまに思い出してほしいかも。
さよなら。好きだったわ朝則。
ここまでお疲れ様でした。