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萌える朝顔

 今日は朝則の誕生日だったりする。あいつは私に祝ってもらえることがかわかっているのでこの日が近づくと目に見えてソワソワしだす。たまには予想を外してやろうかとも思うが、毎年こちらも祝ってもらっている手前、それはしづらい。なので、今年は少し趣向を変えることにした。

「おはよ、紫織。今日は何の日だっけ」

「今日はペンの日よ」

「なにそれ」

「日本ペンクラブが創立された日よ。知らないの?」

「雑学王しか知らないでしょ。一般常識みたいな顔するな」

「他になんかあったっけ。あ、そろそろ出る時間よ」

「・・・」

あんなに残念そうな顔初めて見た。どうしよう、流石にあそこまで落ち込まれると罪悪感がすごい。

学校でもその落ち込みは回復しないらしい。一応、朝則の誕生日が今日であることはクラスのみんなは知っていることなのでみんなに祝われているがあまりにも気落ちが過ぎた。皆に心配されている朝則を見ていると、悪いという罪悪感とたまにはこういうのもいいという嗜虐心が顔をのぞかせる。

帰り際、一瞬だけ朝則の近くを通る。

「夜7時、うちに来て」

それだけ言ってさっさと帰る。驚いた顔をしていたけどあまり長く話したくもないし、しょうがない。


「紫織さ~ん?」

「やっと来たわね、忘れたのかと思ったわ」

「いや、だって、朝のあれはけっこう心に来るというか」

「たまには趣向を変えるのもいいでしょう?」

「心臓に悪いんで来年からは違うものにしてもらえると嬉しいんですけど」

「・・考えとくわ」

来年も祝ってもらうつもりなの?という言葉を飲み込む。今日は朝則の誕生日なのだからそういうのはまた今度で良い。

「ほら、こっち」

「おぉ・・・!毎年見てるのに毎年驚く気がするな」

「そりゃあ、毎年精魂込めて作ってますから。それぐらいは驚いてくれなきゃ」

「嬉しいかぎりだね」

「ほら、早く座りなさい。食べるわよ」

「はいよ」

「「いただきます」」

静かにがっつくという器用な光景を見るのもこれで何回目か。朝則はそれは美味しそうに食べるので、そこに不満は無いが。

「美味しい?」

「うまい」

言葉が少ないのは満足の証、今年も朝則の満足の行く料理を作れたようで良かった。無論、作ってもらって文句なんぞ言うのなら制裁もやむなしだけど。

いつもより少し少な目に作ったとはいえそれでもいつもよりペロリと平らげて、少ないのが不満そうな顔をしている。

「早すぎ。もうちょっと待って」

「美味しかったからつい」

「鍋にまだ少し余りがあるからおかわりしてもいいわよ」

「もらう。そういえば今年はシチューじゃなかったね」

「シチューは最近作ったからね。たまにはカレーもいいでしょ?」

「まぁ、そうなんだけど・・・」

「はいはい、シチューもまた作るから」

「ありがと、紫織」


 朝則がおかわりを平らげている間に、ちょうどいい感じに冷えたケーキを冷蔵庫から持ってくる。

「はい、今日のメイン」

「チーズケーキだ」

「あんた生クリーム嫌いだからね。毎年考えるのも意外と大変よ」

「いやぁ、生クリームはどうもあの甘さが駄目で」

「言いたいことはわかる」

「はい、あんたの分。改めて、誕生日おめでとう朝則」

「ありがと。そうかしこまって言われると照れるね」

「どうせ一年に一回ぐらいでしょ」

「それはそうなんだけど」

「これ、プレゼント。開けていいよ」

「マフラーだ」

「去年は手袋だったからね。揃ったでしょ?」

「確かに。冬は紫織セレクションで固まるね」

「んふ、そうね」

「何今の」

「別にこれからもよろしくね、朝則」

「よろしく、紫織」


「これは別にお返しとかじゃないんだけど」

「なに?」

「紫織、俺はお前のことが好きだ。それは知ってるだろ?」

「続けて?」


「紫織が恋愛にトラウマがあるのも嫌いなのも知ってる。全部忘れさてみせるから、俺と付き合ってほしい」


「・・・」

「・・・」

「・・・返答は今じゃなくていいんでしょ?」

「もちろん。いや、早い方がそりゃいいけど」

「じゃあ、ちょっと待って。その、心の準備が」

「わかった」

「その間に心変わりとかしたら本当に絶縁だから」

「するわけないじゃん。何年好きだったと思ってんだ」

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