そばとうどんとあなたとわたし
この前の紅葉狩りで結局蕎麦屋に行くことが出来なかったので普通に別日に行くことになった。
私は蕎麦が好きなのだが、朝則はうどんのほうが好きだったりする。私的にはうどんはあまり好みではないのだが。今日来たのは割と頻繁に来ている蕎麦屋だけど、朝則と来たのは数年ぶりの気がする。
「なににするの?」
「ざるうどん」
「わたしなめこそば」
「昔もそれじゃなかったっけ」
「基本はこれだけよ。たまに違うのも食べるけど」
「変わらんね」
「・・・一途と言ってほしいわね」
「はっ」
「・・・」
「ごめんって。だから無言で箸をこっちに向けないで」
「ふん」
いつも通りのそばがいつも通りの時間で来た。とりあえず朝則への追及はそこまでにしてそばを楽しむことにする。すぐに朝則のうどんも来たので食べ始める。
朝則はうどんを食べるときはいつもに増して静かになる。食べるのに集中しているのか話しかけても反応しないことがあるぐらいだ。店にいるのも私たちだけなのでお互いがすする音だけが妙に店内に響く。いつものことではあるのだが、あまりに静かに食べているので気になってついつい目で追ってしまう。そうして何度目かわからないが朝則に目をやると目が合う。
「どうかしたの」
「別に」
上手い言い訳が思いつかないので切り上げておくことにすると、もう食べ終わっていたらしくこっちを見ていた。
「なによ」
「いや、ちょいちょい見られてたからお返し」
「金とるわよ」
「なんでだよ」
「私の顔はそんなに安くない」
「えぇ・・・?」
「というわけで今日はあんたの奢りね」
「うそでしょ」
「ごちそうさまでした。さ、帰ろっか」