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秋に咲く甘い桜

 やっと夏が終わり、少し肌寒くなろうとしている10月31日。私は黄美さんに誘われてハロウィンの仮装を楽しんでいた。話は少し遡る。


「紫織ちゃん!秋だね!秋と言えば!」

「定期テストね」

「違うよ?!いや、違くはないんだけど」

「じゃあ、合ってるわね」

「正解ではないよ!紫織ちゃん本当に女子高生なの?」

「一応そうだけど」

「女子高生は勉強よりもイベントを重視するんだよ!」

「それは只の偏見だと思うんだけど」

「事実だよ!」

「なんでそんなにテンション高いの?」

「だってハロウィンだよ!逆になんでそんなにテンション低いの?」

「えぇ・・・?別に興味のあるイベントでもないし」

「一緒にパーティーしてくれない?」

「パーティーの内容聞いていい?」

「それはクラスのみんなで教室借りて仮装パーティーをしようかなって」

「私は不参加で」

「冗談だってば。三割ぐらい」

「ほとんど本気じゃない」

「まあ、紫織ちゃんが乗ってこないことは知ってるので、ちゃんと次の案も考えてきています!」

「えらいわね」

「馬鹿にされている気がするんだけど・・・」

「言われなきゃわからない時点で文句を言う資格はないわね」

「とにかく!仮装パーティーをしたいの!」

「だからそれなら不参加だってば」

「まぁまぁ話は最後まで聞き給えよ、わとそん君」

「じゃあ詳しい話を聞いてもいいかしら、ホームズさん」

「ふふふ、聞いて驚くがいい!お互いの家でやればいいのです!」

「パーティーを?」

「そう!」

「二人でってこと?」

「そうです!」

「あぁそういうこと」

「納得してもらえた?」

「まぁだいたいは。でも、仮装できる服なんて無いわよ。買うの?」

「紫織ちゃんはなにもしなくていいよ。服は全部私が用意するから」

「それは私を着せ替え人形にしたいだけじゃなくて?」

「それも無くはない」

「はいはい、良いわよ」


 今にして思えばせめて私の家でやればよかったと思う。家に来るなら、持ってくる服の量は随分と限られてくる。もしくは仮装とかじゃなくて、どこかに食べに行くとかにすればとか。いや、あの感じだったし結局押し切られた気もする。

「大きな家ね」

「うん。掃除が大変ってお母さんがよくぼやいてるよ」

「でしょうね」

私は自分の家の1.5倍はありそうな豪邸に来ていた。あまり家の話ってしたことがない、というか黄美さんのことはそういえば私はほとんど知らない。これだけ裕福な家なら、黄美さんみたいな善人が育つことも納得だけど。

「今日は親、いないんだよね」

「完璧な誘い文句ね」

「でしょ?」

「相手が私じゃなければ満点だったわね」

「え?」

「え?」

「じゃあ、始めよっか」

「え、あぁそうね」

「ちきちき!ハロウィン仮装パーティー!開催!」

本当にテンションが高い。ハロウィンが好きなのか、私を着せ替え出来ることが楽しいのか。どちらなのか気になるところではあるが、怖いので聞かないでおくことにした。下手な事するとまた着せ替え人形にされるし。


「まずはオーソドックスにスーツで行こう!」

「・・・なんの仮装なの?」

「え・・・OL?」

「ハロウィンの建前はもうどうでもいいのね」

「そう、だね。正直紫織ちゃんがうちに来た時点でどうでも良かったよ」

「まぁそんな感じはしていたわ」

「ほら着替えて着替えて」

促されるままに着替える。寸法に特に問題が無いのが怖い。初めて胸が無いことが恨めしく思った。胸があればこれは着れないで押し通せたかもしれないのに。

「着替えたよ」

「おぉ!流石だね!似合ってるよ!」

「黄美さんも着替えたのね」

「うん!一緒に写真撮りたいしね」

「それ誰にも見せないでね?」

「もちろん」

それにしてもスーツなんて初めて着た。スリーピースというのか、ベストも相まってなかなかどうしていい感じな気がする。朝則にも着せたいかも。

「じゃあ、次はメイド服にしようか!」

「早くない?」

「着せたい服はいっぱいあるから」

「一応何着か聞いていい?」

「ひ・み・つ」

「はいはい、まぁ良いわ」

「お、もう諦めがついた?」

「それもあるけど意外と楽しくて」

「でしょ?!定期的にやる?」

「それはいいかな」

不満そうな彼女を傍目にメイド服に着替える。変なコスプレ衣装だったらどうしようかと思ったが、しっかりとした侍女といった感じの服だった。

「おぉ!いい!かわいい!」

「今日は知能指数の低下がすごいわね」

「紫織ちゃんかわいいからね!それにしてもなに着ても似合うね!」

「お褒めに預かり光栄です」

「じゃあ、次はガーリーな感じのドレスです!」

「あら、かわいいわね。パーティー用?」

「たぶんね、アマゾンで売ってた」

「さすが密林にはなんでもあるわね」

渡されたいいいもののドレスなんて初めて触った。和服ならまだどうにかなるのに。四苦八苦したもののなんとか着ることが出来た。

「おぉ・・・」

とうとう語彙がなくなったらしい。少しフリフリしてて違和感がすごいけどたまにはこういう服もいい気がする。やっぱりズボンのほうが好きかな。無言で写真を撮りまくる黄美さんは少し怖かった。


そのままハロウィンパーティもとい、着せ替え大会は暗くなるまで続き、八時になろうかという頃にやっと終わった。かわいい服も着れたし、写真もたくさん撮ったし満足の一日だった。今度は朝則を連れて服屋巡りも面白いかもしれない。

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