表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/36

込めた愛だけ白くなる

 いつもより少しだけ涼しい日の夕方。私は以前に朝則と約束していたシチューを作っていた。朝則はまだ来ていないが。

「朝則?あと一時間ぐらいでできるからそれぐらい後に来て」

「へーい」

「宿題進んだ?」

「ぼちぼちですなぁ」

「さいですか」

正直、シチューはあまり好きではない。シチューというか牛乳があまり好きではない。味や匂いもそうだが、あまりいい思い出がないというのもある。あいつはそんなことは知らないけど。まったくなんだってピンポイントにシチューが好きなのか、いや別にいいんだけどね。作るのが大変なだけで。

朝則はカボチャとかの夏野菜が好きなので必ずカボチャが入る。肉よりも野菜とか魚とかのほうが好きらしい。よくわからん、男はみんな肉が好きなんだと思っていた当時の私はたいそう驚いた。

野菜を切る、肉を切る、炒める、小麦粉、水、牛乳を入れる。素を使ってもいいのだが、朝則は使わない方が好みらしく使わない方が食べる量がふえる。本人はあまり自覚がないようだけど。

煮込んでいる間に朝則が来る。

「おじゃましまーす」

「もうちょっとかかるから手でも洗ってきてて」

「うい」

なんだか夫婦のようで、たぶん朝則が気にしていないことを考えるとなんだか腹立たしくもある。でもそこが朝則らしいところでもあるんだけど。

やっとご飯が炊けた頃にシチューも出来上がる。

「できた?」

「できた。ご飯よそって」

「あい。お、カボチャ入ってる」

「朝則好きでしょ?切るの大変だったから後で皿洗って」

「はいよ、呼んでくれたら手伝ったのに」

「今日のは前から作るって言ってたやつだから」

「別に気にしないんのに」

「私は気にするの」

「はいはい」

「ほら持ってって」

「紫織は食べないの?」

「私はいい。味見でおなかいっぱい」

嘘。食べたくないし、後で適当なものをつまむつもりだった。でもちょっとタイミングが悪かった。

「・・・」

「・・・」

「おなかいっぱいなんだっけ?」

「うるさい。私はいいの?」

「盛大にお腹鳴ってましたけど」

「別にいいの」

「?」

「・・・あんまり好きじゃないし」

「え、そうだったの?」

「うん」

「言ってくれたらリクエストしないのに」

「朝則は好きでしょ?」

「それは、そうだけど」

「だからそれでいいの。私が食べないだけだし」

「さっぱりわからん」

「別にわからなくていい。また食べたくなったら言って」


やっぱりわかってないって顔をしている。別にいいんだけどね。

朝則はおいしそうに食べてくれるからそれでいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ