込めた愛だけ白くなる
いつもより少しだけ涼しい日の夕方。私は以前に朝則と約束していたシチューを作っていた。朝則はまだ来ていないが。
「朝則?あと一時間ぐらいでできるからそれぐらい後に来て」
「へーい」
「宿題進んだ?」
「ぼちぼちですなぁ」
「さいですか」
正直、シチューはあまり好きではない。シチューというか牛乳があまり好きではない。味や匂いもそうだが、あまりいい思い出がないというのもある。あいつはそんなことは知らないけど。まったくなんだってピンポイントにシチューが好きなのか、いや別にいいんだけどね。作るのが大変なだけで。
朝則はカボチャとかの夏野菜が好きなので必ずカボチャが入る。肉よりも野菜とか魚とかのほうが好きらしい。よくわからん、男はみんな肉が好きなんだと思っていた当時の私はたいそう驚いた。
野菜を切る、肉を切る、炒める、小麦粉、水、牛乳を入れる。素を使ってもいいのだが、朝則は使わない方が好みらしく使わない方が食べる量がふえる。本人はあまり自覚がないようだけど。
煮込んでいる間に朝則が来る。
「おじゃましまーす」
「もうちょっとかかるから手でも洗ってきてて」
「うい」
なんだか夫婦のようで、たぶん朝則が気にしていないことを考えるとなんだか腹立たしくもある。でもそこが朝則らしいところでもあるんだけど。
やっとご飯が炊けた頃にシチューも出来上がる。
「できた?」
「できた。ご飯よそって」
「あい。お、カボチャ入ってる」
「朝則好きでしょ?切るの大変だったから後で皿洗って」
「はいよ、呼んでくれたら手伝ったのに」
「今日のは前から作るって言ってたやつだから」
「別に気にしないんのに」
「私は気にするの」
「はいはい」
「ほら持ってって」
「紫織は食べないの?」
「私はいい。味見でおなかいっぱい」
嘘。食べたくないし、後で適当なものをつまむつもりだった。でもちょっとタイミングが悪かった。
「・・・」
「・・・」
「おなかいっぱいなんだっけ?」
「うるさい。私はいいの?」
「盛大にお腹鳴ってましたけど」
「別にいいの」
「?」
「・・・あんまり好きじゃないし」
「え、そうだったの?」
「うん」
「言ってくれたらリクエストしないのに」
「朝則は好きでしょ?」
「それは、そうだけど」
「だからそれでいいの。私が食べないだけだし」
「さっぱりわからん」
「別にわからなくていい。また食べたくなったら言って」
やっぱりわかってないって顔をしている。別にいいんだけどね。
朝則はおいしそうに食べてくれるからそれでいい。