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閑話休題 虫取り朝顔

今日はなんだか紫織の調子が悪い、あいつは絶対に認めないけど。でもあそこまで嫌がることなんてひとつしかない。でもこっちから連絡するのも嫌なんだよな、あいつ嫌いだし。連絡先ぐらいは持ってるけど、連絡したくねぇー。

別になにかを信じているわけではないが、今この瞬間だけは悪魔を崇拝してやってもいい気がする。

「あれ?朝則じゃ~ん。久しぶり~」

「・・・」

「あれ~?もしかして忘れた~?」

「いや、全然そんなことはないよ。久しぶり、黄馨さん」

「久々にあったのにそんなに他人行儀じゃなくていいよのに~。気軽に撫子って呼んでほしいな~」

「考えとくよ、黄馨さん」

「撫子でいいよ~」

「考えとくよ、黄馨さん」

「撫子がいいな~」

「久しぶりだね、撫子さん」

「そうだね~。私も久しぶりに朝則に会えてうれしい~」

昔と変わらず気持ちの悪いしゃべり方をする奴だ。あまり邪険に扱うと面倒になることは目に見えている。とはいえ、あまり仲良くしたい相手でもない。

「そういえば今日の学校祭来てたんだね」

「うん!朝則に会えるかなって思って~」

「そうなんだ、わざわざ来てくれてありがとう」

「久々だし、ちょっとだけ一緒に回ってよ~」

「うーん」

「ダメ~?ちょっとぐらいさ~」

まぁ、聞きたいこともあるし我慢するべきか。


 そこからはまぁ思い出したくもない地獄だった。中身こそヘドロの煮凝りのようなやつだが外見はかなり、いや凄まじく良い。そこらのアイドルでは太刀打ちできないだろう。天は二物を与えず、だからこそタチが悪い。なぜこいつの顔がいいのか。

「今日はありがとうね~」

「うん、楽しめたならよかったよ撫子さん」

「あのね~、急なんだけど私と付き合ってくれないかなって思って~」

「は?」

本当に急だ。脳みそまで煮凝ったのか。

「急だね。どうしたの?」

「学校で結構言い寄られたりするんだけどね~。いつも彼氏がいるって言ってたんだけど~。最近写真見せろってしつこくって~。下手な人選んだらその人に迷惑かかりそうだなって~」

「俺は合格ってことか」

「そう!あたり~。悪い話じゃないと思うんだけどな~」

「どこら辺が?」

「だって~こんなにかわいい彼女がいるんだよ~!待ちゆく誰もが振り向くような私が彼女なんて誇らしくない~?」

「理解できなくはないけど」

「でしょ~!だからね~」

「断るよ」

「え?」

「俺さ、君といると疲れるんだよ。あんまり好きじゃないし」

「は?私のどこがお気に召さなかったの~」

「そういうとこだよ」

これだけ思い通りに行かなくて機嫌がどんどん悪くなっているのを感じるが、全く顔に出てこない。誰からも人気ということには秘訣があるらしい。嫌な時にちゃんと渋面できるあいつのほうがよっぽど人間味がある。

「つまり~わたしを振るってこと~?」

「つまりも何もないけどそういうことだね」

「ふ~ん」

「紫織ちゃんがどうなっても知らないよ~?」

「それは困るな」

「でしょ~」

「さっき君のことは好きじゃないって言ったじゃん」

「聞いた~。悲し~」

「だからちゃんと対策はしてある。ほら」

脅してくるとは思ったけど、けっこうテンプレだったな。そりゃそうか。今まで何でも思い通りにしてきてるんだし。念のため、録音しておいてよかった。

「紫織になにかあったらこれが出回ることになるだろうな」

「え~。ひど~い。私、そんなつもりじゃなくてぇ」

「茶番はもういいから」

「そんなにあの子のこと好きなの?意味わかんないだけど」

「あいつがってかお前が嫌いなだけだ」

「ふーん?」

「さっきも言ったけど俺たちに構わないなら何もしない。あの録音も出回らないことを約束してやるよ。だから二度とその面を見せるな」

「・・・まぁいいや。他にも候補はいるし」

「あぁ、そっちにしてくれ」

「じゃあね、お望み通り二度と来ないわ。私の物にならないならどうでもいいし」


言いたいだけ言って帰っていった。あぁ疲れる。まあこれで紫織の機嫌が急降下することはないだろうし、一件落着でいいかな。

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